現在開催中の第81回ヴェネチア国際映画祭で映画ジャーナリストらが、ブラッド・ピットやジョージ・クルーニーといった一流スターに取材できない状況に不満を示している。
Varietyによると、同映画祭ではシガーニー・ウィーヴァーやケイト・ブランシェットなどの人気俳優や映画監督らが記者会見に参加し、大手メディアとの厳選されたインタビューも行っているが、映画祭に参加しているジャーナリストの大半は一流スターへの取材を断られているという。多くのジャーナリストはフリーランスで、媒体での記事掲載には独占インタビューが必要であるため、映画祭で監督や俳優に取材ができなければ仕事が成り立たなくなる。そういった苦境を訴えるべく、不満を抱えたジャーナリストらが「International Film Festivals Journalists」と題されたFacebookグループに、「映画ジャーナリズムが危機に瀕している」と警告する書簡を投稿した。
2020年に、イタリアのフリーランス・ジャーナリストであるマルコ・コンソリ氏が立ち上げた同グループには、ジャーナリストや広報担当者、映画祭のプログラマーなど700人以上が参加している。すでに50人以上の国際ジャーナリストが署名した書簡では、一流スターへの取材ができなくなると、世界中のジャーナリストが映画祭に参加する経済的なメリットが失われ、その影響が小規模なインディペンデント映画の取材にも波及すると指摘されている。この状況が続けば、将来的にジャーナリストがイベントへの出席をボイコットする可能性があるとも警告しており、ヴェネチア国際映画祭だけでなく、カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭もジャーナリストを支援していないと訴えている。
一流スターへの取材が制限される理由とは?
Screen Dailyによると、英国を拠点とするPR会社Premier PRの映画部門でディレクターを務めるジョナサン・ラッター氏は、ジャーナリストの不満を理解しているとし、「報道関係者の参加がなければ、映画祭が成り立たなくなるリスクがある」と発言。ジャーナリストが一流スターに取材できない問題は数年前から発生しており、その頻度は確実に高くなっているという。ラッター氏は、その理由については複雑で決まったパターンがある訳ではないとしながらも、映画祭で作品が紹介されている段階では販売代理店が大手企業と契約を結んでいないため、映画の権利に関する確定的な情報がなく、報道陣への情報提供が制限されるケースもあると指摘。また、どのメディアが取材できるかは地元配給会社の方針が優先されるため、海外のジャーナリストが特定の俳優や映画について取材できないケースもあるとのこと。
3つ目の理由としては、一流スターや監督の会見はコストが高く、配給会社が決まっていない映画については会見を開く資金調達が困難で、その費用をカットするために会見自体を開かないことも多々あると述べた。
第81回ヴェネチア国際映画祭では、約2,900人のメディア関係者が招待されているが、報道陣は俳優や監督に直接インタビューする機会がないため、映画やドラマシリーズの記者会見が一流スターと接触できる唯一のチャンスとなっている。