全米プロデューサー組合による「Produced By Conference」で語られた生成AIの懸念

全米プロデューサー組合(PGA)が、6月8日(土)にロサンゼルスにて開催した第14回「Produced By Conference」にて、映画やテレビ制作における生成AIツールの使用などについて様々な意見が交わされた。

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全米プロデューサー組合による「Produced By Conference」で語られた生成AIの懸念
Photo by Mario Tama/Getty Images 全米プロデューサー組合による「Produced By Conference」で語られた生成AIの懸念

全米プロデューサー組合(PGA)が、6月8日(土)にロサンゼルスにて開催した第14回「Produced By Conference」にて、映画やテレビ制作における生成AIツールの使用などについて様々な意見が交わされた。

2008年に初めて設立されたProduced By Conferenceは、メディア業界のプロデューサーが集まり、様々なイベントやパネルディスカッションを通して業界が直面する課題について理解を深めるイベント。

映画制作会社リヴェレーションズ・エンターテイメントのCEOで元PGA会長のロリ・マクレアリー氏は「AI:すべてのプロデューサーが知っておくべきこと」というセッションにて、「私が依頼したアーティストが生成AIを使っているかどうかはわからない。以前は気にしなかったが、今は気にしなければならないようだ」と映画業界における悪用の可能性について語った。

半年前、マクレアリー氏のもとに、リヴェレーションズ・エンターテイメントの制作担当EVPケリー・メンデルゾーン氏から、(マクレアリー氏と共に同社を設立した)モーガン・フリーマン氏が 「ケリー、愛しているよ。でも君はクビだ 」と話すビデオのリンクが送られてきたという。しかしそれは「(メンデルゾーン氏の)11歳のいとこたちによって行われた」とのこと。その時は本物ではないと分かったものの、後日フリーマン氏が本の宣伝をしている動画が送られてきた時には本物だと思ってしまい、本人に確認の連絡をしたのだそう。マクレアリー氏は、AIの危険性に関して「偽情報が氾濫するこの時代、私は恐怖を感じる」「コミュニティとして、我々は先手を打つ必要がある。ツールを開発し準備することで、何かが出てきたときに、それが本物だとわかるようにしましょう」と述べた。


また、I2A2 Technologies, Labs & Studiosの社長であり、全米映画テレビ技術者協会(SMPTE)の会長であるレナード・T・ジェンキンス氏は、ディープフェイクの解決策に取り組んでいると話した。しかしこのような行動には、「コンテンツの起点から配信までを追跡できるような基盤とエコシステムの構築における大手スタジオの協力」が必要だという。

そしてAI関連の法律問題を専門とするLatham & Watkinsのパートナー弁護士であるガイス・マフムード氏は、現在におけるコンテンツの著作権保護の範囲とその複雑さを聴衆に説明した。さらに、十数件の著作権に関する係争が行われるにつれ、今後数年で新たなルールが確立される可能性が高いと述べた。


第14回「Produced By Conference」では、そのほか『TOKYO VICE』などHBOの人気シリーズの制作プロセスを語るセッションや、急速に進化する映画・テレビ界においてプロデューサーがどのように革新を続けているのかを話し合うパネルディスカッション「プロデュースの未来」などが行われた。

Other Sources:Variety, Variety, Deadline
《伊藤万弥乃》
伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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