コロナ禍からの回復が遅れるアミューズ、投資分野の選択と集中が必要?【決算から映像業界を読み解く】#36

音楽・映像事業を手掛けるアミューズがコロナ禍からの回復に遅れている。

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コロナ禍からの回復が遅れるアミューズ、投資分野の選択と集中が必要?【決算から映像業界を読み解く】#36
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音楽・映像事業を手掛けるアミューズがコロナ禍からの回復に遅れている。

2024年3月期第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の売上高は前年同期間比4.4%増の229億3,300万円、営業利益は同97.9%減の1,600万円だった。4億円の赤字を出した第1四半期から黒字転換を果たしたものの、完全回復からはほど遠い。前期は大型公演の開催が相次いだために今期は反動減に襲われているのだ。

エイベックスは、19.0%の増収で上半期を折り返した。4割の営業減益となっているが、これは成長に向けた投資を加速しているため。アミューズの苦戦している様子が伝わってくる。

中長期的な戦略として、音楽以外の領域拡大を掲げているが、全方位的で方針が定まらない印象だ。

主力のイベント事業が恒常的な赤字に

アミューズは2024年3月期の通期売上高を前期比10.5%減の470億円、営業利益を同14.4%減の27億円と予想している。1割を超える減収減益だ。予想通りの着地で営業利益率は5.7%。前期とほぼ変わらない水準を見込んでいる。アミューズはコロナ禍を迎える直前の2020年3月期の営業利益率が8%を超えていた。

決算短信より筆者作成

コロナ後の特需で大型公演が多かった2023年3月期も売上高は524億9,700万円で、2020年3月期の水準を超えていない。それにもかかわらず、2024年3月期がその反動減に見舞われているとなると、現在のまま事業を継続してもかつての業績レベルまで戻すのが極めて困難だということがわかる。

2024年3月期第2四半期の事業別売上高とセグメント利益を見ると、主力のイベント関連事業の売上高は前期比3.3%増の127億5,000万円だった。前期は、下期に大型公演が集中していたのだろう。通期では大幅な減収を見込んでいるためだ。

イベント関連事業は増収で折り返しているが、5億7,300万円のセグメント損失を出している。音楽・映像事業の利益でかろうじて補填できたものの、コロナ前はイベント収入で十分な利益を出していた。アミューズは赤字の要因としてイベント制作費の増加を挙げているが、現在の売上水準で運営費を賄うのに限界が訪れたというのが本音だろう。

■2024年3月期事業別業績

決算短信より

綱渡りのような経営状態に陥っており、いち早く主力となるイベント関連事業の強化を行うか、別事業を育てる必要があるのだ。

原作保有タイトルを年15ずつ積み増す計画を立てる

アミューズは2023年6月26日に中期経営計画を発表している。

成長に向けて掲げたテーマは3つだ。

中期経営計画より

これらの取り組みにより、過去最高売上の達成、利益率の向上を目指している。

1つ目のアーティストの発掘・プロデュースはアミューズの本懐とも言えるものだ。現在、サザンオールスターズや福山雅治、星野源、SEKAI NO OWARI、Perfumeなどの人気アーティストを抱えている。BABYMETALの海外進出も成功させた。NOA、カメレオン・ライム・ウーピーパイなど、アミューズはポテンシャルを秘めたアーティストの発掘も行っている。

2023年7月1日付で中核となるプロデュースグループの組織再編も行った。

しかしながら、アーティストのプロデュース強化に向けた具体的な取り組みが見えてこない。既定路線の延長にあるように見える。

おそらく、アミューズの本丸は2つ目の「オリジナルコンテンツの創造」だろう。これはコミックでヒット作を生み出し、そこを起点として映画化やアニメ化、イベント、舞台化、楽曲配信など多角的な収益を生み出そうというものだ。


《不破聡》

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