音楽著作権管理サービスNexToneのレコチョク買収はシナジー効果を生むのか?【決算から映像業界を読み解く】#29

9月にレコチョクを連結子会社化した、音楽著作権管理サービスのNexTone(ネクストーン)。JASRACに対抗し、会社をいかに成長させるのか。

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音楽著作権管理サービスNexToneのレコチョク買収はシナジー効果を生むのか?【決算から映像業界を読み解く】#29
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音楽の著作権管理を行うNexToneが、2023年9月28日にレコチョクの株式を議決権ベースで51.7%取得し、連結子会社化すると発表した。

レコチョクはガラケーの着うたで一時代を築いた会社。2008年10月には有料ダウンロード数が10億を超えて世界初を記録するなど勢いがあった。しかし、2016年12月に着うたサービスを終了するなど、時代の変遷とともに事業の縮小を迫られてきた。NexToneの株価は買収発表前は1,800円前後で取引されていたが、10月6日には1,395円と2割以上下落している。レコチョクの連結子会社化に対する評価は懐疑的だ。

買収のカギを握るのが、インディーズアーティスト活動支援事業を行うレコチョクの子会社エッグス。アーティストを発掘してスターに仕立て、著作権使用料を拡大できるかどうかが分水嶺になる。

巨象JASRAC帝国に切り込む日本で唯一の会社

NexToneはJASRACの対抗馬として誕生した会社だ。2000年11月に著作権等管理事業法が成立。音楽著作権等管理事業に多くの民間会社が新規参入した。規制緩和には、それに至るまでの背景がある。

JASRACは、1980年代後半からのカラオケブームなどに後押しされて巨額の著作権料が集まっていた。昭和を代表する作曲家・古賀政男氏の財産の一部で設立された古賀政男音楽文化振興財団が、1993年にJASRACから78億円の無利子融資を受けてビルを建て、そのビルをJASRACが賃借するという事実が明らかになる。

古賀財団は無利子で融資を受けてビルを建てた上、JASRACから賃貸収入を得ることになる。古賀財団に対して有利な条件であることに対して、JASRAC会員が反発。融資の凍結が決まった。古賀財団は融資の継続を求めて提訴し、最終的に融資額を減らして利子をつけるなどの条件で和解している。

JASRACが受け取る著作権料は、基本的には会員に分配する仕組みだ。しかし、徴収から支払いまでに時間差が生じるため、プールした資金の一部を融資に回していたことが明らかになった。会員から見れば、資金の流用だと映る。

やがて、JASRACの不透明で硬直的な管理体制が批判の的となり、音楽の著作権管理に関する新たな動きが出始めた。著作権審議会が1994年8月に委員会を設置。著作権等の管理制度の在り方の検討を開始した。

2000年11月に著作権等管理事業法案が可決した。規制緩和がなされた後、イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランスが新規参入した。この2社が2016年2月に経営統合してNexToneとなった。新規参入した他の事業者は著作権管理事業からは離れ、NexToneが唯一のJASRACの対抗馬となった。

動画配信の比率が高いNexTone

NexToneは、演奏権、録音権、出版権、貸与権、上映・BGM、映画への録音、ビデオグラムへの録音、ゲームへの録音、広告目的で使う複製、放送・有線放送、インタラクティブ配信、業務用通信カラオケの著作権管理を行っている。

NexToneの2024年3月期第1四半期の著作権管理業務における取扱高は27億1,000万円。そのうち、インタラクティブ配信が65%と圧倒的な割合を占めている


《不破聡》

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