バンダイナムコホールディングスのグループ会社で、玩具やパッケージソフト卸大手のハピネットが、2024年3月期の好スタートを切った。
第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の売上高は前年同期間比33.4%増加している。ガンダムシリーズのプラモデルの販売が好調で売上高を押し上げた。
しかし、売上高の2割を占める映像音楽事業は、CDとDVDの市場縮小の影響を受け、中長期的に衰退している。
バンダイナムコの経営戦略にぴたりと当てはまった「水星の魔女」
テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は、近年のガンダムシリーズの中でも、とりわけ人気を博した作品の一つだ。テレビシリーズ初となる女性主人公の起用、学園を舞台としつつ起業を盛り込んだ斬新なストーリー設定、若者たちの人間模様と大人たちによる支配権争いを描く二重構造など、これまでのガンダムシリーズにはあまり見られなかった要素が散りばめられている。
バンダイナムコはガンダムシリーズのファンが高齢化していることに危機感を抱いており、若年層をターゲットとした企画を練り込んでいた。その中で出てきたのが「水星の魔女」だ。
若年層の取り込みに成功したかどうかは不明だが、テレビ放送のたびにTwitterのトレンドを賑わすなど、話題となったのは間違いない。それは数字にも出ている。
バンダイナムコのトイホビー事業2023年度第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の売上高は、前年同期間比26.9%増の1,203億円となった。第1四半期の売上高としては過去最高だ。同社は「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のヒットにより、ガンプラの販売が好調だったと説明している。
バンダイナムコは新工場を建設し、2024年度からガンプラの生産体制を強化する計画を立てていた。また、企業戦略としてIPを強化。玩具やゲームなど事業領域を横断し、収益力を強化するという取り組みを始めたばかりだった。そのタイミングでの「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のヒットは、見事と言う他ない。
ハピネットはガンプラなどの玩具卸の国内トップ企業だ。同社もテレビアニメのヒットの好影響を受けた。2023年度第1四半期の売上高は前年同期間比34.4%増の341億6,900万円、セグメント利益は同113.5%も伸びて13億9,800万円となった。

※決算説明資料より
ハピネットは会社全体の1Qの売上高が、前年同期間比33.4%増の822億9,900万円、営業利益が同89.9%増の21億8,000万円となった。この好調ぶりを支えているのは、玩具事業だ。
不良在庫で赤字に転落した映像音楽事業
これほどの好スタートを切ったにも関わらず、ハピネットは通期の業績予想を据え置いた。2024年3月期の売上高は前期比0.9%増の3,100億円、営業利益は同2.7%増の60億円と予想している。売上高の進捗率は第1四半期の段階で26.5%に達している。前年同期間の進捗率は22.0%だった。第2四半期の業績発表は注目に値する。

※決算短信より
ハピネットの業績そのものは堅調に推移しているものの、不調となっている事業の一つが映像音楽事業だ。