コロナ禍をバネに収益力を高めたスペースシャワーネットワークの底力【決算から映像業界を読み解く】#24

音楽専門チャンネル『スペースシャワーTV』と『100%ヒッツ!スペースシャワーTVプラス』を運営するスペースシャワーネットワークが、収益力を高めている。

ビジネス 決算
コロナ禍をバネに収益力を高めたスペースシャワーネットワークの底力【決算から映像業界を読み解く】#24
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音楽専門チャンネル『スペースシャワーTV』と『100%ヒッツ!スペースシャワーTVプラス』を運営するスペースシャワーネットワークが、収益力を高めている。

2023年3月期の売上高は前期比11.0%増の153億8,100万円、1億5,300万円の営業利益(前年同期は営業利益なし)を計上した。2024年3月期の売上高は前期比8.3%増の166億5,000万円、営業利益は3.6倍となる5億5,400万円を見込んでいる。

計画通りに着地をすると、営業利益は3.3%となり、コロナ禍を迎える前の2019年3月期の数字を1.6ポイント上回る。

スペースシャワーは基幹ビジネスの放送事業は振るわないものの、ライブ事業や飲食店運営などの周辺ビジネスが好調だ。

コロナ禍の混乱の中でFUGAと合弁会社を設立

スペースシャワーは1989年設立。同年12月にケーブルテレビ局に配信を開始した。1997年3月にスペースシャワーネットワークが事業を引き継いでスペースシャワーは清算。2001年4月に株式を上場している。

スペースシャワーネットワークは伊藤忠商事の子会社として設立された。2011年にKDDIに持株を譲渡しているが、現在でも伊藤忠は19.73%の株式を保有する大株主だ。2015年6月にフジ・メディア・ホールディングスと資本業務提携し、フジは伊藤忠と同じ19.73%を保有している。スペースシャワーは伊藤忠、フジの持分法適用関連会社だ。KDDIは17.93%を保有している。

代表取締役社長・林吉人氏はもともと伊藤忠商事の社員。2002年にスペースシャワーに入社し、2005年には早くも番組制作部門の子会社セップの取締役に就任している。2021年4月にスペースシャワーの代表取締役社長となった。

展開している事業は3つ。放送事業のメディアセグメント、ライブやアーティストのプロデュースを行うライブ・コンテンツセグメント、音楽配信のソリューションセグメントだ。

スペースシャワーは2021年に、レコード会社と配信事業者との取引とつなぐ仲介会社FUGAと合弁会社を設立し、音楽配信事業を本格化した。設立した合弁会社の51%はスペースシャワーが保有しており、力関係は上だ。このサービスはSpotifyのように消費者に音楽を直接提供するサービスではなく、アーティストから委託を受けたコンテンツを配信プラットフォームに提供する裏方のシステムだ。

プラットフォームビジネスは先行投資が重い傾向があり、長期の赤字に耐える体力が必要だ。スペースシャワーはプラットフォーマーに真っ向勝負をしかけるのではなく、配信ビジネスを下支えするサービスに乗り出した。事業展開が慎重かつスマートな印象を受ける。

ライブに注力した成果が実を結ぶ

業績面では、2021年3月期に売上高が25.3%も減少して117億6,300万円となった。新型コロナウイルス感染拡大でライブ活動が大幅に制限されたためだ。

決算短信より

2023年3月期には売上高がコロナ禍を迎える前の水準まで回復。2024年3月期は、2020年3月期の売上高を5.8%上回る166億5,000万円を予想している。

この会社の一番の課題は、放送事業の収益力が失われていることだ。これはスペースシャワーに限ったことではなく、WOWOWなど従来のケーブル・衛星系の有料チャンネルにも同じことが言える。

さらに、スペースシャワーは音楽事業も弱体化していた。下のグラフは2019年3月期までの売上構成だ。2017年3月期から主力の放送、音楽の2事業の売上が、横這いもしくは下がり始めている。

決算説明資料より

スペースシャワーの音楽事務所SPACE SHOWER MUSICには、人気アーティストSuchmosが所属しているが、2019年に3作目のアルバムを出してからは目立った音楽活動がなく、2021年2月に活動を休止した。不幸にも、2021年10月にベーシストのHSU(スー)氏が32歳で逝去している。活動を再開するのかは不明だ。SPACE SHOWER MUSICに所属するアーティストの数は多いが、事務所をけん引するスターに欠けている印象がある。

2023年3月期にスペースシャワーが注力したのが、ライブイベントの開催だ。2022年5月に国内最大規模のヒップホップフェスティバル「POP YOURS」を開催。二日間で1万6,000人を集めた。初めて生配信を行っており、26万人が視聴している。同年8月には「SWEET LOVE SHOWER」を3年ぶりに開催。6万人を集めた。2023年1月にはアパレルブランドBEAMSとともに、「FUKUOKA MUSIC FES.」をプロデュースしている。

イベントとライブハウス事業は、2023年3月期において合計で2億円近い増益効果をもたらした。ライブ市場の回復は鮮明だ。2023年の市場規模は2019年を上回った。コロナ禍からのリベンジ消費が発生し、中期的に盛り上がりを見せる可能性もある。スペースシャワーはその波に上手く乗ることができた。

決算説明資料より

メイドカフェが成長を担う事業の一つに

そしてスペースシャワーで見逃せないのが、メイドカフェの『あっとほぉーむカフェ』だ。


《不破聡》

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