Image by Freepik
人工知能(AI)は、急速に映画業界のゲームチェンジャーとなりつつある。映画制作にAIを活用することには多くのメリットがあるが、同時に考慮すべき潜在的なデメリットもある。また、現時点でどのような仕事にAIが使用されているのか、二つの記事を基にまとめていく。
映画産業におけるAIのメリット
レインダンス映画祭の記事によると、映画産業におけるAIの最大のメリットは時間とリソースを節約できることだそう。機械学習アルゴリズムは、既存の脚本の大規模なデータセットを分析し、そのデータを使って新しいオリジナルストーリーを生成することができる。これは脚本家の時間を節約するだけでなく、ストーリーテリングやクリエイティビティの新たな可能性を開くことにもなる。また、AIはキャスティング決定の精度と効率の向上にも活用されている。AIを搭載したプラットフォームは、過去の出演データ、ソーシャルメディアの活動など膨大なデータを分析し、与えられた役柄で成功する可能性が高い俳優を予測することができる。これにより、キャスティングディレクターはより多くの情報に基づいた意思決定を行うことができ、時間とリソースを節約することができる。
さらに、視覚効果(VFX)の強化にも活用されている。機械学習アルゴリズムは、シーン内のさまざまなオブジェクトを認識し、分類するように訓練することができ、VFX要素をより簡単かつ迅速に追加することができる。
映画産業におけるAIのデメリット
最大の懸念は、言わずもがなAIが人間の仕事を代替する可能性があることだ。AIのアルゴリズムがより高度になると、人間の脚本家、キャスティングディレクター、VFXアーティストに取って代わり、映画業界の雇用喪失につながる危険性がある。
もう一つのマイナス面は、人間の創造性やパーソナルタッチが失われること。AIアルゴリズムは新しいストーリーを生成し、正確な予測を行うことができるが、人間の創造性から生まれる独自の視点や感情的な深みが欠けている可能性がある。これは、ストーリーテリングの均質化や映画全体の質の低下につながる可能性がある。
また、AIによる代替がユーザーやアーティストから反感を買うこともある。『犬と少年』というAIが背景画を作成した3分間のアニメーションをNetflix Japanが「人手不足のアニメ業界を補助する実験的な取り組み」としてTwitterで紹介した際、このツイートが海外を中心に物議を醸したことがある。
AIを使って人間のアーティストへの支払いを避けようとしていることや、アニメーターやAI企業に従事する人の技術あってこその作品であるにもかかわらず、クレジットに「AI(+Human)」と携わった人の名前が表記されていなかった、という点が主に反感を買った理由となったようだ。人手不足のためにAIが補助になると説明されているが、実際には日本のアニメスタジオ従事者の多くが正当な賃金を得られておらず、そのために人材がいなくなってしまうといった現状が背景としてある。
人間が仕事を維持するうえで必要なこと
AIが同じ仕事をこなせるようになっても、人間が映画業界で仕事を維持できる方法はある。