サウジアラビア文化開発基金は、先週リヤドで開催された映画産業専門のイベント「Ignite the Scene」で映画部門融資プログラムを正式に発表した。文化開発基金の最高戦略・事業開発責任者であるナジュラ・アルノメア氏は、月曜日のVarietyとのインタビューで「サウジのソフトマネーは2つの部分に分かれており、1つは融資に割り当てられ1億5,400万ドル、もう1つは投資に割り当てられ8,000万ドルである」と述べた。
この動きの背景にあるのは、2016年に発表された「サウジ・ビジョン2030」だ。 2016年4月、サウジアラビア政府は石油依存の経済体制から脱却するための多様なフレームワークを構築することを目指し、このビジョンを発表した。これは経済や文化的な多様化を促進させ、石油ビジネスに依存しない新たな国作りを指向するものだ。
包括的な国作りの指針を示すこの資料によると、サウジアラビアは「国内における文化・娯楽活動への支出を、総家計支出の2.9%から6%に引き上げる」ことを目標としている。その実現のため、政府は以下のような方針を宣言している。
「国家では地域、行政区域、非営利および民間部門における文化イベントの開催を奨励しています。(中略)文化・娯楽プロジェクトに必要な土地は政府より提供し、才能ある作家、文筆家、映像監督などへのサポートも充実させます。また図書館、芸術作品、美術館・博物館などの文化施設、各人の嗜好に応じたさまざまな娯楽活動も充実させたいと考えています」(※1:JETRO)
このビジョンをもとに、サウジアラビアは文化産業を急成長させるため、多分野への政府資金投入を進めており、娯楽省は2028年までに文化産業に最大640億ドルを投資する意向を表明している(※2:JETRO)。今回の映画基金も、まさにこの文脈状にある施策といえる。
今回、資金の出し手となる「文化開発基金」とはどのような組織か。同基金の公式サイトには、そのミッションが以下のように記されている。
「2021年の王令により設立された文化基金は、サウジアラビアの活気ある文化シーンを育成し、そこに属する企業、起業家、クリエイターすべてに力を与えるために創設されました。(中略)当基金は、有望な旅路に乗り出し、国家文化戦略および『サウジ・ビジョン2030』の野心達成に重要な貢献を果たします」
報道によると、今回発表された2億3,400万ドルの「ソフトマネー(公的支援資金)」は、約1億5,400万ドルの「融資」と、約8,000万ドルの「投資」の2つに大別される。 融資については、現地の金融機関を通じて提供され、サウジアラビア国内企業のほか、現地法人やパートナーを持つ外国企業も対象となる見込みだ。
ただし、利用には一定のハードルも設けられている。対象プロジェクトは、費用の少なくとも25%をサウジアラビア国内で支出する必要があるほか、クルーの25%をサウジアラビア人で構成すること、そして現地の「文化的基準」を満たすことが求められるという。資金使途は制作費だけでなく、スタジオなどのインフラ整備にも充当可能とされる。
「サウジ・ビジョン2030」では、同国の発電に占める再生可能エネルギーの割合を50%まで向上させることも目標に掲げられている(※3:JETRO)。 気候変動の危機に対応するための脱炭素の動きが世界で加速しているが、世界有数の産油国であるサウジアラビアにとって、石油に頼らない産業構造への転換は国の将来に関わる重大事なのだろう。映画産業への巨額投資は、単なるエンタメ振興にとどまらず、国家の新たな収益源を確保しようとするサウジの本気度の表れといえそうだ。

