「ファンを増やし、映画館をブランド化したい」Strangerが目指す、会話が生まれる“新しい映画体験”

本日、9月16日に墨田区に映画館Strangerがオープン。都内ミニシアターの閉館が相次ぐ中、なぜ、映画館を開業しようと思ったのか?代表の岡村氏に訊く。

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本日、9月16日に東京都墨田区に新しい映画館Strangerがオープンした。このプロジェクトを立ち上げたのは、映画館、映画配給会社、映画祭、映画情報メディア、映画制作現場という映画にまつわる様々な職種を経験し、現在はブランディングデザイン会社の代表取締役を務める岡村忠征氏。“もっと映画を通してコミュニケーションしてほしい”という熱い思いや、Strangerの施設設備へのこだわりなどを語ってくれた。

お客さまに“コミュニケーションが生まれる映画体験”を提供したい


――現在はブランディングデザイン会社の代表取締役を務めてらっしゃいますが、以前は映画業界で働いてらっしゃったそうですね。

僕は昔から映画が大好きだったので、20歳のときに映画監督を目指して上京したんです。20代後半ぐらいまでは映画館や配給会社、映画祭、映画の制作現場で経験を積みましたが、このままでは映画監督にはなれないと気づいて。それで、まずは映画雑誌を自分で作ろうと思い、デザインを独学で学んでいるうちにそっちがおもしろくなってしまったんです(笑)。そのあとデザイン会社での仕事を経て、2011年にブランディングのデザイン会社を立ち上げました。

――映画館Strangerを開業しようと思われたのは何故でしょうか。

40代になってから、何か自分の強みや経験を活かせる事業ブランドを立ち上げたいという思いが沸いてきて、それなら自分が一番夢中になれる映画しかないと改めて気づいたんです。だけどすぐに“映画館を作ろう!”と思ったわけではなく、2021年の12月に新橋のTCC試写室でリチャード・フライシャー3大実録犯罪映画『絞殺魔』『10番街の殺人』『夢去りぬ』が上映されて、それを観に行ったときに20~30席の映画館なら自分でも作れるんじゃないかと思いついて。それがきっかけでしたね。

――どのような映画館を想定してプロジェクトを立ち上げたのでしょうか。

ほとんどの映画館は、来館したお客さまに対してスタッフが丁寧にアテンドする接客スタイルだと思います。でも今の時代、お客さまと劇場スタッフがもっとオープンマインドで接する機会があってもいいんじゃないかと思うんです。例えば、「映画ご覧になっていかがでしたか?」とか「また来てくださいね」とスタッフがフランクに話しかけることで居心地の良さを感じてくれる人もいるだろうと。そんな風に、他にはない新しいスタイルで映画館を運営すれば、お客さまに新しい映画体験を提供できるかもしれないと、そんな思いからStrangerの方向性が見えてきました。それからもうひとつは映画館をブランド化するということ。Apple Storeやスターバックスは、社員もスタッフも自分が働く会社が好きで、スタバやAppleのファンとしてお客さまと繋がっているイメージがあるんです。それと同じように映画好きのスタッフが働く映画館を訪れたお客さまが、Strangerや劇場スタッフと同じ目線で映画ファン同志が繫がってくれたらいいなと。そういう理想を持ってやっていこうと思っています。

――確かに一人で映画館に行くと、観賞後すぐに誰かに感想を話したいのに話す相手がいなくて寂しい思いをすることがあります。

そうですよね。映画館だとスタッフから話しかけられることも自分から話しかけることもないけれど、例えばレコードショップの場合は店員さんとお客さまが情報交換をしながら楽しく談笑しているなんて光景をよく見ますよね。なんなら他店で購入したレコードの話をして盛り上がったり(笑)。僕自身もコロナ禍になってから近所の古着屋で5分、10分しゃべってから帰るのが習慣になって、そのうちにその古着屋での時間が生活に潤いを与えてくれていることに気づいたんです。そういうスタイルの映画館を作れたら、来館してくださる方々の生活をもっと豊かにできるんじゃないかなと思ったので、“映画を観る”“映画を知る”“映画で繋がる”“映画を語り合う”“映画を論じる”という5つのコンセプトを決めました

――お客さまにスタッフのファンになってもらうために、どのようなことを考えてらっしゃいますか?

うちのスタッフはみんな僕の知人や友人の紹介で知り合った方なのですが、映画美学校の同期やアパレルの元販売員、京都のミニシアターの元スタッフなど経歴がバラバラで好きな映画のジャンルもみんな違うんですね。個性豊かなスタッフそれぞれが好きな映画をSNSで発信するのもいいし、お客さまとのコミュニケーションの中で個性を出せたらおもしろいですよね。今後はスタッフの好きなジャンルの企画上映もやっていきたいです。

49席の映画館ですが、かなり贅沢な設備環境になっています


――劇場入ってすぐの空間にはハイクオリティなコーヒーショップStranger Cafeが併設されますね。

大手シネコンやミニシアターにはカフェが併設されている劇場があまりないので、映画を観たあと近くのカフェに移動しておしゃべりするなんてことがよくありますよね。Strangerでは映画を観る空間と、映画について語り合う空間を一体化させたかったのでカフェを併設することにしました。

――コーヒーの豆はオリジナルブレンドを仕入れていると聞きました。

群馬県前橋にあるSHIKISHIMA COFFEE FACTORYからStrangerオリジナルブレンドを仕入れていて、本格的なエスプレッソマシンでバリスタが淹れたコーヒーをお楽しみいただけます。また、軽食はサンドイッチとタパス、スウィーツはブラウニーやチョコチップクッキーを販売しますのでぜひ味わっていただきたいです。ここまで味にこだわったカフェを併設している映画館って他にないんじゃないかな。それから、カフェをイベントスペースとして活用することも考えていて、例えば古本屋さんとコラボして特集上映に基づいた本をセレクトしたポップアップを開催したり、映画批評家や映画関係者に登壇してもらうトークイベントなどもやっていく予定です。もちろん、カフェだけの利用も大歓迎で、「さっきTOHOシネマズで『トップガン マーベリック』を観てきましたよ!」なんて会話もぜひStranger Cafeでしていただきたいです(笑)

――映画館劇場設営はアテネ・フランセ文化センターのコンサルティング支援を受けていて、スクリーンや音響、座席などもかなり良質な環境になっているそうですね。

アテネ・フランセ文化センターの堀三郎さんは音響や映写設備のコンサルティングで有名な方で、彼が「集大成のつもりでやっている」と言ってくださったのは心強かったです。座席は新潟、スピーカーは山形にあった比較的規模の大きな映画館が閉館したときに譲り受けたものなのですが、座席はキネットというフランスの映画館や劇場、コンサートホールなどに収める高級品質のシートを開発してきた会社のもので、スピーカーも効果音専用のサブウーファーがついたシネコン用のハイスペックなものになります。映写機はGDCテクノロジー社のものを使用していて、コンパクトで静音性が高いので映写室をあえて作らずに劇場内に設置して映写します。スクリーンのサイズは4.254m×1.78mなので、一般的なシネコンの一番小さいスクリーンよりも大きいですね。49席という席数から考えると、かなり贅沢な設備環境になっていると思います。

工事中の劇場の様子。

――収益化に関してはどのように考えてらっしゃいますか?

正直な話、Strangerにはバイイングパワーがないというウイークポイントがあって、うちで5回上映してやっと264席の新文芸坐の1回の上映と同じになるので、ビジネスとして考えるとかなり厳しいと思います。席数が違うからといって一回の上映の価格は簡単には下がらないので、もっと綿密に配給会社様とのネットワークを持たなければいけないと思っています。まだまだ配給会社様とのパイプがないと言うこともあって、オープニング第一弾としては、作品を独自で調達しました。「ジャン=リュック・ゴダール80/90年代セレクション」です。日本上映権利切れの作品6本をフランスのゴーモン社より買い付けました。

――ご自身で買い付けまでされたんですね。

10代の頃にゴダールの映画を観て衝撃を受けて、そこから映画業界を志すようになったので、こけら落としは絶対にゴダール作品と決めていたんです。それで今回ゴーモン社に対して時間をかけて丁寧に交渉したのですが、配給するために買い付けたわけじゃないので、上映されるのは日本全国でStrangerだけなんです。期間限定の3週間のみです。

――ちなみに80/90年代のゴダール作品セレクションにしたのは何故でしょうか。

ゴダールは『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』といった60年代の作品のリバイバル上映が多いのですが、僕はゴダールの真骨頂は80、90年代だと思っていて、この時期の作品はなかなかリバイバル上映されないし、ネット配信もしていないんです。80、90年代は、彼自身が映像と音響にめちゃくちゃこだわって映画を作っていた時期なので、ぜひこの機会にリバイバル上映したいという思いで今回買い付けました。

――今後はどういったジャンルの作品の上映を予定されていますか。

Strangerの上映方針を“作家主義的な特集”、“日本で未公開もしくは権利が切れている貴重な作品”、“優れた新作の見逃し上映”と決めているので、今後はその上映方針に従いつつ、ジャンルや国籍問わず自分たちがおもしろいと思ったものを積極的に上映していこうと思っています。いよいよ本日オープンしましたが、まずはStrangerの空間を楽しんでいただきたいので、お気軽にお立寄りください!

Stranger 映画館ストレンジャー
〒130-0024 東京都墨田区菊川3-7-1 菊川会館ビル
TEL 050-1751-4052

HP:https://stranger.jp
Twitter:@strangelove2022
Instagram: @stranger.tokyo

《奥村百恵》

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奥村百恵

奥村百恵

音楽誌・映画雑誌の編集部を経て、現在はフリーのライターとしてエンタメ系のコラム執筆や著名人、起業家など幅広いジャンルのインタビュー記事を執筆。大手エンタメ系サイトから映画専門雑誌など様々な媒体のインタビューページを担当している。