釜山国際映画祭(BIFF)のアジアコンテンツ&フィルムマーケット(ACFM)2026で、カンファレンス「Cinema by Brand」が開かれた。
Cinema by Brandは、ACFMと韓国の広告会社INNOCEANが立ち上げたプラットフォームだ。一つのブランドを軸に、世界の映画作家がそれぞれの解釈で企画を出す。選ばれた企画は映画として製作され、韓国内外で公開される。ブランド選びから作家へのブリーフィング、企画選定、製作、公開までを一つの流れで運営するのが特徴で、今後は毎年、釜山で新作を発表していく。最初に組むブランドはハンファグループだ。
モデレーターはBARUNSON C&Cのチーフプロデューサー、キム・ヒジョン氏。ポン・ジュノ監督の長編アニメーションなどを手がけている。登壇したのは、INNOCEANのグローバルCEO/CCOのキム・ジョンア氏、ハンファグループでブランドを統括するパク・ジヨン氏、ACFM委員長のエレン・Y・D・キム氏。後半には初回公募の選定作が発表され、選ばれた監督たちも壇上に上がった。
公的助成や従来の投資とは異なる新たな製作資金
INNOCEANは、現代自動車と組んだ短編『Night Fishing』でカンヌライオンズのグランプリを受賞した。キム・ジョンア氏は、Cinema by Brandはこの受賞から始まったと語る。
帰国すると、多くのクライアントから「うちもああいうプロジェクトができないか」と聞かれた。心強かったのは、映画の作り手からも同じ質問が相次いだことだ。「ブランデッドコンテンツであれだけ自由にやれて、クリエイティブの面でもあそこまで配慮してもらえるなら、ぜひやってみたい」。そうした声を受けて、ジョンア氏は「この二つをつないではいけない理由はない」と考えたという。
マーケティングはもともとブランドと消費者をつなぐ仕事で、接点は多いほどいい。数多くのコンテンツを手がけてきたINNOCEANなら、どうつなげばいいものができるのか、ある程度の答えは持っているはずだとジョンア氏は考えた。マーケティング業界にとっては、新しいビジネスの突破口にもなる。短編で終わらせず、より多くの作り手に機会を広げていければ、長く続く仕組みになるという。

マーケットの側から構想に加わったエレン・Y・D・キム氏は、マーケットの役割の一つを「優れた作り手と資本を出会わせること」と語る。公的助成や従来型の投資とは違う、新しい投資パートナーシップをつくれるのではないか。INNOCEANの提案で新鮮だったのは、ブランドを「広告主ではなく、創作の支援者」と位置づけていた点だという。
ACFMの役目は、監督を発掘して紹介することだけではない。ブランドと監督のあいだで緩衝地帯となり、広告と映画という異なる言語をすり合わせ、創作の自律性を守る仕組みづくりに力を注いだ。製作の実務を担う信頼できるパートナーとして、韓国映画プロデューサー組合(PGK)も加わった。エレン氏はCinema by Brandを「映画の中心を守りながら、映画が出会えるパートナーを広げる、拡張の一つの形」と表現した。

B2B企業ハンファが映画に挑む理由
ハンファグループは、エネルギー、航空宇宙、造船・海洋、金融、ライフと幅広い事業を抱えている。ただ、パク・ジヨン氏によれば、グループ全体で見ると消費者と直接触れる場面は多くない。どうすれば一般の人に親しみを持ってもらえるのか、ずっと考えてきたという。
そこへINNOCEANからCinema by Brandの構想を聞き、「待っていたプラットフォームだ」と感じて参加を決めた。

審査の場では、審査員に「ハンファが映画を?」と驚かれたこともあったそうだ。B2B事業の比重が大きい企業にとって、これは一つの実験だとパク氏も認める。事業や技術を映画の物語にしたとき、観客とどこまで心を通わせられるのか。その可能性を確かめる機会になると期待を寄せた。
ブランデッドコンテンツの魅力として、パク氏は二つを挙げた。題材や尺に縛られず、型にはまらない形で人々に届けられること。そして、国も年齢も異なる観客を相手にするグローバル企業にとって、企業が自ら語るコンテンツとは違い、観客との「心理的・情緒的な距離を縮めてくれる」ことだ。ハンファはこれまでも、海外の放送局や報道機関のコンテンツスタジオとブランデッドコンテンツを作ってきた。今回はより幅広い観客に、グループの物語やビジョン、哲学を届けたいと語った。
ブランドは「後援者」であるべき。『バービー』やウェス・アンダーソン作品の事例
映画として評価された成功例には3つの共通点がある、とエレン氏は言う。






