カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる

・2026年6月17日(水)東京ビッグサイトでのカルビーのIPとファンエンゲージメント講演
・親しみやすさを軸に年間100件超のIPライセンス事業展開
・135万人会員アプリとファンミーティングによるロイヤル顧客育成

ビジネス 企業動向
PR
カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる
カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる
  • カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる
  • カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる
  • カルビーのファンエンゲージメント戦略:IPとデータでロイヤル顧客を育てる

2026年6月17日、東京ビッグサイトで開幕した第19回 コンテンツ東京で「IP活用とコミュニティを最大化したカルビーのファンエンゲージメント育成」と題したセッションが行われました。

カルビー株式会社から2人の担当者が登壇。新規事業推進本部 Calbee Future Labo デザインチームマネジャーの長澤君枝氏が前半でIPライセンス戦略を語り、コーポレートコミュニケーション本部 グループ広報部 部長の野堀和哉氏が後半でファンエンゲージメントの仕組みを解説しました。

長澤君枝氏(左)と野堀和哉氏(右)

お菓子売り場の外にIPを置く理由

長澤氏が担当するのは、カルビーのIPを活用したライセンス事業です。カルビーのIPとは何かから話は始まりました。パッケージデザイン、キャラクター、ロゴ、商品のビジュアル。それぞれが単なるパッケージの要素ではなく、他社へのライセンス展開を通じて「お菓子以外の場所でお客様と出会う素材」として位置づけられています。

「じゃがりこのことを日々考えているのは我々ぐらいだと思っています。でも、グッズを持ち歩いたり身につけたりすることが起きると、次にじゃがりこに出会ったときに少し気持ちが変わっているんじゃないか」と長澤氏は述べました。

グッズが直接的な購買を促すというよりも、日常の中でカルビーに触れる機会を増やし、そこから会話が生まれることを目指すものです。

じゃがりこのキャップを持っている人に「じゃがりこ好きなの?」と声をかけられる → 同じ商品をプレゼントしてもらった人が次にその商品を手にするとき、また違う気持ちになる

長澤氏はこれを「社会的に満たされる状態」の創出と表現しました。

カルビーグループの成長戦略で掲げるウェルビーイングを、食べる体験の外側でも実現しようとする発想です。

IPライセンス戦略を担当するカルビー フューチャーラボ デザインチームマネジャー 長澤君枝氏

カルビーのデザイン哲学:親しみやすさを軸に

長澤氏はライセンス展開を支えるデザインコンセプトを「Be Friendly Be Charming」と表現しました。スタイリッシュや洗練さではなく、親しみやすさ・安心感・ポジティブさ・わかりやすさを軸にするという考え方です。

「スタイリッシュでかっこいいものよりも、なるべく敷居が低く、親しみがある。ポジティブで分かりやすいというところを大事にしていきたい」と長澤氏は説明しました。

展開事例は年間100件超に及びます。バンダイとのキャラクターコラボレーションロボット、ユニクロでのポテトチップスTシャツ(北海道限定)、傘ブランドWpc.とのじゃがりこ袋型折り畳み傘。ポテトポーチという商品では、グループ会社のカルビーポテト株式会社がポテトチップス用に品種改良した実際のじゃがいもの写真を使いました(長澤氏による紹介)。「じゃがいもを愛しすぎている会社」の姿勢をそのまま雑貨で表現した事例です。

「カルビーレトロ」シリーズも紹介されました。古川紙工がカルビーのデザインをレトロ調にアレンジした雑貨が好評を博したことで、逆に実際の商品パッケージがそのデザインを採用するという展開に発展しました。

ライセンシー側の解釈がカルビー自身の商品に影響を与えるという珍しい事例です。

ルビープログラムが生むデータとファン

後半は野堀氏が語りました。テーマはファンエンゲージメント育成の仕組みです。

起点となるのが「ルビープログラム」というスマートフォンアプリです。2020年9月に始まったこのアプリでは、食べ終わったカルビー商品のパッケージを指定の折り方で折り、カメラで撮影するとAIがポイントを付与します。貯まったポイントは工場見学や収穫体験などのファンミーティングへの応募に使います(会員数は2026年6月時点で135万人)。

以前はパッケージ裏の応募券を切り取って郵便で送るアナログなキャンペーンが中心で、購買データのデジタル活用ができていなかったと野堀氏は振り返りました。アプリへの移行によって、誰がいつどの商品を買ったかというデータが初めてデジタルで取得できるようになりました。

コーポレートコミュニケーション本部 グループ広報部 部長 野堀和哉氏

値上げ時代に問われるロイヤル顧客の価値

なぜファンエンゲージメントの強化にここまで力を入れるのかという観点を、野堀氏はデータを根拠にすると答えました。

直近数年、物価の高騰などから値上げを実施してきました。通常値上げは購買離反を招きます。しかし「ロイヤル顧客であればあるほど、若干の値上げでは離反しにくい」と語っています。

また具体的には一人あたりの年間購入額をロイヤル顧客と一般顧客で比較すると差は約7倍にのぼります。

「どちらをターゲットにするかという話をすることもあります。我々としては、今買ってくださっているお客様にもう一つ、もう二つ手に取っていただくほうが、やりがいがある」と野堀氏は語りました。

小さく、深く。ファンミーティングの設計

そのロイヤル顧客と直接向き合う場がファンミーティングです。2024年6月から国内全国展開を始め、2024年度は17拠点で計19回開催し、累計で1,400名が参加しました。2026年3月には香港での初の海外開催も行いました(香港の輸入販売50周年を記念)。

特徴的なのは、規模を意図的に抑えていることです。一回あたり30名前後の参加者を集め、社員が手作りで会場を飾り付けます。「100人、1,000人でやれば費用対効果も良くなるという声もあります。でもそうすると一人一人のお客様と接する時間が薄くなる」と野堀氏は言います。

ファンミーティングには、もう一つの効果がありました。従業員への影響です。「工場のメンバーはお客様と直接接する機会がなかったりします。自分たちの商品にこんな熱狂的なファンがいるのかと気づくだけで、従業員のエンゲージメントも上がっていく」。北海道の工場で開催した際には、来場したお客様がキャラクターのうちわを手作りして持参しました。受付担当の社員が涙したというエピソードを、野堀氏は印象に残るものとして話しました。

「ファンの方々は社員と同じことをやりたいというケースが多い。サンプリングのイベントで、社員側でお客様に配りたいという方がいる」。工場見学に参加したファンが生産ラインの改善点を指摘する場面もあるといいます。消費者と企業の関係を超えた関わり方が少しずつ生まれています。

デジタルをリアルの入口にする

野堀氏はセッション全体を通じて一貫した姿勢を示しました。ルビープログラムはデータを集め、ファンを可視化するデジタル基盤です。そこで識別されたロイヤル顧客を、ファンミーティングというリアルな場に招きます。デジタルはリアルへの入口として機能し、リアルはデジタルが補えない記憶や感情を生む場として機能します。

今後の成果指標としては、購買量に加えて「エンゲージメントスコア」の定量化を進める方針だと説明。購入量が多くても愛着が低いお客様と、愛着の高いお客様を区別して分析し、施策の効果を評価するためです。

コンテンツ東京に新設された「ファンコミュニティマーケティング EXPO」が今回で初回であったように、ファンを起点にしたマーケティングへの関心はメーカーに限らず広がりを見せています。カルビーが積み上げてきたIPとデータとリアルの接点設計は、その先行事例のひとつとして注目されます。

《杉田大樹@MediaInnovation》

編集部おすすめの記事