限られたリソースでコアファンを囲うオンラインサロン運営 DMM・大井川鐵道・山口のインフルエンサーがディスカッション

・2026年6月17日(水)第19回 コンテンツ東京にてコアファン獲得のパネル開催
・大井川鐵道がDMMオンラインサロンで限定先行情報公開によるファンコミュニティを構築
・「ぎゅっと山口」は地元企業スポンサーを活用した三方良しのコミュニティ運営を再始動

映像コンテンツ マーケティング
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限られたリソースでコアファンを囲うオンラインサロン運営 DMM・大井川鐵道・山口のインフルエンサーがディスカッション
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2026年6月17日、東京ビッグサイトで開催された第19回 コンテンツ東京の会場内にて、「綺麗事なし!規模を問わず独自の魅力でコアファンを囲い込む方法」と題したパネルディスカッションが行われました。

登壇したのは、合同会社DMM.comのオンラインサロン事業部 法人営業部マネージャーの松井秀樹氏、大井川鐵道代表取締役社長の鳥塚亮氏、山口インフルエンサー事務所growthの代表を務める沼良枝氏、同事務所に所属し(株)Acreの執行役員でもある古重満太郎氏。松井氏がモデレーターを担いながら、自身もDMMオンラインサロンの活用支援の立場から加わるかたちで進行しました。

第19回 コンテンツ東京「Community park」で行われたパネルディスカッション 左から松井氏、鳥塚氏、沼氏、古重氏

ローカル鉄道がオンラインサロンで作るファンビジネス

大井川鐵道は静岡県を走るローカル鉄道です。日本で唯一、年間を通じて蒸気機関車(SL)を動態保存・運行し、2014年からはアジア初の「きかんしゃトーマス号」も運行しています。

地元の利用客が車中心という過疎地域で、観光需要を取り込むことで鉄道を維持してきた会社です。外資系航空会社勤務を経て、いすみ鉄道やえちごトキめき鉄道での再生実績を持つ鳥塚氏が、2024年6月に社長に就任しました。

DMMオンラインサロンに「大井川鐵道ファンクラブ」を開設したのは2025年5月のことです。

鳥塚氏は、「鉄道会社のホームページって、お堅いんですよ。本音で話せないんです。だから逆に、オンラインサロンに入会していただいた方には、もう少し細かい情報を届けます、本音で話しますという形にしています」と語ります。

また、運営は車両・運転・観光など各部署から選ばれた若いスタッフに委ねられています。「決裁ルートを通すと情報の鮮度や面白さが失われます。信頼できるスタッフに裁量を渡したほうが、会員にとって価値のあるコンテンツが生まれるという判断」だと鳥塚氏は言及しました。

大井川鐵道代表取締役社長の鳥塚亮氏

会員に届けるコンテンツの中心は、公式ウェブサイトには掲載されない情報です。機関車の形式、その日に連結されるヘッドマークの情報、まだ発表されていない1か月分の運行情報を先行公開します。「得しちゃったという世界観を作っています」と鳥塚氏は説明。有料会員だからこそ手に入る情報を設計することで、継続入会の動機を作っています。

本業への還元という観点でも、コミュニティは機能しています。定員の限られたイベントへの優先申し込み権を会員に提供し、熱量の高いファンを先に取り込みます。「常に情報を発信し続けることで、忘れられない存在になる。そしてたまには行ってみようかとなる」と鳥塚氏は話しました。コミュニティが観光地としての大井川鐵道へのリマインダーとして働く仕組みです。

さらに意外な効果として、コメント欄を通じた会員同士の交流が自然に生まれています。40~50代の鉄道ファンが多いこのコミュニティでは、同じ趣味を持つ人が周囲にいなかった人たちが初めて出会う場になっています。「電車が好きなんて、大人になったらあんまり言えない時代でした。みんな黙ってたんだけど、実は昔から好きだったとカミングアウトするんですよ」と鳥塚氏は説明しました。オフ会では、コメント欄だけで交流していた会員が実際に顔を合わせ、同じブルートレインを学生時代に体験した世代同士の話で盛り上がるようです。

※この場合のオフ会は「大井川鐵道ファンクラブ」ではなく、鳥塚氏個人のオンラインサロン を指しています。

今後の構想として鳥塚氏が描くのは、会員専用の貸切列車です。オンラインで繋がった人たちが、実際に1本の列車の中で出会います。「バーチャルをリアルに変えるというか、みんなが出会える場に反転させていきたい」と話しました。

失敗を経た「ぎゅっと山口」の再チャレンジ

沼良枝氏と古重満太郎氏が共同運営する「ぎゅっと山口」は、山口県の地域情報と交流を目的としたオンラインサロンです。

最初の立ち上げは、6名のインフルエンサーによるチームで行われました。しかしメンバー間の意思統一がうまくいかず、無料でいくらでも情報が得られるSNS環境の中で、有料のオンラインサロンへの入会を促すことの難しさにも直面。「地方創生のオンラインサロンという前例がなかった。何度も諦めようと思いました」と沼氏は振り返ります。

山口インフルエンサー事務所growth代表の沼良枝氏

再スタートするにあたって選んだのが「スポンサー型」と呼ばれるモデルです。松井氏はこの仕組みを「三方良し」と表現します。

通常のオンラインコミュニティは、運営コストを会員の月額費用で賄うか、運営者が全額負担して会員には無料で提供するかのどちらかが多いです。スポンサー型はそこに地元企業や自治体を加えます。

運営者はSNSの拡散力とコンテンツ制作力を提供し、スポンサー企業は会員へのクーポン配布や新商品の先行提供を通じてコミュニティを豊かにします。会員は限定情報や優待サービスを享受しながら地域に関わります。この三者が互いにメリットを得られる構造が「低コスト、持ち出しゼロでの運用を可能にする」と松井氏は説明しました。

スポンサーをどう獲得するかが、このモデルの成否を分けます。沼氏はまず自身のSNSで地元店舗のPRを無償で行い、再生数という実績を示しました。「ありがとうの連絡をもらってから関係性を作り、スポンサーになっていただいた」という流れです。山口県長門市もスポンサーとして参加してもらっていることを明かし、ヨガインストラクターとして10年以上培った行政との関係を活かしたと語ります。

Acre 執行役員でSNSコンサルタントの古重満太郎氏

古重氏は、「地元の企業に対してリスキーなターゲットへのアプローチができ、会員にとってもお得で楽しい、他にない魅力的な場になる」と話しました。スポンサーには「テーマへの親和性」と「会員へのメリット提供」を条件にします。単なる広告掲載ではなく、コミュニティ自体を豊かにする参加者として位置づける点が、このモデルの特徴です。

「自分がお客さんだったら」という判断軸

また、セッションを通じて鳥塚氏が繰り返したのは、シンプルな判断の起点でした。「今あるものでどうやって活用していくか。大きなお金がなければできないという発想は、私の中にありません」

商品を作るとき、コンテンツを設計するとき。「自分がお客さんだったら買うか、振り向くか」を軸に考えます。その結果として値段を決め、情報の出し方を設計します。「お願いしますから買ってください」という商売はしたくない。自分の考え方に合う人が来てくれれば十分で、その代わり、自分の考え方を常に発信し続ける——これが鳥塚氏の基本姿勢です。「忘己利他、三方よし」という言葉を座右の銘に掲げ、「鉄道の力で日本の田舎に輝く未来を」と語り続ける鳥塚氏にとって、コミュニティ運営はその実践のひとつでもあります。

松井氏は、「大規模な予算やリソースがなくても、正しい魅力付けとビジネスに還元できる仕組みがあれば、コミュニティは強力なビジネスになりえます。うちには無理かもと思っていた方が、もしかしたらできるかもと少しでも感じていただければ」とセッションを締めくくりました。

DMMオンラインサロン事業部 法人営業部マネージャーの松井秀樹氏

DMMオンラインサロンは2026年2月にサービス開始10周年を迎えています。4年連続で流通総額・アクティブ会員数ともに国内シェアNo.1という実績を背景に、法人・団体向けのコミュニティ構築支援も強化中。1,700近いサロンが集まるプラットフォームには、テーマに合ったインフルエンサーとのコラボレーションを組み合わせる仕組みもあります。

※出典:デロイトトーマツミック経済研究所調べ「オンラインサロン総合プラットフォーム市場の動向」(ミックITリポート2025年10月号

インフルエンサーとしての発信力を持たない企業や自治体がコミュニティを立ち上げる際に、既存サロン運営者と組んで座組を作る支援も行っています。

「ぎゅっと山口」のような地方創生型コミュニティはまだ前例が少ない状況です。しかし沼氏と古重氏の試みは、SNSの発信力と地域情報を掛け合わせ、企業・自治体・会員の三者を巻き込む形で成立させようとしています。ローカル鉄道のファンビジネスとして定着しつつある大井川鐵道のケースと合わせると、「大規模な予算がなくても成立するコミュニティ」の輪郭が少しずつ見えてきます。

「大きな予算がない」「専任スタッフを割けない」。そういう理由でオンラインコミュニティの立ち上げをためらっている企業や団体は少なくありません。本セッションは、こうした層にも響く内容のパネルディスカッションとなりました。

《杉田大樹@MediaInnovation》

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