YouTubeが米大手タレントエージェンシーCAAと提携し、AI(人工知能)生成のディープフェイクに対抗するため、新肖像管理技術を導入してセレブの肖像権を管理することが明らかとなった。
Varietyによると、YouTubeで開発初期段階にある肖像管理技術は、無許可で生成されたセレブの肖像を大規模に識別・管理できるよう設計されているという。無許可の映像や画像が特定された場合、モデルとなったセレブは、著作権の侵害とコンテンツを削除するリクエストを送信できる仕組みとなるようだ。YouTubeは公式ブログにて、2025年初旬から、受賞歴のある俳優やトップアスリートなど、一流のセレブとともに最新の肖像権管理技術のテストを開始すると発表。現時点では、プログラムに参加する予定のCAA所属のセレブの名前は明かされていない。
YouTubeは、「この取り組みは、より大規模なテスト活動に向けた最初の第一歩」と称し、新しい肖像管理技術をすぐに全ユーザーに提供する代わりに、まずは限定的なテストを行い、その過程で得られる参加者の意見やデータを活用し、さらに技術を洗練させる計画だ。
The Hollywood Reporterによると、これまでにCAAは、独自の事業となるCAA Vaultを運営している。その保管庫では、映画やテレビ番組、コマーシャルなどのプロジェクトにライセンスできるセレブのデジタル肖像や声が管理されている。また、CAAと米ベンチャーキャピタル会社New Enterprise Associatesの投資プラットフォームConnect Venturesは、人気アニメシリーズ「サウスパーク」のクリエイター、マット・ストーンとトレイ・パーカーが設立したディープフェイク企業Deep Voodooへの2,000万ドル(現為替で約30億円)の投資ラウンドも主導している。
一方、YouTubeはクリエイターのコンテンツ開発と公開を支援するため、プラットフォームにAIツールを積極的に追加すると同時に、ディープフェイクやセレブに似せたAI音声の取り締まりに特化した規制を追加することも約束している。
YouTubeのCEO(最高経営責任者)ニール・モーハン氏はCAAとの提携について、「YouTubeでは、AIへの責任あるアプローチは強力なパートナーシップから始まると考えています」と発言。続けて、「今後、アーティストやクリエイターがAIの驚異的な可能性を体験する一方、自身の肖像に対するクリエイティブなコントロールを保てるよう、CAAとともに取り組んでいきます。このパートナーシップは、その未来を築くための重要な一歩です」ともコメントし、AIに対する取り組みについて意気込みを語った。
YouTubeとCAAの新たな提携により、業界におけるAI技術の健全な利用促進や、クリエイターやセレブによるコントロールの強化が期待される。