今年も9月に入り、秋興行シーズンに突入した。振り返ってみれば、昨年のハリウッドはストライキの影響で多くの作品制作や宣伝がストップし、業界に大きな混乱を与えてきた。
北米ではその影響が尾を引く形で、今年前半は中々盛り上がりきれない状況が続いていた。特に実写版『白雪姫』、『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース(原題)』『デッドプール&ウルヴァリン』などのビッグタイトルが姿を消した3~5月の累計興収は前年比25%減という苦しい状況に見舞われた。
しかし、その救世主となったのがディズニーが満を持して送り出した『インサイド・ヘッド2』。現在では世界歴代興行収入ランキングで9位となる数字を叩き出している本作は、アニメーション映画の記録を次々に塗り替える大快挙を達成した。その功績もあり6月の累計興収は前年比約4%減に抑え、その後も7月に延期された『デッドプール&ウルヴァリン』がR指定作品歴代1位のヒットを記録するなど、夏興行はなんとか昨年にも劣らない勢いを取り戻すことができた。
そんな中、秋興行を大きく盛り上げている作品がティム・バートン監督最新作の『ビートルジュース ビートルジュース』(日本は9月27日公開)だ。
また、9月公開作品として『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に次ぐ歴代2位、今年公開された作品としても『デッドプール&ウルヴァリン』『インサイド・ヘッド2』に次ぐ3位の数字を記録。巨匠ティム・バートンの作品としても『アリス・イン・ワンダーランド』に次ぐキャリア歴代2位のスタートを切った。ここまでの作品を並べれば、この数字の凄さが伝わるだろう。まさに秋興行シーズンにとって幸先の良いヒットとなったのだ。
一度は引退も考えた!? ティム・バートンの完全復活劇
ティム・バートン監督は『アリス・イン・ワンダーランド』や『バットマン』『チャーリーとチョコレート工場』など数々のヒットを生み出してきた。ただ、少なからず彼にも苦節の時期があったことは確かだ。例えば、ティム・バートン監督作品の常連で何度も主演を演じたジョニー・デップのキャリア低迷や浮気発覚によりヘレナ・ボナム=カーターとの内縁関係が終了するなど公私ともに多くの修羅場をくぐり抜けてきた。
そして、彼のキャリアにおけるターニングポイントのひとつとなっているのが2019年に公開された実写版『ダンボ』である。ディズニー屈指の人気アニメーションを実写化するということで話題を集めたが、興行面と評価面どちらもあまり振るわない結果に終わってしまった。様々なメディアでこの不振が取り上げられたり、監督自身がこの作品をきっかけにディズニーとの決別を表明したり、ネガティブな報道が続いていた。