南アフリカで「ダーバン・フィルムマート」が開催、映画業界での雇用やリベート制度の欠陥が議題に

7月19日(金)に南アフリカ共和国にて開幕した「ダーバン・フィルムマート」で、「南アフリカ・オーディオビジュアル産業の現状」と題したパネルディスカッションが開催され、映画産業の雇用や支援について議題にあがった。

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南アフリカで「ダーバン・フィルムマート」が開催、映画業界での雇用やリベート制度の欠陥が議題に
南アフリカで「ダーバン・フィルムマート」が開催、映画業界での雇用やリベート制度の欠陥が議題に

7月19日(金)に南アフリカにて開幕した「ダーバン・フィルムマート」で、「南アフリカ・オーディオビジュアル産業の現状」と題したパネルディスカッションが開催され、南アフリカの映画産業の雇用や支援について議題にあがった。

このパネルディスカッションには、国立映画ビデオ財団(NFVF)のオンケ・ドゥメコ氏、ハウテン州フィルムコミッションのマック・モゴバ氏、ケープタウンと西ケープ州の公式観光・貿易・投資促進機関「Wesgro」のモニカ・ロルヴィック氏、SABCテレビのヤシカ・シン氏、東ケープ州開発公社のジャニス・ジョナサン氏、クワズールー・ナタール州観光・映画局のジャッキー・モツェペ氏らが登壇した。

Varietyによると、アフリカ最大の経済大国である南アフリカは、近年、犯罪や失業率の高止まりから計画停電に至るまで多くの課題に直面しており、映画業界において雇用創出を促進するための助成金に重点が置かれていないとのことだ。

ドゥメコ氏は、南アフリカのビジネスの成長と変革に不可欠な機関であるNFVFの予算不足を産業を妨げるより大きな構造的問題の象徴として挙げた。また議会演説でシリル・ラマポーザ大統領が言及した政府の国家開発計画(NDP)を評価しながらも、オーディオビジュアル部門の未開発の可能性を見出すために十分なことが行われていないとし、「同じようなGDPを持つ多くの産業と南アフリカを比較した場合、ここでの違いは、この産業に意図的に焦点が当てられていないことだ」と語った。

Mail&Guardianによると、通常71億(約591億円)~80億ランド(約666億円)とされる南アフリカの映画産業は、コロナの大流行で56%の価値を失い、29億ランドにまで落ち込んだという。現在は29億ランドから回復させることが課題となっているが、回復させることで9,000万ランド(約7億4,935億円)の税収を得ることができ、雇用創出にもつながるとドゥメコ氏は述べた。

また、リベート制度でカバーされる経費の払い戻しが遅れていることも議題にあがった。Varietyによると「一部の製作者はカバーされる支出の払い戻しを2年も待っている」とのことで、この制度を管理する貿易産業競争省(DTIC)は支払いの滞りに少しずつ対処しているとのことだが、批判は大きい。映画製作者のカティ・ウェイネク氏は「私たちは映画製作者として、DTICに責任を負わせる必要がある。素晴らしいリベートがあると言い続けることはできない。リベートが存在しないかのような機能不全に陥っている」と現状を痛烈に批判した。

さらに、その問題を埋め合わせるようにShowmaxやNetflixのようなストリーミングサービスが参入してきたことも話題に挙がったが、これらのサービスがオリジナル制作のコスト削減に乗り出す中で、南アフリカの映画製作者たちは自分たちが取り残されるのではないかと心配している。「突然大きな機会が増えたことは良いことだが、現状ではそれだけが頼りだ。南アフリカのローカルで特定の放送局は機能していない」「結局のところ、私たちは新しい世代、つまり新しい声を育てていない」と自国のサービスや次世代の教育が滞っていることが議論となった。

《伊藤万弥乃》
伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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