「アニメは中期の成長ドライバとして期待」ソニー、24年度経営方針を発表

「ソニーグループ 経営方針説明会」に吉田憲一郎CEOと十時裕樹COO兼CFOが登壇。ゲーム・映画・音楽・アニメなどエンタメ分野のシナジーを加速させ、さらなるIP価値最大化に向けての投資を進めていく方針を打ち出した。

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「ソニーグループ 経営方針説明会」
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ソニーグループは、5月23日(木)、2024年度経営方針説明会を開催。吉田憲一郎CEOと十時裕樹COO兼CFOが登壇した。ゲーム・映画・音楽・アニメなどエンタメ分野のシナジーを加速させ、さらなるIP価値最大化に向けての投資を進めていく方針を打ち出した。

吉田CEOは、「ソニーはクリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」ことを目標に掲げていると語った。近年、同社はゲームや音楽、映画などのエンタメ事業に力を入れており、この3分野はグループ全体の売上の60%を占めるにいたっている。「各分野が等距離でつながり、シナジーが加速している」と吉田CEOはその成長速度に自信をのぞかせた。

2018年のEMI Music Publishingの買収以来、コンテンツクリエイションを強化してきた同社は、この6年での買収・投資にかけた費用は1.5兆円にもなる。その中には、アニメのグローバル配信プラットフォーム「クランチロール」やゲーム会社Epic Gamesへの投資・買収も含まれる。ソニーはクリエイタ―コミュニティへの貢献をすることで利益を拡大していく方針であると吉田CEOは語る。


また、今後はリアルタイムを重視するという。ゲームエンジンのアンリアルエンジンやCMOSイメージセンサーといった瞬間を捉えるテクノロジーを様々な領域に活用し、クリエイターがありのままの現実を捉えることをサポート、映像制作の分野でもバーチャルプロダクションや没入型のコンテンツ制作システムに活かしていくとのこと。

続いて、十時COO兼CFOのプレゼンテーションに入る。十時氏からはソニーのエンタメ分野における、IP価値最大化の戦略が語られた。ソニーは長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を策定。このビジョンにもとづきIPの創出に全力で取り組むという。

まずアニメは、日本のアニメのIP創出とアニプレックスやクランチロールを中心に高品質なアニメを世界に届けていく。そして、アニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を傘下のアニメスタジオと協力して開発。本年度中に試験導入を予定しているとのこと。この制作ソフトは自社グループのスタジオだけではなく、外販も行い、業界全体に貢献することを目指すという。

また、海外のアニメクリエイターを育成するアカデミー設立の検討を開始したとのこと。テクノロジーと人材、両方でアニメ業界の改善をしていく方針のようだ。

映画の分野もIP創出に取り組んでいく。これまでもゲームの実写化に取り組んできたが、今後も『ゴッド・オブ・ウォー』や『ホライゾン』などの作品が控えている。また、ソニー・ピクチャーズ傘下のPixomondoがEpic Gamesと連携し、バーチャルプロダクションなどの新技術を駆使できる映像クリエイターの育成にも力を入れていくとのこと。

音楽では、YOASOBIの世界的ヒットにも触れた。さらにアーティストの伝記映画やライブドキュメンタリーの制作も発表。リル・ナズ・Xのライブに密着するドキュメンタリーやビートルズの伝記映画を制作するという。

スポーツ分野においては、リアルタイム性を重視したテクノロジーによって新たな楽しみ方を提供していく。プレイ中の選手の骨格の動きをデータ化し、リアルタイムで3Dアニメーションにするコンテンツを作っていくとのこと。

ゲームでは新興市場のクリエイターの発掘・支援を強化する。「India Hero Project」を展開し5本のゲームタイトルを開発中だそうだ。

また、PlayStation Networkの基盤をベースとするアカウントや決済機能、セキュリティなどのコア機能をクランチロールへと展開することで、グループ全体のエンゲージメントを発展させる計画も進行中とのことで、各種IDの共通化も進めるとしている。

また、グループ全体で多様な人材を登用し成長を実現していきたいとも語っていた。

質疑応答の中で、AIについても言及。吉田CEOは、ソニーはテクノロジー企業であると同時にエンタメ企業でもあり、クリエイティブは人に宿るものだと明言。クリエイターの権利を守りながら人のクリエイティブをサポートするツールとしてAIの活用を進めていく方針であると語った。

また、過日発表された成長投資として3年で1.8兆円を投入するとしているが、有力なIPをその枠内で積極的に獲得していく意向だという。過去6年での1.5兆円の投資はこれから利益を回収していくフェーズに入るとも吉田CEOは語った。

また、アニメについては中期の成長ドライバとして期待をしていると吉田CEOは言う。クランチロールは成長率と利益率が高く、良質なコンテンツが多く必要であるので、クリエイターを育成・支援していくことで、環境整備をしていきたいと語った。

《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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