アカデミー賞ノミネート作品の「気候変動」表現のリアリティ度合は?合格したのは『バービー』など3作品のみ

「物語の世界に気候変動が存在するかどうか」「登場人物が気候変動に触れているかどうか」という2つの点を基準に調査された

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アカデミー賞ノミネート作品の「気候変動」表現のリアリティ度合は?合格したのは『バービー』など3作品のみ
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非営利団体グッドエナジーとコルビー大学のバック研究所が、物語の中で気候変動が描かれているかを評価する「気候変動リアリティチェック」を使用し、アカデミー賞ノミネート作品を調査した。

グッドエナジーによると、気候変動リアリティチェックは「脚本家や業界関係者が自らのストーリーを検証、または観客がハリウッドがスクリーン上で気候変動の現実を表現しているかどうかを確認し、研究者がストーリーに気候変動が含まれているかどうか、あるいは時間の経過とともに表現が増加しているかどうかを測定するためのツール」であり、ジェンダーバイアスを測定する“ベクデル・テスト”を基にしている。ファンタジーや違う惑星を舞台にした物語でなければ、現在・過去・未来を舞台にしたどんな物語でもテストすることができ、チェックは「物語の世界に気候変動が存在するかどうか」「登場人物が気候変動に触れているかどうか」という2つの点を基準に行われている。

マシュー・シュナイダー・メイヤーソン博士率いる研究チームは、この気候変動リアリティチェックを使用して、今年度のアカデミー賞にノミネートされた映画を分析。その結果、長編映画31本のうち調査基準に当てはまる作品は13本であり、その中で合格したのは『バービー』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE1』、『ナイアド ~その決意は海を越える~』の3本(23%)のみであった。

アカデミー賞8部門にノミネートされた『バービー』では、気候危機と消費主義を結びつける言及がある。アカデミー賞2部門にノミネートされた『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE1』では、ユージーン・キットリッジ(ヘンリー・ツェーニー)がイーサン・ハント(トム・クルーズ)に「次の戦争は冷戦ではない 弾道ミサイルの飛び交う血なまぐさい戦いだ 涸渇寸前のエネルギー 飲み水 空気を奪い合う」と警告している。またアカデミー賞2部門にノミネートされた『ナイアド ~その決意は海を越える~』では、ダイアナ・ナイアド(アネット・ベニング)がキューバからフロリダまで泳いで歴史を作ろうとする試みの障害として、気候変動が明確に言及されている。

なおグッドエナジーによると、この気候変動リアリティチェックは「全ての物語が気候変動をテーマにしていることを推奨したり、義務付けたりするものではなく、映画制作者がどのようなストーリーを語るべきかを規定するものでもない」という。しかし、多様な10ヵ国における16~25歳の若者の75%が気候変動のせいで将来が恐ろしいと感じているが、定期的に家族や友人とそのことについて話している人は37%に過ぎないという事実がある。そのため同団体は、スクリーン上の登場人物に語らせることで簡単な日常の会話にも繋がり、「気候変動への不安や絶望感を解消できると考えているとのことだ。

Other Sources:Variety, IndieWire
《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。