電通グループは2023年12月期に107億円の最終赤字を計上した。
2020年12月期に1,596億円の最終赤字を出していたが、3期ぶりに赤字へと転落した。
オーストラリアや中国など日本を除くアジア太平洋地域において、531億円もの減損損失を計上したことが赤字の主要因。電通は2023年11月14日に通期業績の下方修正を発表しており、692億円としていた最終利益を51.9%低い333億円に修正していた。更なる下方修正で、まさかの赤字転落となった。
中国は景気低迷が鮮明になりつつある。電通は2019年10月に中国でECコンサルティングなどを行うEBP社を買収、エリアの強化を図ってきた。それが裏目に出ている。
注力エリアのひとつ、米国は減収へ
2023年12月期の電通の売上高に当たる収益は、前期比4.7%増の1兆3,045億円だった。2024年12月期は同4.0%増の1兆3,567億円を予想している。電通はコロナ禍を迎えた2021年12月期から2022年12月期まで2桁成長を続けていた。失速が鮮明になっている。
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※決算短信より筆者作成
地域別に売上総利益を見ると、全エリアでの伸び悩みが際立つ。日本は前期比0.7%の増加に留まった。2022年12月期は7.6%増加していた。注力エリアの一つである米州は0.4%のマイナスだ。前の年は24.8%の増加である。カナダや南アメリカは堅調に推移しているものの、米国で苦戦している。
■エリア別売上総利益(単位:10億円)
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※決算説明資料より
アメリカでは、コロナ禍が巻き起こしたDXにより、一時的に広告需要は膨らんでいた。それが一巡すると、同時期に進行したインフレによって多くの企業で広告を手控える動きが広がった。
しかしそこから需要は回復しつつあり、アルファベット(グーグル)やメタ(フェイスブック)などのプラットフォーマーは、大幅な増収へと転じた。
ただし問題点がある。電通の米国エリアで中核をなすマークル社は、P&Gやディズニー、デルなどの大手企業をクライアントとして抱えているが、旧来型の放送広告から抜けきることができていないのだ。後れをとっているデジタルへの早期転換が求められる。2021年に海外事業の大規模な組織再編を行っているが、米国独立系で最大級のマーケティング会社の事業転換は容易ではない。
日本のバブル崩壊と酷似する中国の不景気
減損で赤字要因となったアジア太平洋の売上総利益は、2.7%の増加。2022年12月期は15.4%増だった。
2023年の経済動向で注目を集めたのが、中国の景気の冷え込みだ。