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セガのゲームセンター事業を買収したGENDAの業績が好調です。
11月20日に2024年1月期(2023年2月1日~2024年1月31日)通期業績の上方修正を発表し、売上高を従来予想比11.5%増の530億円、営業利益を同16.2%増の50億円にそれぞれ修正しました。
同社は2022年7月に上場しており、前年度下旬から今年度上半期にかけて合計10か月の間M&Aが制限されていました。そのため、今期は本業で稼ぐ力が試される局面。9月20日にオープンした旗艦店である「GiGO総本店」(東京・池袋)はオープン当日500名の行列ができるなど、新規出店によって収益力を高めています。
下期からはM&Aの活動を再開。11月20日に映画配給会社のギャガ(GAGA)の子会社化を決定しました。これまで、「グリーンマイル」や「ラ・ラ・ランド(ポニーキャニオンと共同配給)」、「万引き家族」など国内外の人気作を配給したことで知られています。
順風満帆に見えるGENDAですが、死角がないわけではありません。
ゲームセンターの稼ぎ頭はクレーンゲームに
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※決算短信より筆者作成
GENDAの業績が予想通りに着地をすると、売上高は前期比15.0%、営業利益は同17.8%増加する見込みです。営業利益率は9.4%。イオンのゲームセンター事業であるイオンファンタジーの2023年2月期の営業利益率が1.2%、2024年2月期は4.6%を予想していることと比較をすると、GENDAの稼ぐ力の高さが際立ちます。
GENDAは主力のゲームセンター事業において、関連施設を次々と買収してきました。これはロールアップ戦略と呼ばれ、投資ファンドが投資先の企業価値を高めるためによく使う手法。GENDAは2023年11月末時点で263店舗、無人型の店舗ミニロケを458店舗を国内外で運営しています。
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※決算短信より
「GiGO総本店」はオープンから30日間で売上高2億円を達成するなど好調。売上構成比率はクレーンゲームが全体の8割を占めており、プライズゲームに商機を見出していたGENDAの目論見通りといったところでしょう。
既存店の集客力も上がっています。GiGOの都市型既存店の2023年9月・10月の売上高は、コロナ禍を迎える前の2019年の水準を上回りました。特に夜の時間帯(18時以降)の回復が顕著。これは学校や会社帰りの消費が回復していると見ることができ、ゲームセンターを取り巻く需要は元に戻ったと言えるでしょう。
同業のイオンファンタジーにも同じ傾向を見出すことができます。2023年度の国内事業の売上高は、2019年度の水準を上回りました。
イオンファンタジーは専門店の「PRIZE SPOT PALO」の出店を強化するなど、両社ともにプライズ専門店に力を入れています。
そして、GENDAはイオンファンタジーの一歩先を行っているといえます。IPファンの推し活を充実させるだけでなく、フードやドリンクなどの多様な媒体の選択肢を提供しようとしており、M&Aを積極的に行う理由の一つです。
ギャガの子会社化が良質なコラボ企画を生み出す?
GENDAは9月にレモネード専門店を運営するレモネード・レモニカを買収。11月には日本ポップコーンも傘下に収めました。
レモネード・レモニカはGiGOの営業力を活用して出店を強化し、アニメやその他のIPと積極的なコラボレーション企画を行うとしています。日本ポップコーンは、YouTubeでゲーム実況などを行うドズル社のオリジナルポップコーンを販売。「GiGO総本店」のオープンに並んでいた5人に1人が購入するなどの実績を残しました。
GENDAはゲームセンター運営会社という枠組みを超え、アニメなどのIPコンテンツとファンを繋ぐプラットフォームに進化しようとしているのです。その枠組みで捉えると、飲食事業を行う会社の買収もシナジー効果を生みそうに見えてきます。
映画配給会社であるギャガの買収も同じ狙いとして理解ができます。GENDAがエンタメの上流に食い込むことにより、人気IPをどのタイミングで展開するかなどの情報を素早くつかむことができるのです。映画と連動してクレーンゲームや飲食とのコラボがスムーズに進むようになれば、相乗効果を生むことができるでしょう。
ポイントは、この事業展開が絵に描いた餅にならないかということ。