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ゴジラ生誕70周年作品として制作され、戦後直後の東京を舞台にさらなる厄災“ゴジラ”が現れる物語を描いた『ゴジラ -1.0』。
日本では3週連続の首位を獲得するなど、王者の威厳を見せつけている本作だが、12月1日より北米での公開がスタートする。
一足早く先行上映を見たファンからは「史上最高のゴジラ映画」「ゴジラファンは絶対に見るべき傑作」と次々と絶賛の声が届き、ハリウッド版「ゴジラ」で監督を務めたギャレス・エドワーズやマイケル・ドハティからも大きなラブコールを受けた。特筆すべきは米批評サイトRotten Tomatoesの批評家支持率で、なんと本稿執筆時点(11月30日)での数字は驚異の100%。数多くのハリウッド作品と比べても類を見ないものとなっている。
近年の日本映画としては超大規模の北米2,000館以上で上映が行われると予測されている本作だが、果たしてどこまでのポテンシャルを発揮できるだろうか。日本における興行成績の現状
まず、日本での成績はどうなっているかというと、11月3日の公開から24日間で興収は34億5,689万円。『ミステリと言う勿れ(現在46.8億円)』とほぼ同じ水準のペースで、邦画実写としては十分優秀な成績と言えるだろう。ただし、どうしても本作の引き合いに出されてしまうのが2016年に公開された『シン・ゴジラ』の成績。
『シン・ゴジラ』は公開がお盆シーズンに被ったことや口コミの広がりが相乗効果となり、興収は尻上がりに伸び、最終的に82.5億円を記録した。配給の東宝としても初日の成績発表で『シン・ゴジラ』超えを大きくアピールしていたことから、このムーブメントを再び起こしたいという想いがあったと推察できる。
しかし、現実的な目で見ると特典などの大きな施策がない場合、年末の盛り上がりを考慮しても最終興収は50億円あたりでストップしてしまうという見方が大きいだろう。特に今年は人気アニメ大作『SPY×FAMILY Code:White』が12月後半に控えているため、そこで大きく上映規模が縮小されると見られる。
東宝は「ゴジラ」で海外に本作進出へ
おそらく東宝としても国内で『シン・ゴジラ』超えの社会現象を起こすことが困難であることは想定内であろう。というのも、庵野秀明監督主導による『シン・ゴジラ』以降の特撮作品は『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』とシリーズを追うごとに興収が半減しており、ハリウッド版モンスターバースの『ゴジラ』もシリーズを追うごとに興収は減少傾向にあるからだ。
そこで目を向けたのが、近年日本からはアニメ映画が強い広がりを見せている海外での展開。作品内ではレーティングを意識していると噂されるほど、流血シーンが抑えられているのも印象的で、青い熱線もハリウッド版「ゴジラ」を彷彿とさせるものになっている。
公開環境の面も抜かりなく、上映館数は『シン・ゴジラ』の4倍以上となる2,000館規模を抑え、公開時期の差も日本と1ヶ月以内のラグに収めた。そして、配給は『シン・ゴジラ』がFunimation Filmsだったのに対し、本作はToho Internationalが担当している。Toho Internationalは東宝が北米に持つ海外支部で、生誕は「ゴジラ」と同じ1953年ではあるが、2019年より映画事業にも本格参入。ハリウッド版「ゴジラ」や『名探偵ピカチュウ』の共同出資にも参加した。さらに、今年東宝は新たに自社の国際部事業を分割する形でTOHO Globalという新会社を設立したばかり。現在Toho Internationalは子会社としてその傘下に入っている。そして、本作『ゴジラ -1.0』がそのToho Internationalによる初の配給作品。自社IPのさらなる価値飛躍に向けた大勝負だけに、気合も大きく入っているに違いない。
専門家からはヒットの予測も
実は、23年前に一度トライスター・ピクチャーズ(コロンビアピクチャーズの子会社で現在はソニー・ピクチャーズの傘下)配給で『ゴジラ2000 ミレニアム』を全米2,000館規模の公開に踏み切った東宝。しかし、結果としては週末ランキング11位の圏外スタートを喫し、厳しい結果に終わった。しかし、本作のヒットは一味違うものになりそうだ。それを物語るのが予告編の再生回数で、2日で280万再生を記録する熱狂ぶり。さらに2014年以降の『GODZILLA ゴジラ』以降のユニバース展開でハリウッドでの存在感も増し、現在はスピンオフドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』が配信中で、4月には新作『ゴジラxコング:ザ・ニュー・エンパイア(原題)』も北米公開が予定されている。
邦画実写作品の新たなステップへ
『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』が海外で大ヒットしたことも記憶に新しいように、日本以外での売り上げも重要視されるようになってきた近年の映画業界。今まではアニメ映画に限られた話ではあったが、本作が大ヒットとなれば実写映画の常識も大きく変わるだろう。
そして、新たに世界へとチャレンジする動きは本作にとどまらない。『聖闘士星矢 The Beginning』でハリウッドに挑戦した東映や、実写版『ゼルダの伝説』に出資する任天堂など、各社果敢な挑戦が続いている。
国内興収だけでは『シン・ゴジラ』に及ばないかもしれないが、全世界興収ではそれに勝る成績を記録するかもしれない『ゴジラ -1.0』。
まずは、今週末の北米ボックスオフィスに注目だ。