アニメーションやゲームに関連する事業を展開するマーベラスの業績が上向いている。
2024年3月期第1四半期の売上高は、前年同期間比29.4%増の68億8,300万円だった。2024年3月期通期の売上高を前期比6.5%増の270億円と予想しており、第1四半期の進捗率は25%を超えた。売上高が予想通りに着地をすると、コロナ禍を迎える前の2019年3月期の水準を上回ることになる。
マーベラスの好業績に一役買っているのが音楽映像事業。特に2.5次元と呼ばれる舞台作品が好調だ。
音楽映像事業の売上高は2倍に伸長
マーベラスはゲームソフトやオンラインゲームの開発、ゲームセンター向けの筐体(きょうたい)の開発、アニメーションや音楽作品の制作などを行っている。セガのキャラクター部門で『サクラ大戦』などの商品化企画の営業をしていた中山晴喜氏が創業した。
ゲーム事業は『牧場物語』、『剣と魔法のログレス』などの人気タイトルがある。音楽映像事業では「プリキュア」が主力シリーズ。2000年からはアニメやコミックなどの世界を舞台で表現する2.5次元ミュージカルに本格的に取り組むようになった。
舞台作品においては、『弱虫ペダル』、『刀剣乱舞』、『テニスの王子様』などの人気作がある。音楽映像事業の売上構成比率(2024年3月期第1四半期)は15.6%だ。
業績面においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、映画や舞台作品が影響を受けた。売上高はしばらく250億円台で横這いが続いていた。

※決算短信より
2024年3月期は停滞感を払拭する予想を立てている。
2024年3月期第1四半期の音楽映像事業の売上高は10億7,600万円。前年同期間のおよそ2倍に伸びている。この数字はコロナの影響を全く受けなかった2020年3月期第1四半期とほぼ同水準のもの。マーベラスの音楽映像事業は完全に回復したと見ることができる。

※決算説明資料より
大人向けのプリキュアは成功するか?
マーベラスはプリキュアシリーズの当初より、映像パッケージソフトの制作、音楽制作、CDの販売、ライブ公演のイベント企画などに携わってきた。スクリーンデビュー作となった『映画 ふたりはプリキュア Max Heart』から制作に参加している。
映像における収益は、DVDなどのパッケージ作品の販売に支えられている。
プリキュアシリーズのIPは強力で、バンダイナムコのIP別トイホビーにおいて、プリキュアの2023年3月期の売上高は56億円にも上っている。マーベラスはIP別の収益を公開していないが、業績を下支えするIPとなっていることは間違いない。
興味深いのはこのシリーズが既存の枠組みに囚われない展開をしていることだ。10月から大人向けのTVアニメ「キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~」の放送開始した。2007年2月に放映を開始したシリーズの主人公が大人になったという設定で、ちょうどその頃に子ども時代を過ごした視聴者の年齢に重なるよう企画されている。
近年は「SLAM DUNK」や「美少女戦士セーラームーン」など、かつて子ども時代を過ごした人々をターゲットとしたアニメーション映画が多い。大人向けのプリキュアは、主人公を視聴者に合わせて一緒に成長させ、同じ悩みを共有するという興味深い試みを行っている。ここで成功パターンを作れるかどうかは、IPの活用という視点における試金石となるだろう。
マーベラスはプリキュアの他に「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」という人気作を持っていたが、このシリーズは完結を迎えた。映像においては新たなIPを獲得、または創出しなければならない。
200億円市場となった2.5次元ミュージカル
2024年3月期第1四半期のマーベラスの音楽映像事業の売上高が伸びたのは、2.5次元ミュージカルの貢献が大きい。2.5次元はマーベラスを語る上で外せない要素となった。