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過酷な労働環境下で業務を強いられている、マーベル・スタジオの視覚効果(VFX)アーティストが労働組合結成について投票し、国際舞台従業員同盟(IATSE)への参加を決議することが明らかとなった。
Indie Wireによると、VFXアーティストには何十年にもわたって労働組合が存在しておらず、現在進行中の全米脚本家組合(WGA)と映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)によるストライキの影響を受け、ここ数ヶ月でVFX従業員の間で労働組合結成の声が高まっていたという。米現地時間8月7日(月)に発表されたプレスリリースには、「50人以上のマーベル従業員の圧倒的多数が、IATSEへの参加を希望する認証カードに署名した」と記されている。
IATSEは、映画やテレビ業界で働くプロダクション・デザイナーやアート・ディレクター、カメラ・オペレーター、音響、編集者、ヘアメイクアーティスト、衣装・ワードローブ、脚本監修者、照明、小道具、塗装の関係者など、これまでに16万8,000人以上の技術者や職人を代表してきた。
今年3月にIATSEは、マーベルだけでなく、業界全体にわたるVFX労働者を対象とした調査結果を発表。10人中9人のVFX労働者が、燃え尽き症候群や給与に見合わない仕事量、危険な労働条件の解決策や、自分たちの権利について交渉する手段がないと感じていたとの結果が出ている。マーベルのような会社に直接雇用され、スタジオの監修下で勤務しているVFXアーティストはわずか12%で、プロジェクト間で引き継がれるポータブル・ヘルスケアに加入し、そのうち15%しか退職金を受け取っていないと回答している。
ここ近年、MARVEL映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』や『ソー:ラブ&サンダー』、ドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」などで働いたVFXアーティストから、劣悪な労働環境・条件について不満が続出。その告発は、スタジオから押し付けられた厳しいポストプロダクション・スケジュールや絶え間ない残業、慢性的な人員不足、常に変更される締め切りによって、標準以下のクオリティで作品を納品せざるを得ない状況など多岐にわたる。
Varietyによると、VFX労働者のIATSE加入をオーガナイズするマーク・パッチ氏は声明にて、「ほぼ半世紀にわたり、VFX業界の労働者はハリウッドの映画産業が始まって以来、彼らの同僚やスタッフが頼りにしてきた同様の保護や福利厚生を拒否されてきました。これは、VFX労働者が自分たちの仕事に対する敬意を求める声を結集し、団結する歴史的な第一歩となります」と発言。また、VFXコーディネーターのベラ・ハフマン氏も、「我々には、ターンアラウンドタイム(仕事の発注から終了までの時間)や勤務時間の上限、賃金の平等も適用されません。視覚効果部門は、あまりにも長い間苦しんできた全ての人、また全ての新人のためにも搾取を心配する必要のない、持続可能で安全な部門にならなければなりません」と訴えた。
マーベルのVFXアーティストがIATSEへの参加を検討する動きに対して、マーベル・スタジオがどのような反応を示すかが注目されている。