世界最大級のオーディオブックおよび音声コンテンツ制作・配信サービスであるAmazonオーディブル(以下、Audible)。
Audibleはマーベル・エンターテインメント(以下、マーベル)とコラボし、Audibleオリジナルポッドキャストシリーズ『Marvel’s・ウェイストランダーズ』を制作、6月28日(水)にシーズン1の第1話「Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード」(日本語版)を独占公開する。このシリーズは全6シーズンで構成されており、2023年から2024年にかけて順次公開される予定だ。
今回、Audibleは「MARVELファンにもAudibleの魅力を届けたい」という思いで、ゴールデンウィークに開催された大阪コミコン2023に初出展。現地で『Marvel’s・ウェイストランダーズ』の制作秘話や音声コンテンツのこれからについて、オーディブルカントリーマネージャーの逢阪志麻氏、オーディブル事業部シニアコンテンツディレクターのキーリング宮川もとみ氏、本作の監督を務める小野ショーン氏の3名に話を伺った。
作品のローカライズ、MARVELのこだわり
──まずは、『Marvel’s・ウェイストランダーズ』についてどんな作品か教えてください。
小野我々が知っている(MCUの)マーベルの世界とはまた別の世界で、スーパー・ヴィランたちが世界を掌握してから30年後が舞台の作品です。MARVEL作品に馴染みがあるファンでも、新規のファンでも楽しめることが今回の作品のポイントなのかなと思います。
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』は全6シーズンで、毎シーズン異なる主人公でそれぞれの物語が繰り広げられ、シーズン6にこれまでフューチャーされたキャラクターたちがアッセンブルして最後の悪と戦っていきます。
──今回、マーベルとコラボし、オリジナルの国内コンテンツを作ることになった背景を教えてください。
宮川Audibleは「Power Of Voice」を会社の理念にしており、声でできるエンターテインメントをどんどん広げていくということをずっとやってきました。マーベルは世界的にも素晴らしいストーリーテラーなので、Audibleとマーベルがコラボしたらどんな世界観が作れるだろう?ということでこの企画を実施することになりました。今回は5か国語(ヒンディー語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・日本語)で同時配信をする形で動いています。
逢阪 マーベルではすでに英語の音声コンテンツはやられているんですが、色々な言語で同時配信というのは初めてで、彼らとしてもインターナショナルなオーディエンスにリーチしたいというのがあったのだと思います。一方で我々としてもオーディオ体験の真髄を追求する会社として、マーベルと一緒にやりたいという想いがあり、今回日本語でもぜひ、という形で実現しました。
──本作は、すでに配信されている英語版を多言語で国際展開した形になるかと思いますが、制作は各国で共通認識をもって進行していくものなのでしょうか。
宮川翻訳するときや作る上でのガイドラインはありますし、メインキャストをだれにするかは、各国で話をして決めています。私たちは音のプロであって、それぞれが自国の顧客のことをよく理解しているという点では、全部が全部一緒ではなく、日本のお客様に楽しんでいただけるように音の表現性は各国の独自性をリスペクトし合って作りました。
──キャスティングで重視されていた点はありますか。
宮川キャスティングはどの作品においても細心の注意を払っていますが、Audibleのキャスティングではキャラクターの特徴を捉えつつ、俳優さんと声優さんをミックスする場合が多いです。両者それぞれ違った声のアプローチがあるので、その違いが融合することで音の世界観に幅が出てリッチで新しい体験になると思っています。
──最初のシーズンは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでおなじみのスターロードが主人公ですね。
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宮川今回、スターロード役を古田新太さんが演じてくださっているんですけど、彼自身が大のアメコミファンということもあって、キャラクターに対する愛情も溢れんばかりでした。他のキャストもその熱量に乗って、すごくエナジェティックな作品になったと思っています。こういったマルチキャストの作品は色々なキャラクターのハーモニーで出来上がるものなので、そこで古田さんが熱をもって演じてくれたことが、作品全体をすごく良いものにしてくれたと思います。
──制作で苦労したことはありましたか。
宮川マーベルの世界観を壊さずに翻訳をして、ちゃんと尺の中にいれていく、という部分がローカライズで苦労する部分ですが、今回監督がバイリンガルということもあり、その辺りは監督が細心の注意を払って制作にあたってくれました。
小野今回Audibleということで特殊だったことは「絵がない」ことですね。そもそも、キャラ絵がない場合もありましたし、風景なども分からないので、音からくる情報だけで撮ることが一番のチャレンジでした。そこで、先ほどおっしゃってくださったように、(自身が)バイリンガルなので、英語のニュアンスの調整や、日本人だとスルーしてしまうようなところは情報として拾いつつ、より良い形に仕上げられたと思っています。
異業種クリエイターのチャレンジの場に
──Audibleのオリジナル作品には、多様なクリエイターがチャレンジされている印象があります。
宮川小野監督もそうなんですが、オーディオ関係の監督だけではなく、映画監督だと西川美和さんや岩井俊二さん、またゲーム業界出身の方にも、音声監督をしていただいています。日本ではこれまでオーディオエンターテインメントに馴染みが薄い部分もありましたが、広がり・可能性を信じてくださって参画してくださる方も多くいらっしゃいます。
俳優さんがオーディオをやるのもそうなんですが、別業界の経験が入ることで、作り方にも広がりが出てきて、新しいオーディオ体験というものがどんどん生まれてきていて面白いと思います。我々も色々なクリエイターが参画できるメディアでありたいという思いもあります。
逢阪映像がない分、チャレンジでもあると思うんですよね。「ストーリーを声だけでどのように語って伝えるか」という点では、クリエイターの皆さんには創造力を豊かに演じていただいていて、そこは映像とはまた違った形として出てくるんだと思います。
宮川映画監督さんの中には(ロケ撮影と異なり)天候に左右されないからとても自由に作りたいものが作れた、ということをおっしゃっていた人もいました。ぜひ映像業界の人たちにもチャレンジしてみてほしいです。
「挑戦し続けたい」Audibleのこれから
──最後に、6月に配信される『Marvel’s・ウェイストランダーズ』はどんな人に楽しんでいただきたいですか。
逢阪これまでAudibleのユーザー層は30~40代の社会人がメインで、それこそ、ビジネス書や自己啓発本のオーディオブックが人気コンテンツでした。
2022年に定額聴き放題制に移行して以来、コンテンツの幅が広がったことはもちろん、ユーザーに気軽に色々なジャンルを手に取って聴いていただけるようになりました。実は、聴き放題制にしてから聴衆時間が300%も増加していて、これまで以上にコンテンツを聴いていただけています。そういった中でユーザーの期待を裏切らないために、新たなオーディオ体験の拡張に挑戦していく姿勢が大事だと思っています。
今回の作品もひとつの挑戦なので、MARVELファンの皆さんにも「作品を聴いて楽しむ」ことも選択肢のひとつにあることを知っていただけるといいなと思っています。
「Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード」は、6月28日(水)からAudibleで聴き放題配信開始。Audible会員プランは月額1,500円で、12万以上の対象作品を聴き放題で楽しむことができる。