各地で満席続出!今年のGWが過去最高の異常成績を記録したワケとは?

2023年のゴールデンウィーク成績は2000年以降最高だった2019年に比べ、観客動員112.6%、興収119.1%となる過去最高の数字を記録。なぜ、ここまでの大盛況となったのだろうか?

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各地で満席続出!今年のGWが過去最高の異常成績を記録したワケとは?
各地で満席続出!今年のGWが過去最高の異常成績を記録したワケとは?

2023年のゴールデンウィーク成績は2000年以降最高だった2019年に比べ、観客動員112.6%、興収119.1%となる過去最高の数字を記録

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『名探偵コナン 黒鉄の魚影』など多くの作品がヒットし、各地で満席の回も続出した。コロナ禍以降の低調ペースから一転、なぜここまでの大盛況となったのだろうか。

マスク解禁や新型コロナウイルスの第5類移行など、2023年に入りコロナ禍から本格的に脱する流れが来る中、初めての大型連休となったゴールデンウィーク。東海道新幹線はコロナ禍前を上回る利用者数を記録し、厳しい状況の続いていた航空業界もコロナ禍前と同水準まで回復。各地のレジャー施設も多くの来場客を迎え大盛況となっているが、映画業界もその例外ではない

過去23年で最高の売上に

多くの業界がコロナ禍前の水準まで回復したと喜びの声をあげる中、映画業界はその上を行く新たなフェーズに突入した。興行通信社によると2023年のゴールデンウィーク成績は2000年以降最高だった2019年に比べ、観客動員112.6%、興収119.1%となる歴代最高の売上となった。

大手シネコンであるTOHOシネマズも過去最高の売上を記録したとのことで、イオンシネマやシネマサンシャインなど各地の他大手シネコンからも嬉しい悲鳴があがっている。


筆者もゴールデンウィークに映画館に訪れる機会があったのだが、上映スケジュールに載っているほとんどの作品は満席または残席わずかの表示が。映画を観るには前日までの予約がほぼ必須という状況だった。入場特典配布や口コミの劇的な広がりにより局所的に満席が続出するというケースは都会でこそあまり珍しくはないが、満遍なく多くの作品が座席不足になるという光景は中々目にできるものではない。しかし、なぜ今年のゴールデンウィークはここまで盛り上がったのだろうか。

「マリオ」「コナン」を筆頭に強力なラインナップ

何と言っても作品ラインナップが非常に強力だったことはまず1番の理由として挙げられるだろう。世界的に大ヒットを記録し大きく話題となった『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と先日100億円を突破した『名探偵コナン 黒鉄の魚影』を筆頭に、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』など強力なラインナップが目白押しとなっていた。

特に『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は各地で満席が続出。祝日の水曜日から日曜日までそのペースは崩れることなく、累計興収は65億円を突破した。これは洋画作品として前例にないスーパーヒットとなっている。また、2週目の成績が公開初週を上回るペースであったことからも、おそらく公開直後に見るファン層以外からの広い層の集客に成功したことが伺える。

また、今作は多くの劇場で吹替版が強くプッシュされていたことも機会損失を最大限抑える上でかなり効果的に働いていた。やはり「ミニオン」シリーズなどを手がけるイルミネーション・スタジオの作品はファミリー層の観客が多いため、あまり字幕版は好まれない傾向にあるからだ。さらに、吹替版の脚本が元から用意されていたことからクオリティも字幕版と遜色がなく、作品の没入感をさらに高めるものとなっていた。


全世界の累計興収が1,500億円を記録し、任天堂も「予想外」と語るこの大ヒットは日本の市場でも海外の市場と同様、周りの予想を良い意味で裏切る結果となった。

週末ランキングでは2番手となった『名探偵コナン 黒鉄の魚影』も負けてはいない。というのも、今作は例年のシリーズ作品と比べ勢いが段違いだからだ。日本歴代2位のオープニング成績を記録した後も、公開から1ヶ月足らずであっさりと100億円を突破してみせた。

2018年の22作目『ゼロの執行人』で91.8億円の大ヒットを記録し、この年に最高記録を20億円以上更新。それ以降次作は100億円を超えると言われ続けたものの、23作目『紺青の拳』は92.1億円、24作目『緋色の弾丸』はシリーズ最高の出足も緊急事態宣言に阻まれ76.5億円、25作目『ハロウィンの花嫁』も復活上映含め97.8億円と惜しくも届かなかった。そのため今作の100億円超えヒットに関して業界人はもちろん、ファンとしても念願のものとなっている。

今作『黒鉄の魚影』は前作『ハロウィンの花嫁』興収比約150%のペースとなっているが、昨年はその前作がゴールデンウィーク興行の先頭を走っていた。それを踏まえれば、今年はシリーズ最高水準の『黒鉄の魚影』ですら2番手になっているという時点で、かなり異常な年であることが分かるだろう。

なぜここまでの規模で集客を記録することができたのかということだが、その理由としてはコロナ禍以降劇場鑑賞を控えていた多くのファミリー層が劇場へ戻ってきたことが挙げられる。春興行のまとめ記事でも触れたが、これは『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』が不調ペースから脱却し大ヒットを記録したことからも読み取ることができる。


そういった面では、主に海外アニメーション作品は「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」との競合を避けてゴールデンウィークに公開されるパターンが少ない傾向(大型海外アニメーション作品がゴールデンウィークシーズンに公開されるのは『ズートピア』以来7年ぶり)にあるが、今年は今回の「マリオ」「コナン」の同時ヒットによって、ファミリー層の潜在的なポテンシャルを探る上でとても意義のある年になったと言えるだろう。

「TOKYO MER」や既存作品も快調ヒット

「マリオ」や「コナン」のヒットに目が行きがちだが、その他の作品も強力だ。週末ランキング3位となった劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』はその中でもヒットが顕著になっており、公開2週目時点での累計興収は24億円を突破。なんとこれはコロナ禍以降の実写邦画作品として歴代トップの成績となっている。順位としては3位だが、時期が違えば2週、3週連続の首位を記録してもおかしくない大ヒットと言える。


《タロイモ》

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中学生時代『スター・ウォーズ』に惹かれ、映画ファンに。Twitterでは興行収入に関するツイートを毎日更新中。