邦画アニメも最高品質で!アニメーション制作におけるドルビー技術の活用に迫る

3月10日(金)から3月13日(月)の4日間、池袋で「東京アニメアワードフェスティバル2023」が開催された。TAAF2023に出展していたDolby Japanのシンポジウムと体験ブースの様子をレポート。

映像コンテンツ 制作
邦画アニメも最高品質で!アニメーション制作におけるドルビー技術の活用に迫る
邦画アニメも最高品質で!アニメーション制作におけるドルビー技術の活用に迫る
  • 邦画アニメも最高品質で!アニメーション制作におけるドルビー技術の活用に迫る
  • アニメーション制作とドルビー技術 (Dolby Vision/Dolby Atmos)
  • アニメーション制作とドルビー技術 (Dolby Vision/Dolby Atmos)
  • アニメーション制作とドルビー技術 (Dolby Vision/Dolby Atmos)
  • アニメーション制作とドルビー技術 (Dolby Vision/Dolby Atmos)
  • アニメーション制作とドルビー技術 (Dolby Vision/Dolby Atmos)

3月10日(金)から3月13日(月)の4日間、池袋で「東京アニメアワードフェスティバル2023(以下、TAAF2023)」が開催された。

TAAF2023内で、音響技術や映像技術の開発および販売を行うDolby Japanが、「アニメーション制作とドルビー技術」をテーマとしたシンポジウムとデモ体験ブースを実施した。映像作品の中でも特に国内アニメーション作品におけるドルビー技術の活用に注目し、これらのイベントの様子をレポートする。

デモ体験:「アニメ×ドルビー」 最新技術を使ったテレビとオーディオ機器でアニメを体験!の様子

WACCA池袋で3月10日(金)~3月13日(月)の4日間開催されていたデモ体験ブースでは、Disney+で配信中の作品やNetflixオリジナルアニメの「ソル・レヴァンテ」ほか、配信中のアニメーション作品を中心に、家庭でも楽しめるドルビー技術を実際に体験することができた。

担当者によると、実際にドルビー技術に対応した国内外の動画配信プラットフォーム、および家庭用オーディオ・映像機器は増えてきており、自宅やスマートフォンでの映像視聴においてもドルビーの提供する技術を気軽に楽しめる機会が増えているそうだ。今回のブースでは最新のテレビとオーディオ機器でその技術を提供しており、Disney+の『私ときどきレッサーパンダ』ではレッサーパンダのふさふさとした毛並みや、登場人物たちが街中を歩く音など、細かい表現が立体的に伝わってくる体感があった。

また、3月11日(土)に開催されたシンポジウム「アニメーション制作とドルビー技術」では、制作者に向けてドルビー技術の基礎知識からアニメーションの制作ワークフローが分かりやすく解説された。

立体音響技術「ドルビーアトモス」と制作フローでの活用法

ドルビーの持つ技術は、大きく立体音響とHDRの二つに分けられる。

音に特化した「ドルビーアトモス」は平面的な音を提供していた到来のステレオサラウンドの技術と異なり、上方向にも音を出せるスピーカー配置や音作りによって、より臨場感のある音が提供できる立体音響技術だ。映像の空気感の再現や、細かい音の組み合わせからその場にいるような気分を味わうことができるのが特長。BGMや効果音だけでなく、人物・キャラクターのセリフの声量や聞こえ方も立体的に楽しめるようになっている。

「ドルビーアトモス」の制作フロー

ドルビーアトモスの制作で肝となる工程は「ミックス」と呼ばれる作業だという。もちろん最初の録音も大切な工程となるが、録音された音をどのように配置していくかがより重要になっていくとのこと。従来のステレオであれば1次元的に音を配置するのみであったが、アトモスの場合は3次元的に音を配置していくことになる。そのため、空間の中で自由に立体的な音の配置ができるそうだ。また、ドルビーアトモスはひとつのファイルの作成で、それぞれの再生端末に最適化された配信をすることができるため、各デバイスに合わせて複数ファイルを作成する必要はないとのことだ。

HDR技術「ドルビービジョン」と制作フローでの活用法

そして、HDR技術である「ドルビービジョン」は解像度・フレームレート数の向上に加えて、画素そのものを向上させることで、映像のコントラスト、色域の幅を広く表現できる技術となっている。従来に比べて、より色彩が豊かになり、明るさと暗さをはっきり表現できる技術だ。

「ドルビービジョン」の制作フロー

ドルビービジョンの制作過程で最も肝となるのは、「ポストプロダクション」の部分だ。撮影・作画・CG等、映像制作の過程でHDRを活かした絵づくりをしていくことも大切だが、作られた絵・撮られた絵の明るさと暗さの調整を行うカラーグレーディングがより重要な工程になるという。ドルビービジョンに対応するには、特別な制作モニターを使用し、これらの工程をこなしていく必要があるとのことだ。

映画館の上映システムでいうと、す音にこだわったアトモス対応のスクリーンはすでに広く知られているが、それにドルビービジョンの映像技術を加え、シアターデザインまで一貫してドルビーが手がける「ドルビーシネマ」が増えてきている。現在は、4月17日(月)オープン予定でTOHO初の導入劇場であるTOHOシネマズららぽーと門真を含む、9スクリーンが日本国内で導入されている。

「ドルビーシネマ」で劇場作品を楽しむためには、作品そのものがドルビーアトモスとビジョンに対応している必要がある。ハリウッド作品が先行してドルビーシネマの対応が進む中、国内アニメーション作品に焦点を当てると、対応作品数がまだ少なく、やや出遅れているとのことだ。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がはじめて一からドルビーシネマ対応で作られた国内アニメーション作品として2020年に公開された。その他で同年に公開された作品は、機動戦士ガンダム劇場版三部作のリバイバル上映を合わせた4作品のみだった。

2021年になると、大作での対応が増えてきた。細田守監督作品で初の対応作品となった『竜とそばかすの姫』や、歴代国内興行収入1位を記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』まで、計7つの作品で対応された。

2022年になると作品数が12作品まで増加。ロングランヒット中の『THE FIRST SLAM DUNK』は映像の美しさに加え、コートで繰り広げられる試合の細かい音までこだわった音作りがされている。また作品としては意外かもしれないが、映画 『ゆるキャン△』では焚火の音や夜の野外の暗さなどが細かく再現されているとのことだ。その他、過去作品のリマスターも含め、年々ドルビーシネマ対応の国内アニメーション作品は増えてきている状況だ

初回を通常上映で鑑賞し、2回目にドルビーシネマやドルビーアトモスで観るといった、リピート視聴でドルビー対応のスクリーンを選ぶ人も多くみられるようだ。コロナ禍を経て映画館の客足が戻りつつある中、作品を良質な設備・環境で観たいといった“リッチな劇場体験”を映画館での作品鑑賞に求めている人も増えてきている。今後国内興行を支えるアニメーション作品でも、ドルビー技術を導入するスクリーン・作品が増えていくことは間違いないだろう。
《marinda》

関連タグ

marinda

Branc編集長 marinda

Brancの編集長です。好きな動物はパンダです🐼

編集部おすすめの記事