「silent」脚本家の生方美久、映画『ちひろさん』の今泉力哉らを輩出する映画学校「NCW」に聞く、業界の課題と人材育成

映画業界で活躍する人材を多数輩出している映画学校「ニューシネマワークショップ」(NCW)。NCW主宰の武藤氏、代表の久保氏が「映画学校を運営する」立場から見た映画業界の課題や、これからの“映画人”に必要なこととは?

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「silent」脚本家の生方美久、映画『ちひろさん』の今泉力哉らを輩出する映画学校「NCW」に聞く、業界の課題と人材育成
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東京都早稲田にある、「ニューシネマワークショップ」(NCW)。

有村架純主演映画『ちひろさん』のNetflix配信・劇場公開を控える今泉力哉監督、『カランコエの花』で注目を集め、『少女は卒業しない』(2月23日公開)にも期待が高まる中川駿監督や、大人気ドラマ「silent」の脚本を手掛けことで脚光を浴びた生方美久氏他、映画業界で活躍する人材を多数輩出している映画学校だ。

NCWでは、映画監督を志す人に向けた[つくる]コースと、配給・宣伝を学ぶ[みせる]コースを開講しており、それぞれ基礎を学べるスタンダードと、より実践的なアドバンスが用意されている。

今回は、NCW主宰の武藤起一氏、NCWの卒業生であり現代表、フラッグの代表取締役である久保浩章氏のおふたりに、現場の声を誰よりも近くで聞いているからこそ見えてきた映画業界の課題や、これから求められる“映画人像“についてお話を伺った。

武藤起一氏(写真左)と久保浩章氏(写真右)

多種多様な人が揃うNCWだからこそ、映画づくりに必要な力を得られる

――NCWは、映画監督を目指す[つくる]コースと、配給・宣伝に特化した[みせる]コースのカリキュラムが半年ずつ用意されています。それぞれのコースには、どのような年齢層の方々が通っているのでしょうか。

武藤20代半ばが最も多く、10代後半から30代が中心だと思います。「つくる」コースの方が年齢層は幅広く、50代~60代の人もいますが、「みせる」コースは学生やいわゆる第二新卒世代が多いですね。週に1~2日のレクチャーなので 、学校に行きながら、仕事をしながら通っている方が多くいらっしゃいます。

――映画学校は他にもありますが、配給や宣伝に特化した[みせる]コースは珍しいと思います。具体的に、どのようなことを学べるのでしょうか。

武藤スタンダードで基礎知識を学んだあとのアドバンスでは、実際に公開前の映画を試写で観てそれを宣伝するための4つのアイテムを実践します。

たとえばそのうちの1つで、プレスリリース(※報道機関に向けた情報)の作成があります。冒頭のイントロダクション(解説)が特に難しくて、「イントロダクションを立派に書けたら、プロの宣伝ができる」と言われているくらいなのですが、映画をどのような言葉で売るのかを考える仕事なので、文章力や「宣伝」視点で映画を観る力がとても鍛えられると思います。

――では、[つくる]コースについて聞かせてください。[つくる]コースではどのようなことを学べるのでしょうか。

武藤[つくる]コースのベーシックでは、一人ひとりが監督として企画・脚本執筆、撮影から編集までを行います。必要な機材は全て揃えてあるので、わざわざ自分で用意する必要はありません。出演する役者については友達に頼む人もいれば、NCWが紹介できるプロやセミプロの俳優に依頼することもあります。

映画はひとりでは作れないので、年齢やバックグラウンドが違うスタッフとの関係性構築が重要となってきます。映画づくりの基盤はもちろんのこと、そういったコミュニケーションについて実践で学べるところは、幅広い年齢層の人が通うNCWならではの特徴かなと思います。

「silent」脚本家の生方美久氏によるOBレクチャーの様子

久保「監督した作品の配給で関わってくれた人が[みせる]コースの人だった」というように、卒業生同士が現場で再会した話もよく聞きます。NCWでの学びを通して自分の表現を見つけられた人たちが業界でたくさん活躍されていますし、そういった話を聞くと、スキルはもちろんのこと、未来につながるリアルな仲間との出会いを提供できているんだと嬉しくなりますね。

これからは、よりビジネス視点で映画と向き合える人が必要

――多くの人材を輩出してきたNCWだからこそのエピソードですね。これから業界で活躍していく人を育成する中で、現在の映画業界に課題として感じることがあれば教えてください。

久保やはり、働き方に関する課題はまだまだあると思います。昨年から、『映画制作適正化機構』という映画業界の過重労働やハラスメントを廃止するための業界団体が立ち上がったのですが、 現場の労働環境改善への具体的な取り組みが始まる一方で、映画ビジネスとしてはこれまで以上に難しさが増える気がしています。


《高城つかさ》

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言葉と人生 高城つかさ

1998年、神奈川県出身東京都育ち。19歳のころよりフリーランスとして活動をはじめ、エンタメやライフスタイルにまつわる記事を執筆。趣味は散歩、写真を撮ること。好きな食べ物は焼き鳥。