業績回復は道半ば、不採算事業の整理を進める東北新社【決算から映像業界を読み解く】#10

東北新社が息を吹き返しはじめた。

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業績回復は道半ば、不採算事業の整理を進める東北新社【決算から映像業界を読み解く】#10
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東北新社が息を吹き返しはじめた。

2023年3月期第2四半期の売上高は前年同期間比7.5%増の256億700万円、営業利益は66.7%増の21億1,000万円だった。営業利益率は8.2%。2019年3月期の営業利益率は2.6%。不採算事業の整理や機材費の減損損失の計上、子会社売却などのリストラ効果により、利益率は5.6ポイント改善した。

ただし、肝心の売上高の戻りは決して芳しくはない。徹底的なスリム化を進めた後は、経営資源を成長領域に集中し、売上高を再び成長軌道に乗せる必要がある。

売上成長と利益のバランスを重視する難しいかじ取りが求められる

東北新社は2023年3月期の売上高を前期比9.0%増の575億1,400万円、営業利益を1.4%減の40億7,600万円と予想している。増収に大きく貢献しているのが、2021年12月に買収したブランドコンサルティングなどを行うENJINの存在。国内の投資ファンド、エンデバー・ユナイテッドから株式を取得したものだ。

ENJINの取得価額は25億6,900万円だが、現金同等物を10億6,200万円保有していたため、差し引き15億600万円の支出だった。

■ENJIN買収の詳細

有価証券報告書より

ENJINの2020年12月期の売上高は42億7,300万円。連結子会社化したことにより、40億円前後の増収効果が働いたものと予想できる。ただし、2022年3月期に16億9,000万円ののれんを計上した。東北新社のように日本の会計基準を採用している場合、のれんを償却しなければならない。ENJINののれんは10年で均等償却するとしている。

つまり、年間およそ1億7,000万円の無形資産の償却費用が10年間発生し、営業利益を下押しする要因になる。東北新社は2023年3月期通期の営業利益率を7.1%と予想しており、前期から0.7ポイント下がる予想を出した。

中期的に営業利益率の推移を見ると、確実に上向いている。その一方で、2018年3月期から2022年3月期までは売上高が減少している。スリム化を図って利益を出しやすい体質に転換したことの表れだ。東北新社はENJIN買収前はのれんを計上していない。このタイミングでのM&Aは、成長に向けた一手を繰り出したと見ることができる。

決算短信より

東北新社は買収や吸収合併を繰り返して成長してきた会社。今後も成長するための手段としてM&Aを活用すると予想できる。しかし、無理にアクセルを踏むと償却負担が重くなって利益を圧迫することにもなりかねない。長い時間をかけてリストラを実施し、利益が出る体質に転換した。攻守のバランスが難しい局面に入ったとも見ることができる。

オムニバス・ジャパンの高い技術力を持て余したか

東北新社の売上高の半分近くを占める広告プロダクションは好調だ。新型コロナウイルス感染拡大で2021年3月期の売上高は前期比18.1%減の221億1,400万円となったが、2023年3月期はENJINの買収効果も手伝って275億8,200万円を予想している。

苦戦を強いられているのが、


《不破聡》

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