今回、訴訟を起こした「スタジオカナル」はフランスのメディア・コングロマリット「ヴィヴェンディ(Vivendi)」傘下の映画製作・配給会社であり、欧州映画界では大手と言っていい存在だ。
世界的にヒットした映画『パディントン』シリーズの製作・配給で知られるほか、『ターミネーター2』や『山猫』といった数千本に及ぶ膨大な映画ライブラリーを保有している。英国やアイルランドにおいては、長年にわたりスタジオジブリ作品のホームエンターテインメント(DVD/Blu-ray)配給権を保持してきた実績がある。
同社は今回、ワイルド・バンチ・インターナショナルが2019年にNetflixにジブリの配信権を渡したことに対して、スタジオカナルとワイルド・バンチの間のVOD権に関する契約に違反すると主張している。Netflixとの契約当時、ワイルド・バンチ・インターナショナルはワイルド・バンチの海外営業部門から独立した子会社であった。現在は別会社となっている。
2020年1月、Netflixは『となりのトトロ』を含むスタジオジブリ作品21本の全世界でのストリーミング配信権(米国、カナダ、日本を除く)を確保したと発表した。スタジオジブリはデジタルプラットフォームでの作品公開に消極的だったことを考えると、この契約は当時、画期的なことだと捉えられた。そして、Netflixはプレスリリースの中で、「配給パートナー」であるワイルド・バンチ・インターナショナルがこの取引を仲介したことを認めている。
争点は「VOD権(ビデオ・オン・デマンド権)」の解釈にあるようだ。スタジオカナル側は、同社が保持する権利には「インターネットを使わないVOD権」が含まれており、Netflixへのライセンス供与はこれに違反すると主張。これにより損害を被ったとしている。
一方、被告側であるワイルド・バンチはこれに真っ向から反論している。英国やアイルランドにおいて「インターネットを使わないストリーミングサービス」など事実上存在しないため、スタジオカナル側の主張する権利は実体のないものだと指摘。さらに、経費の回収方法をめぐってスタジオカナル側を逆に訴えるなど、法廷闘争は泥沼化の様相を呈している。
日本の映画ファンとして気になるのは、この訴訟が日本国内や今後の作品展開に影響するかどうかだが、結論から言えば、日本への直接的な影響は極めて限定的と見られる。
今回の問題はあくまで「英国・アイルランド市場」を中心とした欧州企業同士の利益配分の争いであり、スタジオジブリ本体やNetflixは訴訟の当事者ではない。また、日本ではそもそもNetflixによるジブリ作品の配信自体が行われていない(日本国内の配信権や興行権は、本訴訟とは全く別の契約下にある)。
したがって、この裁判によって日本国内での作品公開が止まったり、グッズ販売に支障が出たりする可能性は低いだろう。

