ハリウッド委員会、エンタメ業界従業者向けオンライン・ハラスメント報告ツール「MyConnext」を開設

「MyConnext」は、調査をもとに被害者が安全に告発しやすいツールを実装している。

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ハリウッド委員会、エンタメ業界従業者向けオンライン・ハラスメント報告ツール「MyConnext」を開設
Photo by Spencer Platt/Getty Images ハリウッド委員会、エンタメ業界従業者向けオンライン・ハラスメント報告ツール「MyConnext」を開設

2017年にハリウッドで「#MeToo」運動が勢いを増して以来、エンターテイメント業界で働く人々は、職場でのハラスメントや虐待を安全に報告できる方法が必要だと感じてきた。そんな中、自身がセクシャル・ハラスメントの被害者であるアニタ・ヒル氏率いるハリウッド委員会が、同業界従業者向けオンライン報告ツール「MyConnext」を開設したことが明らかとなった。

被害者が告発の仕方を選択可能な仕様に

Varietyによると、「MyConnext」は、職場であらゆるハラスメントに直面した従業者が、リソースとオンブズパーソン(苦情について調査を行い、解決に取り組む代理人)による公平な指導を提供されることで、自身の選択肢の模索が可能になるツールだ。

「MyConnext」は、2019~20年と2022~23年にかけてハリウッド委員会が1万人以上を対象に実施した調査で、エンターテイメント業界従業者によって提起された懸念に応える形で実現した。2019~20年の調査では、95%の従業者が告発の状況を理解するためのリソースを求め、94%がヘルプラインまたはホットラインの必要性を訴え、93%がハラスメントのタイムラインを明確にする記録作成ツールの技術を要求。2022~23年の調査でも、90%がタイムライン記録作成ツールの技術を求め、92%が告発の状況を深く理解するためのリソースが役立つと回答した。

「MyConnext」では、ハラスメントの被害者が匿名で問題を報告できるほか、「Hold for Match(一致があるまで保留)」を選択して一時的に保留する方法も可能だ。例えば、1人目の告発者に続いて2人目のユーザーが同じ人物について報告するまで、その加害者はシステム内で「保留中」となる。2名以上の被害者が告発した加害者が「一致」すると、匿名だった告発内容が自動的に「MyConnext」で公開され、被害者は企業や労働組合の代表者らと匿名チャット機能を通じて連絡が可能となる。

DGAやWGAの組合員などが利用可能

IndieWireによると、5月23日(現地時間)より全米映画監督組合(DGA)と全米脚本家組合(WGA)、米国のAmazonおよびNetflixのプロダクション会社、ザ・ケネディ/マーシャル・カンパニーの従業員が「MyConnext」を利用できるようになった。国際映画劇場労働組合(IATSE)のメンバーは今年後半よりアクセス可能となり、現時点で映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)の組合員は利用できないが、協力パートナーとして「MyConnext」を通して、独自の「Safe Place」報告ツールでアクセスできるとのこと。

ヒル氏は声明で「MyConnext」の開設について、「従業者は、職場における不適切な行為について懸念を報告する際、自分の意見を聞いてもらえて安全だと確信できなければなりません。MyConnextは、彼らが求めていたオンラインツールです」と発言。

さらに、「ハラスメントや差別、いじめ、虐待を経験または目撃した従業者に必要なリソースを提供し、名乗り出ることを選択した従業者に報告の選択肢を提供することで、従業者に力を与えます。そして、真に客観的かつ事実に基づいたユーザー・エクスペリエンスに期待される尊厳と感受性をもって、全関係者の権利を維持・保護する環境で報告がなされます」と続けた。

「MyConnext」を試用したハラスメントの被害者は、「私が耐えたハラスメントは、自分の人生において最も困難な時期でした。私は権力の乱用に対してだけでなく、自分自身のために立ち上がる勇気も必要だったと感じました」と述べている。

「MyConnext」の開設により、ハリウッドのエンターテイメント業界でハラスメントや虐待が減少することを期待したい。

《Hollywood》
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ロサンゼルスに11年在住していた海外エンタメ翻訳家/ライター。海外ドラマと洋画が大好き。趣味は海外旅行と料理、読書とカメラ。

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