声優が音声の悪用でAIスタートアップを集団提訴【米国】

声優のポール・スカイ・レアマン氏とリネア・セージ氏が、自分たちの声の録音を違法に使用したとしてAIスタートアップLOVO社に対し、詐欺、虚偽広告、パブリシティ権の侵害で提訴した。

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声優が音声の悪用でAIスタートアップを集団提訴【米国】
Image by freepik 声優が音声の悪用でAIスタートアップを集団提訴【米国】

声優のポール・スカイ・レアマン氏とリネア・セージ氏が、自分たちの声の録音を違法に使用したとしてAIスタートアップLOVO社に対し、詐欺、虚偽広告、パブリシティ権の侵害で提訴した。

The Hollywood Reporterによると、被害を受けたレアマン氏は2020年、フリーランスのためのプラットフォーム“Fiverr”で、後にLOVO社の従業員だと知った身元不明のユーザーから、ナレーションをしてほしいと連絡を受けた。その際、彼の声は「学術研究目的にのみ使用される」と告げられたとされる。しかし2年後、33万6,000人以上の登録者を持つYouTubeのMilitary Newsというチャンネルで、ロシアの兵器についての動画で自分の声を認識。そして2023年6月13日頃、レアマン氏は「自分の声が『Deadline Strike Talk』というポッドキャストで使用されているのを聞いた」としており、使用に対する報酬は支払われていなかったとのことだ。ナレーション/アーティストとして10年以上の経験を持つレアマン氏は、昨年から仕事がおよそ50%減少。彼は、仕事の機会が減ったことだけが問題なのではなく「自分の評判が落ちた」ことが問題だと強調した。

また、セージ氏は、2020年にLOVO社が投資家たちに音声技術を披露しているビデオで、セージ氏の実際の声とAIが再現した声を比較するコーナーがあったが、彼女ではない女性の写真が使われていたのを偶然見つけたとのことだ。

SAG-AFTRAのジェフリー・ベネット法律顧問は「人々が声の中に権利が存在することを理解できていないため、今後このようなことが増えるだろう」と述べている。同組合は、同意なしに会員の肖像でAIシステムを訓練することは、会員の権利の侵害であると主張している。現在、AIによる声真似をカバーする連邦法は存在しないため、各州の肖像権法がその穴を埋めているが、そのような法律が制定されていない州ではほとんど手段がない。

ニューヨークタイムズ紙によると、LOVO社の代理人であるケース弁護士は、同社はOpenslr.orgと呼ばれる自由に使用できる英語の録音データベースの音声を使ってAIシステムを訓練したと述べたが、レアマン氏とセージ氏の音声が技術の訓練に使われたのかという質問には答えなかったという。
《伊藤万弥乃》
伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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