2023年は国内外の映画やテレビ、動画配信サービスにおいて様々な動きがあった。特にインパクトの大きかった5つのトピックスを振り返りたい。
3本の映画が興行収入100億円超え
日本テレビがスタジオジブリを子会社化
広告プランを導入したNetflixが業績好調
ウォルト・ディズニーがHuluを完全子会社化
アニメ「推しの子」のヒット
『THE FIRST SLAM DUNK』が『すずめの戸締まり』を超える
2023年に興行収入100億円を超えた映画は、『THE FIRST SLAM DUNK』(157.3億円)、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(140.1億円)、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(138.3億円)の3作品だった。
2022年は『ONE PIECE FILM RED』(203.3億円)、『すずめの戸締まり』(149.4億円)、『劇場版 呪術廻戦 0』(138億円)、『トップガン マーヴェリック』(137.4億円)の4本だった。
2022年に引き続いて2023年も豊作だ。100億円には届かなかったものの、『君たちはどう生きるか』(86.4億円)も健闘している。
■2021年~2023年興行収入上位作品
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※興行通信社「歴代ランキング」をもとに筆者作成(2023年12月23日現在)
驚きが大きかったのが、『THE FIRST SLAM DUNK』の想定外の大ヒットである。東映は2023年2月14日に発表した決算において、2023年3月期通期の売上高を1,570億円と予想していた。しかし、着地は予想よりも1割も高い1,743億円だった。
さらに、本作は海外でもヒットした。2023年4月20日には中国で公開され、興行収入は130億円を突破。韓国でも30億円に達している。アニメ版の『SLAM DUNK』はテレビ放映されており、日本同様の人気を獲得していた。
東映は2024年3月期の売上高を前期比16.7%減の1,452億円と予想している。大幅な減収だ。しかし、『THE FIRST SLAM DUNK』の海外版権収入が大きく、2023年4-9月の売上高は、前年同期間比1.4%増の866億円で折り返している。
■東宝・東映・松竹 2022年・2023年上半期業績比較
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映画化の成功は脚本・監督を原作者の井上雄彦氏が務めたのが大きいだろう。映画での試合の臨場感やスピード感は、原作に慣れ親しんだ世代はかつてマンガで受けた衝撃を追体験したはずだ。『THE FIRST SLAM DUNK』は企画から10年かけて井上氏を説得し、実現したと言われている。東映アニメーションの熱意の賜物だ。
ポイントは『THE FIRST SLAM DUNK』の興行収入が2022年に公開された『すずめの戸締まり』を上回ったこと。今の若い世代は、80年代~90年代のカルチャーを古臭いと敬遠するのではなく、積極的に受け入れるようになった。当時のデザインやファッションが、現代の感覚と重なるようになったこともヒット要因の一つとなっているだろう。
2023年9月8日に公開された『劇場版シティーハンター 天使の涙』は興行収入10億円を突破した。Netflixは「幽☆遊☆白書」の実写ドラマも配信したばかり。この年代のIPは良質なものが多く、80年代~90年代のマンガの映画化や実写化は進むだろう。
後継者問題に苦心したスタジオジブリ
スタジオジブリの『君たちはどう生きるか』は興行収入86億円を突破した。宮崎駿監督作品は『千と千尋の神隠し』以降、ミニシアターで上映されるアートアニメーションのような難解なものになりつつある。今作は宣伝も一切行わなかった。それでも100億円近い興行収入を得ているのは、国民から支持されている証拠だろう。
そのスタジオジブリが今年10月、日本テレビに買収された。日本テレビ放送網が470株を取得し、42.3%の大株主となったのだ。ジブリの代表取締役社長は数々の作品をプロデュースした鈴木敏夫氏だったが、子会社後は日本テレビ放送網の取締役専務執行役員の福田博之氏が務めることになった。日本テレビホールディングスの代表取締役会長執行役員である杉山美邦氏も取締役に就任する。
鈴木敏夫氏は代表取締役議長となる。鈴木氏は共同代表となるため、会社には一定の影響力を保持し続けるはずだ。短い期間で日本テレビがジブリの経営体制を大きく変えることはないだろう。株式の取得割合が4割程度に留まっているためだ。