「アニメグッズは海外でも配信直後が一番売れる」アニメグッズ海外展開の課題を解決する「越境EC」のメリットとは

グローバルにEC事業を展開する「越境EC」の先駆者であるBEENOS。アニメ系のグッズはどのように海外展開できるのか、その現状と可能性をCEOの直井氏に聞いた。

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「アニメグッズは海外でも配信直後が一番売れる」アニメグッズ海外展開の課題を解決する「越境EC」のメリットとは
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コロナ禍の動画配信の伸長とともに、日本のアニメがグローバル市場での存在感を増している。

しかし、アニメ作品そのものと比べて、関連グッズの海外展開は追い付いていない状況にある。流通や在庫管理コストの問題、信頼できる現地企業を見つけることの困難さもあり、アニメ作品の流通とは異なる難しさに直面している。

そんな中、国内のECサイトを海外販売に対応させる「越境EC」が注目を集めている。越境EC向けのサービスを展開し、全社的にエンタメ業界のDX化をサポートしているBEENOSのCEO、直井聖太氏に越境ECのメリットについて話を聞いた。

越境ECを席巻するアニメ系グッズ

――基本的な質問で恐縮ですが、御社の事業内容について教えてください。

弊社は、日本の商品を購入したい海外の方をサポートする「Buyee」や、国内でEC事業を展開している事業者さま向けに、初期費用・月額費用無料で自社のECサイトを海外118の国とエリアへ対応させる「Buyee Connect」というサービスを提供しています。「越境EC」という分野で弊社は一番の実績を誇っています

――「Buyee Connect」は、エンタメ関連だとゴジラ・ストアやエヴァンゲリオンストア、アニメイトさんなどが導入されているそうですね。具体的にどのような支援を行っているのですか。

「Buyee Connect」を導入いただき、自社EC事業の海外展開をサポートしています。海外プロモーションや催事のお手伝いなどもしていますし、ECサイトをお持ちでなければ、それを構築するところからサポートできます。

――御社の発表する越境EC人気ジャンル2023年上半期では、1位がフィギュア、2位がゲーム、9位にコミック・アニメグッズがランクインしています。

PRTimesより

弊社の扱っている中で今一番売れているのは、アニメやゲーム関連を含むホビー商材です。この傾向は近年になって強まっています。越境ECと聞くと、例えば中国の方向けに家電製品を売るというイメージもあると思います。実際、私がこの事業を始めた2012年の頃は40%近くが中国本土への販売で一番多かったです。我々としては中国以外にどう広げていくかが課題だったのですが、現在はホビー販売が最も大きく、国別ではアメリカからの購入がトップです。

これは、弊社が一定の国や商材に注力して展開したわけではなく、日本の商材を幅広く扱った結果、ホビーが一番売れるようになったんです。コロナ禍で動画配信によって日本アニメが世界に普及したことで、関連グッズを求める人が飛躍的に増えたことが要因だと考えられます。

――アニメ関連のグッズと言ってもタイトルは様々あると思いますが、どの作品が売れていますか。

国によって傾向が異なります。中華圏で弊社のサービスを利用されているのは平均年齢40歳前後が多く、日本に勢いがあった頃から人気の「ドラえもん」や「キン肉マン」のような作品のグッズが人気です。逆に北米の利用者は20代が多く、この世代は配信で日本とほとんど時間差なく同じコンテンツに触れていますから、新作アニメの配信が開始されると、そのタイトルの検索ボリュームがわかりやすく飛躍的に増える傾向にあります。例えば「推しの子」の検索数は、アニメ配信前は年間数件だったものが配信が始まったとたん一気に増えました

――人気商材の一位がフィギュアなのは、どういった要因が考えられるでしょうか。

要因のひとつに考えられるのは、高額な商材が売れていることがあると思います。1体10万円近くするアイテムは、日本人なら高いと感じると思いますが、今は物価の差と円安効果もあって、海外のコレクターからすればそこまで高いと感じないのかもしれません。

――2位のゲームは具体的にどんなものでしょうか。

ゲームカテゴリにはトレーディングカードなども含まれています。今トレカがすごく人気があるのでこの順位にきています。

――ちなみに5位の「CD」は音楽CDですよね。

そうです。アニソンの他、AKB48など坂道系のアイドルやK-POPのCDがよく売れています。

――越境ECでCDが人気というのは、皮肉な話ですね。

海外ではCDはほとんど売られていない分、珍しがられているのだと思います。日本の限定版CDを求める方が多くて、K-POPの日本版CDも売れているんです。

――実際、御社で支援しているECサイトの売上で、越境ECが占める割合はどの程度なのですか。

そうですね、私たちは越境の部分を支援しているので、個別の企業様のECの売上の中での国内・海外比率については把握しかねるのですが、一般的に何もしていなくても日本のECサイトには海外からのアクセスが3%ほどはあると言われています。その上で、当社が支援したゴジラ・ストアでは、限定商品である1体10万円のフィギュアに関して、海外からの購入が25%となりました。海外ニーズの高い商品については、想像以上に多くの方に買ってもらっているという印象です。

――25%は無視できない数字ですね。

越境ECなら配信直後の購買意欲を取りこぼさない

――アニメ作品自体の海外展開は盛んですが、グッズの海外展開は国内ほど充実していないと言われています。越境ECはその課題をどう解決できるでしょうか。

これは決してネガティブな批判ではありませんが、かつてはテレビ局が海外放映権などと一緒にグッズ化の権利も渡していたという話をよく耳にします。放送してもらわないと認知も広がらないので、当時はそれが合理的な判断だったかもしれませんが、グッズを海外展開したいと相談を受ける時、「この国には権利を渡してしまっているので、できない」ということがよくあるのです。今はネットで世界中に同時配信可能になりましたから、今後はどんなパートナー関係が最適なのかを真剣に考える必要があると思います。

そういう状況の中、だったら国内から越境ECで展開しようと考える事業者さまが出てきているんです。通常、各国にグッズ展開するとなると、それぞれの国できちんとしたパートナー企業を見つけて在庫・流通を管理する必要もあり、ハードルが高いです。

しかし、越境ECなら世界中に販売できるうえ、在庫は国内だけで管理すればいい。そもそも、海外の会社とグッズのライセンス交渉するにも、配信前にはどれくらい人気が出るかわかりませんから、どの程度グッズを作ればいいかの判断も難しく話がまとまりにくいでしょう。そういう意味で越境ECには大きなメリットがあると思います。

――先ほどの「推しの子」の例だと、アニメ配信開始後に検索ボリュームが一番大きくなるわけですよね。海外のファンは、そのタイミングでグッズを欲しがっているけれど、配信直後に各国でグッズを揃えるのは難しいので、越境ECで国内在庫を買えるようにしておくといいわけですね。

はい。配信のタイミングで商品を買えるようにしておくのが一番大切だと思います。越境ECでグッズが購入されれば、さらにSNSで話題になることもありますし、なにより熱量が一番高いタイミングで購入できないのは、お互いにもったいないですよね。

コンテンツとグッズって、すごく強い関係性があると思います。私は、スヌーピーのグッズを可愛いなと思うんですけど、正直アニメはあんまり観たことがないんです。このような長寿コンテンツはグッズと一緒に認知されて愛されているんじゃないかと思うんです。

――自社で越境ECサイトを持てれば購買データも手に入り、どんなキャラクターや商材が人気なのかもある程度把握できるようになりますね。

はい。ダッシュボード機能を使えるプランに申し込んでもらうと様々なデータを閲覧できるようになります。

実際、グッズ販売をやってみることで見えてくることもあります。弊社は商品開発も行っていて、「星のカービィ」のコスメシリーズを作ったところ、意外にも米国でよく売れたんです。個人的に「星のカービィ」の世代ではなかったので、これは驚きでした。米国の小売店へ実際に調査に行った際も、アジア系の小売店であればキャラクターコスメも見られましたが、現地のローカル店でキャラクターコスメを展開していたのは「ハローキティ」ぐらいで、しかも展開していたのが韓国企業だったんです。日本のコンテンツの価値を理解して、積極的に展開しているのが日本企業ではなかったことに若干ショックを受けました。

PRTimesより

――コロナ禍でコンテンツホルダーからの相談件数などに変化はないのでしょうか。

お問い合わせは確実に増えています。誰もが知る有名コンテンツを持つ事業者さまからの問い合わせが多いですね。しかし、実は大ヒットしたわけではない作品も海外からは検索されているんです。越境EC導入はコストが高いというイメージを持っている事業者さまもいるかもしれませんが、導入コストはかかりませんからどんどんやった方がいいと思います。

エンタメ業界のDX化で必要な視点

――御社グループの中には、エンタメ事業のDX化を推進している子会社、BEENOS Entertainmentもありますが、エンタメ業界に対してこうすべきだという意見はありますか。

エンタメ業界に限りませんが、日本企業の対応は細切れなことが多いです。グッズで例えると、イベントの運営とグッズは別々の会社にお願いする、さらに会場物販とECの在庫管理が分かれているのが当たり前です。この結果、買いたいグッズが購入できないなどユーザー体験が上がらず、不便な状況が続いています。本来のDX化というのは、トータルのユーザー体験を考え、いかに改善していくかということだと思うんです。

――確かに日本企業はそれぞれの立場を尊重して、どうしても部分ごとに微調整するみたいなことになりがちですね。

そうですね。それは日本企業の宿命かもしれませんが、我々としてはなるべくユーザー体験が細切れにならないようなDX支援をしていきたいと思っています。コンテンツホルダーとユーザーがシームレスに繋がり、みんなが幸せになれるようなコンテンツ体験を作るお手伝いができればと考えています。

《杉本穂高》
杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。