Rotten Tomatoesのスコアは操作可能?映画レビューサイトが作品に与える影響とは

米メディアVultureは、映画レビューサイトであるRotten Tometoesの評価は操作が可能であると指摘している。

映像コンテンツ マーケティング
Rotten Tomatoesのスコアは操作可能?映画レビューサイトが作品に与える影響とは
Designed by Bakar015 / Freepik Rotten Tomatoesのスコアは操作可能?映画レビューサイトが作品に与える影響とは

Designed by Bakar015 / Freepik

米国の映画批評サイトであるRotten Tomatoesの評価は、操作が可能であると指摘されている。

かつては、信頼できる有名批評家の意見が小さな映画でも大きな成功に導いていたが、Rotten Tomatoesのような批評サイトの台頭によって大勢の意見がより大きな力を持つようになった。Morning Consult Proによると実際、米国の成人の3分の1が、映画館に行く前にRotten Tomatoesをチェックすると答えているという。
Rotten Tomatoesには公認の批評家が評価するTOMATOMETERと、一般の観客が評価するAUDIENCE SCOREがパーセンテージで掲載されており、特にTOMATOMETERの評価が作品の運命に繋がっているのだ。

Vultureはある事例を取り上げ、警鐘を鳴らしている。2018年、Bunker15という映画宣伝会社が新たなプロジェクトとして挑んだ『オフィーリア 奪われた王国』は、初期上映を見た批評家たちによってRotten Tomatoesで13のレビューが残されたが、そのうちの7つは否定的なものでスコアは46%だった。そこでBunker15は、まだ無名の批評家に対して金銭を支払い、高評価をするように求めたとのことだ。Rotten Tomatoesでは60%以下のスコアは“腐ったトマト”と表現されてしまい、一方で60%以上だと“新鮮なトマト”、75%以上を維持するなど条件を満たした作品は“新鮮保障トマト”とされるシステムとなっている。

Rotten Tomatoesは批評家と観客が簡単に映画の良し悪しを判断できる一方で、映画製作者にとっては良いものではないと考えられる。マーティン・スコセッシは「Rotten Tomatoesは監督をコンテンツメーカーに、観客を冒険心のない消費者に貶めている」と言う。さらにパブリシストは「自分たちの仕事はこのサイトを中心に回っている」と話し、ある批評家は「ここ10年で、最も信頼できる批評家の多くが後任なく引退したため、このサイトの重要性が増した」とVultureに語っている。

また、Rotten Tomatoesの計算方法にも疑問の声が挙げられている。スコアは各レビューを肯定的か否定的かに分類し、肯定的なレビューの数を合計で割ることで算出される。そのため、極端に好意的な(あるいは否定的な)レビューと少し好意的な(あるいは否定的な)レビューを区別する仕組みはない。

もうひとつの問題は、Rotten Tomatoesに掲載される最初のスコアが映画の初週興行収入に影響を与えると考えられており、スタジオ側はちょっとした工夫で映画を実際よりも良いものだと信じ込ませることができてしまうということだ。例えば、スタジオが新作の公開を控えている場合、事前に最も好意的な反応を示すと思われる批評家向けに映画を上映する。そして、その宣伝担当者は口コミやチケット販売に最大限の効果をもたらすため、好意的なレビュー時期の調整を行うのだ。

2018年より、Rotten Tomatoesはレビューを掲載できる批評家の制限を緩めている。今まで、投稿者にウェブ上のトラフィックや印刷部数の多い出版物で執筆していることを求めていたが、現在では多くのフリーランスなどの批評家が参加することが許され、1,000人以上の批評家が追加された。この変更は性別や人種の多様性に繋がったが、『ベイウォッチ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』への低すぎる評価の原因となったとされている。スタジオはこの評価を非難し、Deadlineは「ポップコーン映画(大衆向け娯楽作品)の潜在的なビジネスをますます減速させている」と報じた。さらに、アート系映画の評価も厳しくなったとのことだ。タイムズ紙で絶賛され、有名な批評家からも良い評価を得た作品が、Rotten Tomatoesでは最低の点数をたたき出したのだ。

Rotten Tomatoesは、Vultureの記者にBunker 15について質問された後、同社の映画をウェブサイトから削除し、それらをレビューしたライターたちに警告を送ったという。そして声明の中で「私たちは点数の完全性を真剣に受け止めており、点数を操作しようとするいかなる試みも容認しません。専門チームが定期的にプラットフォームを監視し、疑わしい行為があれば徹底的に調査し、解決しています」と述べている。

評価と興行収入の関係性について、様々な調査がある中、USCのData & Analytics Projectのディレクターによる2017年の研究では、「Rotten Tomatoesのスコアは、ポジティブにもネガティブにも、興行成績を牽引する上で非常に大きな役割を果たしたことはない」と結論づけられた。2020年のリンガーによる調査では、「Rotten Tomatoesのスコアは、特にコメディやホラー映画の興行収入と相関関係があることを発見したが、パンデミックの影響もあるかもしれない」とされている。これらの研究から分かるのは、Rotten Tomatoesは大きな影響を与えているのは確かだが、決定的な因果関係はなく、観客が映画を選ぶための重要な指標の一つに過ぎないということだという。

Another Source:Indie Wire
《伊藤万弥乃》
伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。