4週連続首位『キングダム 運命の炎』 邦画実写に復活の兆しも、残る課題

邦画実写作品の『キングダム 運命の炎』が4週連続首位に。コロナ禍以降アニメ作品の特大ヒットに押され、厳しい興行展開が続いていた邦画実写作品だが今年はその風向きを変える年になるかもしれない。

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4週連続首位『キングダム 運命の炎』 邦画実写に復活の兆しも、残る課題
Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images 4週連続首位『キングダム 運命の炎』 邦画実写に復活の兆しも、残る課題

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夏休みシーズンに突入し、映画業界は大きな盛り上がりを見せている。上位5作品が連日激しい順位争いを繰り広げており、あまりの熾烈さに『バービー』『リボルバー・リリー』『SAND LAND』などの新作はその順位に食い込むことができていない状況だ。

そして、その中でもトップを牽引し続けているのが『キングダム 運命の炎』。4週連続の首位を獲得した本作は先週末時点で累計興収41億円を突破しており、50億円到達はほぼ確実と言える推移となっている。昨年はアニメーション映画の『ONE PIECE FILM RED』が8月以降の興行を席巻していただけに、それとはかなり対照的な状況だ。

コロナ禍後における、アニメ作品空前の100億円ラッシュを前に、厳しい興行展開が続いていた邦画実写作品。2019年時点で24本あった10億円超えの実写作品も、2022年時点では14本までに激減。(映連)しかし、2023年はその風向きを変える年になるかもしれない。

『キングダム』は邦画実写を代表するヒットに

4週連続の首位を獲得している『キングダム 運命の炎』だが、この連続首位記録はコロナ禍後の邦画実写作品として『花束みたいな恋をした』以来2回目の快挙となる。

今作は2019年公開の『キングダム』、昨年2022年公開の『キングダム2 遥かなる大地へ』に続くシリーズ3作目。中国の春秋戦国時代を描いた人気コミック『キングダム』が原作で、知略をめぐらす戦闘や熱いドラマが魅力だ。そして、なんと言っても予算は「(※キングダム2で)普通の邦画の7本分」と言われるように莫大なものとなっており、臨場感あふれるアクションや壮大なロケーションは海外作品にも見劣りしないスケールとなっている。

また、原作者の原泰久氏が実際に脚本に参加し、オリジナルストーリーのストーリーやセリフを加筆しており、原作ファンとしても違和感がなく、作品の軸としてもブレない作りとなっている。そのため、映画ファン・原作ファン双方からシリーズを通してとても評価の高い作品となっており、早くも続編を熱望する声が多くあがっているほどだ。

シリーズ系の作品は続編を重ねるごとに興行収入が減少傾向になることは珍しくなく『東京リベンジャーズ』などは顕著な例となっている。そんな中、今作は50億円の突破がほぼ確実で、前作『キングダム2 遥かなる大地へ(51.6億円)』超えは濃厚、1作目『キングダム(57.3億円)』を超える可能性もあり得る推移となっている。

そして、その勢いは邦画実写作品全体にも良い影響を与えてくれることに期待したい。

ヒット作品多数も、格差が課題

『キングダム 運命の炎』に限らず、今年はスマッシュヒットを記録する作品が多く生まれてきた。

その中でも『劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~』は45億円に迫る大ヒットを記録し、現時点では今年の邦画実写作品No.1の地位に付いている。また、是枝裕和監督の『怪物』はカンヌ国際映画祭での高い評価を受け、ロングランヒットとなった。

このような作品を筆頭に今年は現時点で20億円超えの邦画実写作品が8作品となっている。この時点ですでに20億円超え作品が7本だった昨年を上回っているのだ。つまり、この結果について言えば邦画実写作品は良い勢いに乗っていると言えるだろう。

しかし、まだ課題として残っている懸念点がひとつある。それはヒット作品とそうでない作品のギャップである。邦画実写作品のヒット基準は一概に決まっていないが、日本映画製作者連盟(映連)が年に1度興収データを発表する際、興収10億円以上の作品のみが取り上げられることから、ここをひとつの指標として考える人は多い。

そこで、興収10億~20億円の邦画実写作品を見てみると、その条件に当てはまる作品は『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』『映画 イチケイのカラス』の2作品のみ。すでに200館を超える全国規模の邦画実写作品が30本近く公開されていることを鑑みてもこの“格差”は異質だ。コロナ禍前の2019年のデータと比較してみると、邦画実写で10億円を超えた24作品のうち10億~20億円の作品は16本、20億円以上の作品は8本と良いバランスでヒット作が生まれていた。

格差が生まれてしまうワケとは

なぜここまでヒットの環境が変わってしまったのか、この現象は邦画実写作品のみに当てはまるものではない。映画のビジネスモデル自体が大きく変化してしまったのだ。


《タロイモ》

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中学生時代『スター・ウォーズ』に惹かれ、映画ファンに。Twitterでは興行収入に関するツイートを毎日更新中。