Photo by Alberto E. Rodriguez/Getty Images for Disney
『ハムナプトラ』『ナショナル・トレジャー』、近年では『アンチャーテッド』など古代のロマンを求めるアドベンチャー映画は観客の心にワクワクを与えてきた。
そして、そのジャンルにおいて金字塔とも言える作品が「インディ・ジョーンズ」シリーズ。数多くの映画にも影響を与えてきた同シリーズだが、6月30日(金)日米同時公開となった第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』でついにフィナーレを迎えた。
製作発表の際も当時74歳を迎えるハリソン・フォードがインディを再び演じるということで大きく注目を集め、期待されてきた。しかし、製作発表後は度重なる監督や脚本の交代に続き、コロナ禍にも見舞われる事態に。その苦難を乗り越え、製作発表から7年の歳月を経てついに公開となった今作。しかし、そのスタートは専門家も予想外の“赤字濃厚”と言える絶望的な結果となってしまった。
2億ドル(約286億円)超えの損失も視野?
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は、先週末全米でオープニング興行収入6,000万ドルを記録し初登場1位スタートを記録した。通常の洋画作品として見れば上々のスタートであるが、莫大な予算を鑑みると物足りない成績だ。
海外メディアによると制作コストは3億ドルにのぼるといわれており、これに追加で1億ドル以上のマーケティングコストもかかっているとのこと。また、一部のメディアでは黒字化には8億ドルが必要といわれている。現状全世界のオープニング興行収入も1億3,000万ドルとなっており、これは連日厳しい興行展開が報じられた『ザ・フラッシュ』よりも低い数字となる。つまり、最終5億ドルに届くかも怪しいというのが事実だ。
そうなると、配信や円盤などの二次収入である程度のリカバリーが出来ても、その赤字額は昨年2億ドル超えとなる年間最高の損益を記録したとされる『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』と肩を並べる、または超えてしまう可能性もある。『リトル・マーメイド』『ザ・フラッシュ』『マイ・エレメント』など赤字危機の作品が続くハリウッド業界には一体何が起きているのだろうか。
海外メディアも原因究明を急ぐ

この異常事態に多くのメディアはその原因の究明を急いでいる。ここではその原因を大きく2つ解説していく。
①映画祭での先行上映
まず1つはカンヌ国際映画祭でプレミア上映を行ったことが失敗の要因と言われている。映画祭で商業映画の最新作をお披露目すること自体は珍しいことではないが、今回の場合は映画祭の観客と相性が悪く、控えめな評価を受けてしまったのが問題だ。米批評サイトRotten Tomatoesでは映画祭直後の批評家スコアは50点と低い水準となってしまい、「シリーズ最低の評価」と取り上げられる形に。しかし、いざ公開を迎えると批評家スコアは69点、観客スコアは88点と大きくプラスに転じた。映画を見るか判断する上で重要な要素となる口コミ。もし、プレミア上映がなければもう少し数字には期待ができたかもしれない。
②若年層への訴求力
やはり40年以上の歴史を持つシリーズ作品として、世代である50代以上に訴求する面がかなり強かったと指摘されている。本作の観客の42%は45歳以上となっており、これは夏シーズンのハリウッド作としてかなり珍しいという。
観客出口調査においても、その結果は顕著に現れ、観客評価指標のひとつであるCinemaScoreでは全年齢の評価「B+」に対し、18~24歳の若年層評価は「B-」と大きく乖離が生じている。(この「B+」という評価自体も口コミでの伸びを期待する上では、あまり良い評価と言えない)
『トップガン マーヴェリック』と比較し、メロドラマ要素など全年齢層に訴求できる部分が足りないと評価する声もあり、ここも一つの問題点とは言えそうだ。
ハリウッド大作の渋滞やルーカスフィルムへの不満も?
ここまでは、海外メディアなどで取り上げられている主な失敗原因を紹介してきたが、ここからは筆者が個人的に原因と思われる理由をお伝えしたい。