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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』など今年も大ヒット作品が出揃い始め、2023年のハリウッド夏興行も本格化してきた。
全米では一般的に6月上旬から夏休みシーズンが始まるため、この時期から大型作品の公開が続く傾向にある。昨年もこの時期に『トップガン マーヴェリック』や『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』など10億ドル超えの売上を記録する作品が生まれ、コロナ禍からの脱却を印象付けるヒットを記録してきた。そんな中、あまり調子を伸ばしきれなかったのがディズニー&ピクサーの作品群だ。
傘下であるマーベル・スタジオは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『ソー:ラブ&サンダー』など根強いファン人気でヒットを獲得したが、ピクサー作品の『バズ・ライトイヤー』が興行的に失敗。その後も感謝祭シーズンに公開されたウォルト・ディズニー・スタジオ作品『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』の興行失敗がさらなる大打撃に。20世紀スタジオの『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が全世界歴代興行収入3位の映画史に残るヒットを記録したことで、事なきを得たディズニーだが、CEOも変わり今年こそは完全復活の年にしたいという想いはあるだろう。
全米大ヒット&大絶賛の『リトル・マーメイド』
レビューでは主演を務めるハリー・ベイリーの歌声はもちろん、『メリー・ポピンズ リターンズ』にてすでにディズニーミュージカル作品も経験しているロブ・マーシャル監督の手腕も大きく評価されている。参考として、米批評サイトRotten Tomatoesでも観客の支持率は95%と高い数字を記録。観客の出口調査から算出されるCinema ScoreもA評価と圧倒的な支持を得た。
特に近年Disney₊で配信されていたアニメ実写作品の観客支持率は『ピーター・パン&ウェンディ』が11%、『ピノキオ』が27%だったことを踏まえても優秀な数字だ。Rotten Tomatoes評価も絶賛に染まり、全米では3億ドル以上のヒットも予想される本作だが、実は手放しで喜べる状態ではないということも事実。気がかりなのは海外での成績である。
海外成績に怪しい影
先ほど全米でのオープニング成績が9,550万ドルであると触れたが、その他51カ国の海外オープニング成績を見てみるとその数字は6,830万ドルに止まっている。これは、最近公開されたばかりの『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』の2億5,150万ドル(84カ国)と比べるとその差は歴然。また『アラジン』の1億2,100万ドルと比べてみても約半分の数値となっており、やや物足りない数字となっている。
そして、その原因になっているのは公開前から度々多くの議論が交わされた配役問題ではないかと言われている。原作で白人系の外見であったアリエルをアフリカ系アメリカ人のハリー・ベイリーが演じることで、原作に忠実な実写化を望むファンから批判の声が殺到した問題だ。全米ではその影響をほとんど受けないヒットを記録しているが、海外の様相はかなり異なるようだ。