ついに20億円へ、快進撃止まらない『RRR』ヒットの真の理由を徹底解剖

先日ついに累計興収20億円を突破した『RRR』。公開から7カ月が経過した今も全国でロングランヒットが続いている。インド映画としてもインディペンデント系配給作品としても異例のこの成績には、一体どのような理由が隠されているのだろうか。

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『RRR』
©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』
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『RRR』の快進撃が止まらない。昨年10月末に封切りとなった本作だが、熱狂的なロングランヒットが続き、公開31週目を迎える今でもなお、100館近くの劇場で上映が続いている。

そして先日ついに累計興収は20億円を突破。初週末の興行成績は4,435万円だったため、なんと初週からの伸びは実に45倍以上と凄まじい数値であることがわかる。通常、初動から最終成績まで10倍推移となる作品すら、年に数本しかないことを踏まえると、この45倍という数字はまさに異次元と言えるだろう

この奇跡とも言えるヒットは一体どのようにして生まれたのか、今回はその謎に迫っていきたい。

インディペンデント系配給会社として異例の大ヒット

『RRR』は、英国の植民地となっていた1920年代のインドを舞台に、英国軍に捕らわれた同郷の少女を救う使命を持ったビーム、英国の警察としてある大義を果たすための使命を持ったラーマの“友情”と“使命”を巡る熱いドラマを描いた作品。

インド映画史上最大規模の97億円の制作費をかけた本作は、ハリウッドにも劣らない圧巻のアクションをはじめ、ダンス、歌など幅広いバラエティで展開される。ストーリーも手に汗握る展開が180分ノンストップで続き、筆者も全く飽きることなく常時スクリーンに釘付け状態だった。Filmarksでも初日満足度が週間1位を記録するなど、観客からも圧倒的な支持を受けている。

『RRR』が達成した20億円という数字は、アニメ映画が100億円級ヒットを連発する昨今において、一見そこまでのヒットに思えないかもしれないが、ここで本作のバックグラウンドを整理してみよう。

まず、これまでのインド映画最高成績は『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年に日本公開)の4億円。つまり本作の成績はそれを5倍ほど更新するものとなっている。インド映画がなかなかヒットしない日本において、これは革命的なものと言えるだろう。

また、特筆すべきなのは配給会社が東宝やソニーと言った大手企業ではないという点。今作の配給を務めたツインは未上場の企業で、主に100館未満のミニシアター作品を扱う会社だ。そのため、『RRR』も実は基本的にTOHOシネマズ系列の劇場では上映されておらず、今までの自社最高成績も『新感染 ファイナル・エクスプレス』の3.1億円だった。このようなバックグラウンドを踏まえると、『RRR』の20億円という数字がいかに驚異的なものかが分かるだろう。

さらに全米でもインド映画史上最高の興行成績となった本作だが、日本の成績はその数字にほぼ肉薄しており、この熱狂ぶりは世界的に見ても凄まじいものだ。

日本でヒットした3つの理由

それでは早速このヒットの要因について考えていこう。

まず、評価の高さや口コミの広がりによる大ヒットであることは大前提として、本作のヒットの理由は大きく3点挙げられる。

まず1つは「バーフバリ」シリーズの人気からS・S・ラージャマウリ監督ファンの下地が出来上がっているという点。2つ目は友情や使命をテーマに主人公2人の葛藤を描くというストーリーが、日本の少年マンガと親和性が高いという点だ。最後に3つ目は映画体験としてのクオリティの高さだ。

まず1点目だが、S・S・ラージャマウリ監督の手がけた「バーフバリ」2部作はインド映画として初めて全米トップ10にランクインした作品。日本でも2017年に公開され、熱狂的なファンを獲得。特に2作目の『王の凱旋』は上映館が3倍になるなど3億円のロングランヒットを記録した。

2つ目はストーリーが少年マンガと親和性が高いという点。ネタバレになってしまうため詳細は省くが、本作は分かりやすいストーリー展開に、脳裏に焼き付く強烈なシーンの数々、そして日本の少年マンガのように思わず主人公を応援したくなるような、そんな激しい熱量を感じる作品だ。そして『ONE PIECE FILM RED』のようにクオリティの高い楽曲が作品を彩っており、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のように炎や水を纏った激しいアクションがてんこ盛りとなっている。この王道エンタメらしい展開が、日本人の心に強く刺さり口コミで爆発的な伸びを見せるムーブメントに繋がった1つの要因と考えられる。

最後に3つ目だが、本作はIMAXやドルビーシネマなどラージフォーマットでの動員が好調で、映画体験としての価値が非常に評価されていたこともヒットの要因のひとつだろう。

この“映画体験”というワードは近年のロングランを記録する作品において、切っても切り離せない重要な要素となっている。動画配信サービスなどの台頭で映画館離れの声が増す一方、その差別化として、家では感じることのできない没入感や高品質な音響で映画館ならではの臨場感を味わえるのが“映画体験”の魅力だ。最近は海外大作映画だけでなく日本の作品もIMAXで公開されることが多く、ファンはより良い“映画体験”を求めラージフォーマットでの鑑賞を行うケースも増えてきた。

この点に関して、『RRR』は画面を覆いつくす圧倒的なアクション、作品を彩るパワフルな楽曲がラージフォーマットと親和性が高く、再びこの感動を味わいたいと「#追いRRR」をする観客も続出した。

この3点がヒットの要因と言えそうなのは確かで、他メディアでも同様の指摘が多い。しかし、初週から45倍の異常ヒットにはまだまだ理由があるようにも感じる。ここからは主に口コミが大きな広がりを見せるインターネットの盛り上がりを元に、さらなる理由を探っていきたい。

Googleトレンドからさらなる理由を深堀り

まず、こちらのグラフを見てほしい。これは、Googleトレンドにおいて『RRR』の公開から今日までの盛り上がりを表したものだ。

通常、ほとんどの映画であれば公開初週が盛り上がりのピークでそこから徐々に数字を落としていくというのが通例だ。しかし、その点『RRR』はしばらく横ばいの推移が続いており、話題性の途切れがほとんどないことがわかる。
さらに、何度か大幅にグラフが上昇する部分がある。その部分を中心にヒットの理由を探っていきたい。


《タロイモ》

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タロイモ

中学生時代『スター・ウォーズ』に惹かれ、映画ファンに。Twitterでは興行収入に関するツイートを毎日更新中。

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