ソニーグループが発表した2022年度第3四半期(10-12月)決算は、映画分野(ソニー・ピクチャーズ)において、売上高が前年同期比28%減、営業利益が83%減という大幅なダウンとなった。
数字だけを見れば急ブレーキがかかったように映るが、その背景には前年度の「記録的な特需」からの反動という側面が強い。
昨年の同時期をみると、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』や、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が大ヒットとなり、劇場興行収入に大きく貢献した。また、古典的なシットコム「となりのサインフェルド」を5億ドル(約660億円)相当の契約でNetflixにライセンスし、パラマウント・グローバル(当時はViacomCBSと呼ばれていた)がケーブルシンジケーション権を獲得したことでも利益を上げた。
ゲーム分野でも、ソニー・ピクチャーズ傘下にあったGSNゲームをScopelyに約1,100億円で売却したことなどから、前年は大作のヒットや売却などの大きなイベントが収益に貢献していたことが分かる。
市場環境も逆風だった。米国における2022年の興行収入全体が、コロナ禍による制作遅延などの影響で、2019年比で6割程度の水準にとどまっている。ソニーも『シング・フォー・ミー、ライル』などの新作を投入したものの、前年のメガヒットには及ばなかった。
しかし、ソニー側は先行きを悲観していない。3月以降は延期されていた大型作品の公開が控えており、市況はコロナ前の水準へ回帰していくと予測している。 また、日本アニメの海外展開も好調だ。配信サービス「Crunchyroll」の有料会員数は昨年末時点で1,000万人の大台を突破。劇場版『ONE PIECE FILM RED』の海外配給もヒットを記録するなど、アニメ事業が新たな収益の柱として成長を続けている。
今後のカギを握るのが、ソニーが持つ強力なゲームIP(知的財産)の映像化だ。
象徴的な成功例が、HBOでドラマ化された『THE LAST OF US』である。ドラマの大ヒットに伴い、原作であるゲームソフトの販売も再燃しており、映像作品がゲーム事業へ還元される好循環が生まれている。 ソニーは現在、『グランツーリスモ』や『ゴッド・オブ・ウォー』など、10以上のゲームIP映像化プロジェクトを進行させている。映画事業単体でのヒット狙いから、グループ全体でIP価値を最大化する戦略へと舵を切った。
現在は『グランツーリスモ』や『ゴッド・オブ・ウォー』など、現在10以上のゲームIPの映像化プロジェクトが進行中しているとのことだ。多面的なIPの活用を通して、自社のIPの価値向上を目指している。
こうした事業環境の変化に対応すべく、ソニーグループは経営体制も刷新する。4月1日付で、現CFOの十時裕樹氏が社長COOに昇格し、吉田憲一郎会長CEOと共にグループを率いる新体制が発表された。
十時氏はCFOとしてソニーの構造改革と財務基盤の強化を支えてきた人物だ。会見では「事業環境や技術が大きく変化する中でも、ポジティブスパイラルを生み出したい」と抱負を語っており、EV(電気自動車)事業への参入も含め、エレクトロニクス、エンタメ、テクノロジーを融合させるソニーの変革は、新体制下でさらに加速することになりそうだ。
Sources:決算短信・業績説明会資料、The Hollywood Reporter、IndieWire

