ソニー、映画分野の利益は83%減少、今後はゲーム事業との連携も強化

ソニー・ピクチャーズの利益は、12月末締めの2022年度第3四半期は昨年と比較して83%減少、売上高は28%減少した。

ビジネス 決算
ソニー、映画分野の利益は83%減少、今後はゲーム事業との連携も強化
Photo by Ian Waldie/Getty Images ソニー、映画分野の利益は83%減少、今後はゲーム事業との連携も強化

ソニーが第3四半期の業績を発表。映画分野の利益は昨年と比較して83%減少、売上高は28%減少した。

ソニーの映画分野については、劇場公開作品は前年同期比で83%営業利益を落とし、今回の落ち込みの主因となった。このような大幅な減益をみると悪い方向に向かっているようにも思えるが、状況はそこまで深刻でもなさそうだ。

昨年の同時期をみると、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』や、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が大ヒットとなり、劇場興行収入に大きく貢献した。また、古典的なシットコム「となりのサインフェルド」を5億ドル(約660億円)相当の契約でNetflixにライセンスし、パラマウント・グローバル(当時はViacomCBSと呼ばれていた)がケーブルシンジケーション権を獲得したことでも利益を上げた。ゲーム分野でも、ソニー・ピクチャーズ傘下にあったGSNゲームをScopelyに約1,100億円で売却したことなどから、前年は大作のヒットや売却などの大きなイベントが収益に貢献していたことが分かる。

2022年度は『シング・フォー・ミー、ライル』(日本では3月公開)が最大の収入となり、 『マチルダ・ザ・ミュージカル』、『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』が続いた。米国における2022年の劇場興⾏収⼊は、コロナ禍での制作の遅れなどから2019年の6割程度の⽔準に留まってしまったが、今後は⼤型作品の公開が本格化することから、コロナ前の⽔準まで回復することを予測しているとのことだ。

また、海外でアニメ作品を配信するCrunchyrollは、昨年末で有料会員数が1,000万⼈を突破、⽇本アニメの海外での劇場配給では『ONE PIECE FILM RED』がヒットするなど、着実に事業を拡大させている。

今後、映画事業はゲーム事業との連携を強化していくことも発表された。現在U-NEXTで配信中のドラマ『THE LAST OF US』は、ドラマ作品のヒットに伴い、旧作でありながらゲームソフトも再ヒットしている。


現在は『グランツーリスモ』や『ゴッド・オブ・ウォー』など、現在10以上のゲームIPの映像化プロジェクトが進⾏中しているとのことだ。多⾯的なIPの活⽤を通して、自社のIPの価値向上を目指している。

さらにソニーグループは、4月1日より吉田憲一郎氏の後任として、CFOの十時裕樹氏がグループ社長に就任することも発表した。吉田氏はCEO兼会長として留まる。2人はソニー銀行とソニーネットワークコミュニケーションズで密接に協力しており、十時氏がCOOを兼任する新しい体制は、吉田氏の要望によるものだという。十時氏は、吉田氏が平井一氏からソニーの舵取りを引き継いだ2018年に就任したCFOの役割も継続する。

十時氏は、「事業環境や技術が大きく変化する中でも、顧客に選ばれ、社員を元気にし、優秀な人材を集め、企業価値を高め、そして、社会に還元する、そうしたポジティブスパイラルを、吉田、ソニーグループの経営陣、そして世界中の社員とともに生み出していきたいと考えています」とコメントしている。

ソニーは、電気自動車開発のための合弁会社ソニー・ホンダ・モビリティの設立や、ゲーム・音楽分野への継続的な投資など、家電中心からの転換を続けている。

Sources:決算短信・業績説明会資料The Hollywood ReporterIndieWire
《伊藤万弥乃》

関連タグ

伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。