第73回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門のラインナップ18作品が、映画祭代表のカルロ・チャトリアンとマリエット・リーセンベークによって発表された。日本からは『すずめの戸締まり』が選出された。
本映画祭は、1951年からドイツ・ベルリンにて毎年2月に行われている国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭であり、カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭と並ぶ“世界三大映画祭”の一つとして数えられている。最高賞の“金熊賞”は、「コンペティション部門」に選出された作品のみしか獲得できない賞となっている。今年は2月16日(木)から23日(木)まで開催され、同時開催のヨーロッパ映画市場は2月16日(木)から22日(水)まで開催される。
18作品のうち15作品はワールドプレミアで、サンダンス映画祭で好評を博したセリーヌ・ソンの『Past Lives(原題)』、昨年11月に日本で公開された新海誠監督のアニメーション『すずめの戸締まり』、アデレード映画祭で初公開されたロルフ・デ・ヒーア監督の『The Survival Of Kindness(原題)』がインターナショナルプレミアとなっている。そして、このうち6作品が女性監督の作品で、3作品が長編デビュー作、11作品が過去に本映画祭に選出されたことのある監督の作品となっている。
『すずめの戸締まり』の選出は、日本アニメーションではまさに『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりの「コンペティション部門」となる。映画祭には、新海誠監督とヒロイン・岩戸鈴芽を務めた原菜乃華がレッドカーペット、そしてプレミア上映に参加する予定。
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新海誠監督は「『すずめの戸締まり』は、十二年前に日本で起きた巨大な出来事が物語の根底にあります。この映画が海外の観客にどのように映るのか、なにが伝わり、なにが伝わらず、なにを共有し得るのか。私たちの創作が外部からはどのように見えるのか。それを自身の耳目で確かめる好機をいただけたと考えています。ここまで導いてくれたスタッフたちの才能と尽力、そして応援してくださった皆さまに、心より感謝します」とコメント。
また、原菜乃華は「私自身、海外に行くこと自体初めてで、それも、歴史あるベルリン国際映画祭にすずめの戸締まりチームで行くことが出来るなんて、とても光栄で、夢のようです。改めて『すずめの戸締まり』という作品に携わることが出来て嬉しく思います。映画祭で直接世界中の方々のお声を聞くことがとても楽しみです。『すずめの戸締まり』が 世界中で愛されますように!」とコメントしている。
コンペティション部門の作品には、ドイツ人監督マルガレーテ・フォン・トロッタが1983年の『Heller Wahn(原題)』以来、ベルリンのコンペティション部門で上映する『Ingeborg Bachmann – Journey into the Desert(原題)』が選ばれている。主演はヴィッキー・クリープスで、オーストリアの詩人・作家のバッハマンを演じている。
ジェシー・アイゼンバーグ、エイドリアン・ブロディ、オデッサ・ヤングが出演する『Manodrome(原題)』はスリラー映画で、アイゼンバーグは教団に入信した父親を演じている。米英合作の本作は、前作『The Wound(原題)』で2017年にベルリンのパノラマ・ストランドを開いた南アフリカのジョン・トレンゴーブ監督の英語版デビュー作となる。
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中国からは、2007年に『Desert Dream(原題)』でベルリンのコンペティション部門に参加したチャン・ルー監督による『The Shadowless Tower(原題)』が登場。彼の最新作は、北京を舞台に、父と息子の物語とロマンチックなラブストーリーを絡めたメロドラマとなっている。
また、フランス・イラン出身のエミリ・アテフ監督は、ベルリンで上映された『3 Days In Quiberon(原題)』から5年、10代のラブストーリーを描く『Someday We'll Tell Each Other Everything(原題)』を出品。フランスのベテラン監督フィリップ・ガレルは、息子と娘のルイ・ガレルとエステル・ガレル主演の家族ドラマ『The Plough(原題)』を出品し、再びコンペティション部門に登場する。彼は前回2020年に『涙の塩』でコンペティション部門に出品している。
『水を抱く女』や『東ベルリンから来た女』などのタイトルで過去5回金熊賞にノミネートされている本映画祭常連のクリスティアン・ペツォールトは、バルト海沿岸の友人たちが周囲の森に火がつくことで感情が高ぶる様子を描いた『Afire(原題)』で再登場。2019年に『I Was at Home, But...(原題)』で銀熊賞(監督賞)を受賞したドイツのアンゲラ・シャーネレクも、『Music(原題)』でコンペティション部門に再び選出された。
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ベルリナーレ・スペシャルでは、俳優のショーン・ペンとアーロン・カウフマンによる『Superpower(原題)』も発表された。この作品は、米国の俳優で映画監督のペンが、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーを紹介するためにウクライナへ行き、ロシアとの戦争が始まったときにキエフに身を置くことになる、というドキュメンタリー作品。ベルリン国際映画祭の共同ディレクターたちは、青と黄色バージョンの映画祭のピンバッジを身につけ、映画祭がウクライナの人々と連帯していることを示した。
また、本映画祭はピーター・ディンクレイジとアン・ハサウェイ主演のレベッカ・ミラー監督のロマンティック・コメディ『She Came To Me(原題)』のワールドプレミアで幕を開ける。クリステン・スチュワートが審査委員長を務め、スティーブン・スピルバーグが生涯功労賞の名誉金熊賞を受賞する予定。
🎥コンペティション部門 作品名/監督名一覧
20,000 Species Of Bees/エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン(スペイン)
Afire/クリスティアン・ペツォールト(ドイツ)
Bad Living/ジョアン・カニージョ(ポルトガル、フランス)
BlackBerry/マット・ジョンソン(カナダ)
Disco Boy/ジャコモ・アブラジーゼ(フランス、イタリア、ポーランド、ベルギー)
Ingeborg Bachmann – Journey Into The Desert/マルガレーテ・フォン・トロッタ(ドイツ、スイス、オーストリア、ルクセンブルク)
Limbo/ アイヴァン・セン(オーストラリア)
Manodrome/ジョン・トレンゴーブ(イギリス)
Music/アンゲラ・シャーネレク(ドイツ、フランス、セルビア)
On The Adamant/ニコラ・フィリベール(フランス、日本)
Past Lives/セリーヌ・ソン(アメリカ)
Someday We’ll Tell Each Other Everything/エミリ・アテフ(ドイツ)
すずめの戸締まり/新海誠(日本)
Till The End Of The Night/クリストフ・ホホホイスラー(ドイツ)
The Plough/フィリップ・ガレル(フランス、スイス)
The Shadowless Tower/チャン・ルー(中国)
The Survival Of Kindness/ロルフ・デ・ヒーア(オーストラリア)
Tótem/リラ・アヴィルス(メキシコ、デンマーク、フランス)