2025年10月29日から31日までの3日間、東京都立産業貿易センター浜松町館で開催される東京国際映画祭(TIFF)併設のコンテンツマーケット「TIFFCOM 2025」。その主要イベントであるセミナープログラムの中から、注目の14本のラインナップが発表された。日本アニメやテレビコンテンツの海外展開戦略、活発化する国際共同製作の最前線、そしてアジア各国の最新動向まで、世界の映像ビジネスの今を捉える多彩なセッションが予定されている。
日本コンテンツのグローバル戦略―アニメ市場の最新データから各局の海外展開まで
日本の映像産業の根幹をなすアニメとテレビコンテンツの海外展開は、今年のTIFFCOMでも主要なテーマとなる。
一般社団法人日本動画協会が主催する「日本のアニメーションの海外展開最前線」では、「アニメ産業レポート2025」に掲載される2024年の国内外のアニメ市場規模が初めて公開される。成長を続けるアニメ産業の最新データと共に、制作・製作会社の海外展開事例が紹介され、今後の展望を探るセッションとなる。
テレビコンテンツ分野では、各局のグローバル戦略が明らかになる。一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)は「放送コンテンツの海外展開最前線」と題し、WOWOWと日テレアックスオン、朝日放送テレビ、NHKエンタープライズなどによる国際共同製作の実績や、テレビ宮崎のローカルコンテンツバンク活用事例などを紹介する。また、日本テレビは「日テレ、開国! Gear Up, Go Global」と銘打ち、世界市場を見据えたコンテンツ制作やAI新技術開発などのグローバルビジネス戦略を発表。TBSホールディングスも「Inspiring Global Love for Japan」をテーマに、世界戦略スタジオ「THE SEVEN」の具体的な取り組みや、ベトナム国営放送VTVとの戦略的アライアンスについて説明する。
さらに、日本が世界に誇るIP(知的財産)の未来を探るキーノートセッション「グローバル映像化で注目される日本IPの未来」では、実写版『ONE PIECE』などを手掛けたフィロソフィア株式会社の藤村哲也氏が登壇し、日本発IPのグローバル映像化の現状と今後の可能性について考察する。
加速する国際共同製作―アジアからハリウッドまで、成功へのロードマップ
国境を越えたコンテンツ製作が主流となる中、国際共同製作に関するセミナーも多数開催される。
特に注目されるのが、『パラサイト 半地下の家族』を製作した韓国のチェ・ユンヒ氏と、『ヤンヤン 夏の想い出』などを手掛けた河井真也プロデューサーが登壇する「国際共同製作のロードマップを考える」セッションだ。アジアから世界を目指すフィルムメーカーに向けて、両氏が実践的な知見を語り合う。
日韓協力の枠組みも具体的に示される。映像産業振興機構(VIPO)と韓国映画振興委員会(KOFIC)は「日韓Producers Exchange」を開催し、両国の国際共同製作におけるインセンティブ制度を紹介。また、東京藝術大学と韓国映画アカデミー(KAFA)が共同で行う「長編企画共同開発ワークショップ」のピッチングイベントも実施され、次代を担う若手クリエイターたちの企画が披露される。
ハリウッドとの連携を探るセッションとしては、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)らが主催する「マスタークラス・セミナー&ピッチング・コンテスト」が開催される。セミナーには、映画『Elvis』をプロデュースしたスカイラー・ワイス氏が登壇し、製作秘話を語る。コンテストの最優秀者には、米国の映画・テレビビジネスを学ぶプログラムへの参加権が贈呈される。
アジア各国の最新トレンドが集結―タイBL、トルコリメイク、中国・韓国の新作も
世界市場で存在感を増すアジア各国のコンテンツ動向を探るセッションも充実している。
タイ国大使館商務参事官事務所は「タイBL & GLの魔法: 世界を魅了する化学反応」と題したセミナーを開催。世界中のファンを魅了するタイ発のボーイズラブ・ガールズラブ作品の制作陣が多数登壇し、その魅力の源泉とグローバルな人気の背景を探る。
ドラマ大国として知られるトルコに焦点を当てたセミナーも開催される。日本貿易振興機構(JETRO)主催の「トルコにおけるリメイクドラマのトレンドと日本ドラマの可能性」では、多くのリメイク実績を持つトルコのメディア企業と日本のテレビ局が登壇し、トルコ市場の最新トレンドや日本コンテンツの新たな可能性について議論する。
中国からは、華策影視による「中国高品質映画・テレビコンテンツ推進カンファレンス」と、上海市ラジオテレビ局などが主催する「2025 上海視聴コンテンツショーケース」の2つのセミナーが開催される。中国の優れた映像コンテンツが体系的に紹介され、国際的なパートナーシップの機会を創出する。
韓国からは、KOCCA(LG U+)が「LG U+ Drama Premiere 2025」を実施。AIデーティングアプリをテーマにした近未来ロマンティックコメディ『ラブフォビア』と、初恋からの成長を描く『未来の未来』という2つの新作K-Dramaが紹介される予定だ。