株式会社ビジュアルボイスと株式会社NTT Digitalは2025年9月17日、映像コンテンツ流通プラットフォーム「LIFE LOG BOX」において、分散型識別子(DID)と検証可能なデジタル証明書(VC)を活用したWeb3サービスの実証実験を2025年秋より開始すると発表した。本実験は、映像・映画産業が抱える著作権管理の複雑さやクリエイターの経歴証明といった課題を解決し、業界の透明性と信頼性を高めることを目的とするという。
この取り組みは、ビジュアルボイスが運営する権利管理プラットフォーム「LIFE LOG BOX (LLB)」を基盤とし、NTT Digitalが技術協力を行う形で推進される。デジタル化とグローバル化が進む現代の映像業界において、「情報の信頼性向上」「権利関係の厳格な管理」「個人によるデータ主権の確立」を実現させようという試みだ。
クリエイターのキャリア証明の信頼性を確立と権利保護を両立
本実証実験で活用されるDID/VC技術によって、クリエイターは、映画祭での受賞歴、制作への参加実績、保有スキルなどが改ざん困難なデジタル証明書(VC)を発行できる。これにより、自身のキャリアや能力を客観的かつ信頼性の高い形で提示でき、経歴の真偽を巡る懸念を払拭する。結果として、適切な人材マッチングが促進され、新たなプロジェクトへの参加やキャリアアップが容易になることが期待される。
また、映像作品の著作権や二次利用権などもDID/VCで管理することで権利関係が明確化され、将来的にはスマートコントラクトを用いた透明性の高い収益分配の自動化も視野に入れる。
一方、バイヤーや製作・配給会社にとっては、コンテンツの権利関係をVCで確実かつ容易に検証できるため、安心して取引を行うことが可能となる。これにより、商談の円滑化や不正取引のリスク低減に繋がる。さらに、クリエイターのスキルや実績がVCによって証明されるため、プロジェクトに最適な人材を効率的に探し出し、信頼性の高いチームを組成することが可能になる。

2026年の本格サービス化へ、教育機関や自治体での活用も視野に
実証実験は、2025年10月に開催される「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA) 2025」の受賞者へのVC発行を皮切りに開始される。当初は同映画祭の受賞・ノミネート者や専門学校の修了生、コンテンツ購入を検討する企業などを対象とする。
将来的には、教育機関が発行する修了証明書や資格証をVC化し、学生の就職活動を支援する動きも想定されている。VCによって学生のスキルや経歴が証明されることで、企業へのアピールが容易になり、競争力を高めることができる。
ビジュアルボイスとNTT Digitalは、2026年中にLLB上のコンテンツマーケットでの配給や売買を含む本格的なサービス提供を目指すとしている。両社はこの取り組みを、映像・映画産業のみならず、将来的には地方自治体による行政サービスの効率化など、より広範な社会実装の可能性も視野に入れているという。