ついに日本も本格的な夏休みシーズンに突入した。先週は新作6本が映画ランキングTOP10にランクインし、映画業界も大きく賑わいを見せている。
熾烈な争いが繰り広げられる中、2週連続となる首位を維持したのが『キングダム 大将軍の帰還』だ。シリーズ4作目となった本作は、公開初週から邦画実写歴代No.1の特大スタートを記録し、映画業界をざわつかせる大ヒットとなった。既に累計興収は36億円を突破しており、この夏の筆頭候補になることは間違いないだろう。配給を担う東宝からは「100億円を狙える」との発表もあり、そこもひとつの注目ポイントだ。ただ、夏興行はまだ始まったばかり。本格的なピークを迎えるお盆シーズンに向け、次々とビッグタイトルが公開される予定だ。今回は、果たしてどの作品がウイニングランを果たすのか、トップランナーの行く末を占いたい。
トップランナー候補『キングダム』の100億円突破は可能なのか?
まず近年の夏興行を振り返ってみると、2022年は『ONE PIECE FILM RED』が200億円に迫る空前絶後のヒットを記録。そこに60億円超えの『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』が続き、『キングダム2 遥かなる大地へ』の51.6億円と『ミニオンズ・フィーバー』の44.4億円がその後を追った。そして昨年、2023年はスタジオジブリ渾身の新作『君たちはどう生きるか』が存在感を放ちロングランで90億円超のヒットを記録。その夏は、2位争いを繰り広げた『キングダム 運命の炎』『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』が50億円超のヒットを記録した。
つまり、ここ2年で大ヒットを記録している「キングダム」シリーズだが、どちらも夏興行では2番手、3番手に回ってしまっていたのだ。そして、今年こそがまさに三度目の正直と言える年。邦画実写歴代No.1スタートの勢いのままにトップランナー候補として期待がかかる。ただ、やはりファンを含め多くの人が気になっているのは本作『キングダム 大将軍の帰還』が100億円を突破できるかどうかだろう。冒頭でも触れた通り、配給の東宝は初動成績の発表時に「興収100億円を目指せる特大ヒットスタート」と紹介した。
しかし、ここに関しては2週目を迎えた今、少し議論の余地がありそうだ。ここで簡単に過去作の推移と比較しながらシミュレーションを行うと、以下のようなグラフになる。
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※興行収入データを基に筆者作成
灰色が本作を示しているが、これは3週目以降の数字が「前週比70%」を記録し続けた場合の推移となっている。(※お盆シーズンに合わせた調整あり)そうなると落ち着くラインは80億円辺りとなりそうだ。ただ、過去作はこれよりもややシビアな推移となっているので、あくまで基準としてこの辺りが理想ラインと考えるのが妥当だろう。もちろん、シリーズ最高成績更新は確実だが、100億円の壁はもう少し高くなってしまうかもしれない。
ここで、唯一の起爆剤となるのは追加施策だろう。施策も様々考えられるが、まず1つ可能性としてあるのは「応援上映」だ。今作のキーマンである大将軍・王騎を始めとしたキャラクターの手に汗握る戦いと臨場感とは親和性も高く、本作の北島直明プロデューサーからも以下のようなポストが投稿されていることから、十分に可能性はあると言える。
加えて、一番効果を発揮しそうなのはやはり入場者プレゼントだろう。これに関しては2作目『キングダム2 遥かなる大地へ』にて、お盆シーズンから限定冊子が配布された前例もあることから、可能性がゼロとは言い切れない。(ただし、東宝は8月に4本の新作を公開するため可能性は低いだろう)いずれにせよ、約20年ぶりとなる邦画実写の100億円突破はかなりハードルが高い挑戦と言えるだろう。