フランスで最も影響力を持つ映画機関、フランス国立映画映像センター(CNC)のドミニク・ブトナ会長が、性的暴行容疑で執行猶予を含む懲役3年の判決を受けたことが明らかとなった。
Screen Dailyによると、ブトナ被告は2020年8月、ギリシャで休暇中に当時19歳だった名付け子に性的暴行を加えたとして、2021年2月に起訴された。2024年6月14日、仏ナンテールの裁判所に出廷した同氏は、執行猶予2年と電子監視モニター装着による1年の自宅軟禁を命じられた。また、被害者との接触を3年間禁止され、性的犯罪・暴力犯罪の加害者リストにも掲載される。懲役期間は3年となるが、刑務所には収監されない。
ブトナ氏は判決を受けた後、6月28日に辞任を発表。これまでも容疑を否定していた同氏は控訴を計画しているが、CNCに宛てた書簡で、「共和国大統領から責任を託された機関に、イメージの面だけでもダメージを与えないようにするため」に辞任を決意したと記している。ラシダ・ダティ文化大臣は、CNCで副会長を務めるオリヴィエ・アンラール氏を暫定で会長に任命した。
Varietyによると、性的暴行で起訴されたにも関わらず、2022年にブトナ氏はCNCの会長として再任。引き続き組織を運営し、今年5月に開始されたカンヌ国際映画祭をはじめとする注目度の高いイベントにも出席しており、2025年に終了予定だった2期目を務めていた。CNCは、起訴後もブトナ氏が会長を続けた件について、「容疑は私生活の領域であり、司法手続きの遂行により、その機能が影響を受けることのないCNCの活動とは無関係」だと釈明している。
ブトナ氏の会長続投に対する激しい批判の声は、ジェンダーの平等を掲げる団体Collectif 50/50や性差別・性暴力と闘う協会MeTooMédiaなどに支持され、同氏の辞任を求める運動では4,500人以上の署名が集まっていたという。映画監督のブノワ・ジャコ氏とジャック・ドワイヨン氏から10代の頃に性的暴行を受けたと告発し、フランスで#MeToo運動のきっかけを作った女優・監督のジュディット・ゴドレーシュ氏は、「CNCの状況は、#MeToo運動を受け入れたがらない国の姿勢を象徴している」と訴えていた。