昨年同時期に比べ、若干落ち着いた盛り上がりとなっている国内映画市場。そんな中、彗星のごとく現れた新作『ルックバック』の大ヒットが話題となっている。
『ルックバック』は『チェンソーマン』で知られる藤本タツキ原作の読み切り漫画を映画化した作品で、原作は2021年7月に「少年ジャンプ+」で掲載されるや否や、初日だけで閲覧数250万回という怪物級のヒットを記録した作品。本作はオープニング3日間で興行収入2億2,700万円を記録し、並み居る新作を抑え映画ランキングにて興収1位スタートとなった。
そして、本作の特筆すべきはその上映館数。わずか119館という小規模公開となっており、その数は先日わずか132館の公開で鮮烈な首位デビューが話題となった『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』よりも少ない。さらに言えば、『ルックバック』の座席数シェア率は全体のわずか3.8%で、これも『ぼっち・ざ・ろっく』の6.9%を大きく下回る規模だ。
そもそも『ぼっち・ざ・ろっく』が上映館150館規模の作品として『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song』以来、約4年ぶりとなる1位デビューを記録した異例のヒット作なので、『ルックバック』級のヒットは中々目にかかれるものではない。今回はその異例ヒットの理由と背景に迫っていきたい。
コアファンの垣根を越える絶賛の嵐
本作の特筆すべき点は交通広告やテレビ露出などの宣伝がほとんど打たれていなかったにも関わらず、初動から優秀な数字を記録できたということ。この理由は様々考えられるが、まず平日の初日から特大スタートを切れたのは入場者特典の存在が大きいだろう。藤本タツキの原作ネームを全ページ収録した<Original Storyboard>は原作コミックと比べてもほぼ同じ大きさと厚さで、ファンとしては喉から手が出るほど欲しくなるような豪華特典だ。
元々原作コミックも読み切り作品でありながら『このマンガがすごい!2022』オトコ編1位に選出されるなど評価が高く、『チェンソーマン』でも人気な原作者のファンを中心に厚い支持を受けている作品だ。そのため、初日の客入りには大きく頷ける点がある。しかし、このようなファンを中心に動員する作品は初日から週末にかけて動員数が鈍化するパターンが多い。ただ、本作の土日成績は金曜の成績を上回る数字となっていたのだ。