アンドレア・ライズボローの『To Leslie』サプライズノミネートを受け、オスカーキャンペーンの見直しが実施予定

アカデミー賞を運営する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は、アンドレア・ライズボローが小規模インディーズ映画 『To Leslie(原題)』でオスカーにノミネートされたことを受け、現地時間1月27日(金)に「キャンペーン手順の見直しを行っている」と発表した。

グローバル アワード
アンドレア・ライズボロー
Photo by Jason Mendez/Getty Images アンドレア・ライズボロー

アカデミー賞を運営する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は、アンドレア・ライズボローが小規模インディーズ映画 『To Leslie(原題)』でオスカーにノミネートされたことを受け、現地時間1月27日(金)に「キャンペーン手順の見直しを行っている」と発表した。

この声明では、「賞の競争が公正かつ倫理的に行われるようにすることがアカデミーの目標であり、私たちは包括的な賞のプロセスを確保することに尽力しています」と述べられている。『To Leslie』の興行収入はわずか2万7,000ドルだが、ライズボローのために支援者が行ったバイラルな草の根キャンペーンが批判を浴びることになった。

一体、何が問題となっているのか。事態はやや複雑だ。

アンドレア・ライズボローは、確かな演技力に裏打ちされた実力派の俳優だ。 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)での神経質な演技から、カルト的な人気を誇る『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)、さらには『ゼロ・ゼロ・ゼロ』(2020)のような冷徹な役柄まで、彼女はその容姿と雰囲気を作品ごとに完全に消し去る「カメレオン女優」として知られる。

今回の『To Leslie』で彼女が演じたのは、宝くじに当選しながらも酒に溺れ、全てを失ったシングルマザーだ。この鬼気迫る演技に俳優仲間たちが絶賛。 エドワード・ノートン、シャーリーズ・セロン、そして同じく主演女優賞候補となったケイト・ブランシェットらが、SNSや授賞式の壇上で彼女の名を挙げ、絶賛した。

しかし、Varietyなどの報道によると、今回のライズボロー陣営の草の根活動が、規定されている「他作品への言及禁止」や「直接的なロビー活動の制限」に抵触している可能性をがあるという。特に、支援者の一部がSNS上で、ライバルとなる他の有力候補の実名を挙げて比較した点が問題視されている。

通常、アカデミー賞のノミネートを獲得するため、スタジオ各社はキャンペーンに巨額の予算を投じる。ロサンゼルスの街中を埋め尽くすビルボード(看板)、業界紙への全面広告、専門のコンサルタント料など、その額は1作品あたり1000万ドル(約13億円)を下らないとも言われる。

実際、大手スタジオや配信会社は自作の作品のキャンペーンに巨額の投資を行っており、この時期、街中のビルボードにはアカデミー賞候補の看板で埋め尽くされる。しかし、低予算映画の『To Leslie』には、そのようなキャンペーンに費やせる予算はない。

アカデミー賞の投票者に映画の良さをアピールして観てもらうのは悪いことではないが、今回の問題は一線を越えた「攻撃的な戦術」を用いたキャンペーンという見方をされているようだ。

そもそも、なぜこのようなことが問題となっているのかというと、アカデミー賞へのノミネートは単なる名誉にとどまらないず、「オスカー・バンプ(Oscar Bump)」と呼ばれる経済効果があるからだ。受賞、あるいはノミネートという箔がつくだけで、その作品の興行収入は跳ね上がり、俳優や監督の次回作のギャラは高騰する。オスカーは、芸術の祭典であると同時に、巨大なビジネス・ショーケースでもある。

火曜日のノミネーション以来、業界では、彼女のキャンペーンがAMPASの定める規則やガイドラインに違反していないかどうか熱く議論されてきた。実際、複数の情報筋によると、アカデミーは来週火曜日に会合を開き、そこでライズボローのノミネーションが議題として取り上げられる予定だという。

実際、AMPASはルール違反を理由に映画やアーティストを失格にした前例がある。2014年、当時アカデミー音楽部門の執行委員だったブルース・ブロートン作曲の映画『Alone Yet Not Alone』の同タイトル主題歌が歌曲賞にノミネートされたが、投票期間中に音楽支部のメンバーにメールで投票を呼び掛けていたことが発覚し、ノミネートは取り消された。ライズボローの場合、アカデミー会員に直接勧誘があったことを示す「決定的証拠」はまだ見つかっていない。

しかし、『To Leslie』のような低予算映画はそもそもキャンペーンに巨額の予算を投じることはできない。これでは賞レースは必然的に巨大資本を持つ大手が有利になってしまう。これはこれで賞の平等性を損なうことでもある。

今回の騒動は、単なるルールの抵触問題を超え、ソーシャルメディア時代の「新しい選挙運動」をどう定義するか、そして映画賞における「資本の力」と「純粋な評価」のバランスをどう取るかという、極めて現代的な難題を突きつけている。

Sources:VarietyIndieWire
《伊藤万弥乃》

関連タグ

伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。