洋画不足の影響は“洋画離れ”だけにあらず? 進むラージフォーマットの空洞化

洋画作品のラインナップが薄くなると、ラージフォーマット上映にも影響が?

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洋画不足の影響は“洋画離れ”だけにあらず? 進むラージフォーマットの空洞化
Photo by Tima Miroshnichenko 洋画不足の影響は“洋画離れ”だけにあらず? 進むラージフォーマットの空洞化

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1月に入り実写では映画『ゴールデンカムイ』、アニメでは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』など早速ヒット作品が誕生するなど幸先の良いスタートを切った邦画作品。

その一方で懸念されているのが、洋画作品のラインナップ不足だ。昨年ハリウッドで起きたストライキの余波を受け、多くの作品が公開延期に追い込まれた形だが、ただでさえ洋画の勢いが落ちている現状を踏まえるとかなり痛い追い討ちと言える。

昨年は、日本IP作品である『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が140億円超えの強い存在感を見せたことで、全体興収における洋画の割合はなんとか前年と変わらない成績に終わったが、爆発的ヒットの見込めるタイトルのない今年はまさに正念場と言える状況。2月の公開ラインナップも300館規模の大型作品が『マダム・ウェブ』のみとなっており、挽回が期待できる一手もしばらくはやって来ない。

ただし、ここで邦画・洋画のジャンルに関係なくヒット作品が生まれていれば業界としては問題ないのではないか?という疑問も生まれる。年間興収ではコロナ禍前の水準に戻っており、日本の映画市場は正常な形を取り戻したように思えるからだ。しかし、洋画不足の影響は“洋画離れ”だけに止まらず、思いがけない部分にも影響を与えているのだ。

コロナ以降、戻らない洋画ファン

洋画のラインナップ不足により、まず第一に懸念すべきは先ほども触れた観客の“洋画離れ”

2019年は45.6%を誇っていた洋画シェア率も、2020年には23.7%にまで落ち込んでおり、そこからコロナ以降は中々状況が好転していないのが現状。2023年のシェア率も33.1%と、やや課題は残る。

北米では年間興収が2020年から2023年にかけて4.5倍となり、北米におけるハリウッド作品はコロナ禍から劇的な回復を見せているが、日本における洋画作品の年間興収は2020年から2023年までで2倍程までにしか回復していない。もちろん、アメコミ作品や『バービー』など日本市場の好みと合わないハリウッド作品が多かったことも可能性として挙げられるが、数字だけを見れば“洋画離れ”が進んでいると結論付けられるのも事実だ。

近年は中国でも洋画離れがどんどん加速しており、世界第3位の市場である日本の動向はハリウッドとしても慎重に見定めていく必要があるだろう。

洋画不足の影響は他にも

そして、“洋画離れ”だけに止まらず、大きく影響が出始めているのはIMAXや4DXを始めとしたラージフォーマット上映。ラージフォーマットの上映は追加料金が発生するため、客単価を上げる上で重要な役割を果たしており、スマホやテレビによる映画体験との差別化を図る上でも重要性の高いものと言える。ただし、それぞれの作品をラージフォーマットに適応させるためには追加で予算がかかるため、邦画作品は一部の大型作品のみしか展開しないことが多い。


《タロイモ》

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中学生時代『スター・ウォーズ』に惹かれ、映画ファンに。Twitterでは興行収入に関するツイートを毎日更新中。