オーストラリア、2024年半ばまでにストリーミング配信のコンテンツノルマを導入へ

オーストラリアは、国民の自国コンテンツへのアクセス確保と国内クリエイター・国営放送の支援のために、2024年半ばから動画配信サービスにコンテンツノルマ制を導入すると発表した。

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オーストラリア、2024年半ばまでにストリーミング配信のコンテンツノルマを導入へ
オーストラリア、2024年半ばまでにストリーミング配信のコンテンツノルマを導入へ

オーストラリア連邦政府は、NetflixやDisney+などの動画配信プラットフォームに対し、オーストラリア産コンテンツ(ローカルコンテンツ)の配信を法的に義務付ける方針を固めた。 これは、アルバニージー政権が1月30日に発表した今後5年間の新国家文化政策「Revive(リバイブ)」の中核をなす施策であり、2024年7月1日までの制度開始を明言している。

発表された文書では、現在、オーストラリア人は従来の放送よりも動画配信サービスでコンテンツを視聴する傾向が強いこと、SVODは市場規模の大きい産業であるにもかかわらず、ストリーマーはローカルコンテンツや教育番組やドキュメンタリーなど政府が重要とみなすジャンルへの投資義務がないことなどが主張されている。

かつて無料放送テレビに課されていたコンテンツ規制(クオータ制)が緩和された結果、子供向け番組の制作数は2019-20年の14本から、翌2020-21年にはわずか7本へと半減した。このままでは、次世代が自国の物語に触れる機会が失われることになる危機感をあらわにする。

危機的状況は映像分野にとどまらない。トニー・バーク芸術大臣は現地テレビ局(Channel 10)のインタビューに対し、音楽業界の現状についてこう語っている。 「ARIAチャート(豪音楽チャート)のトップ50を見てほしい。ランクインしているオーストラリアのアルバムは、たったの2枚だけだ」。 大臣が挙げたその2枚とは、Spacey JaneとINXSのみ。才能あるアーティストがいながら、国内市場でキャリアを築けない構造的な欠陥を指摘した。また大臣は「テレビのリモコンを手に持った時、『なぜこんなにアメリカやイギリスのコンテンツばかりなんだ。なぜ私たちの生活を表した作品がもっとないんだ』と疑問に思うような状況にはしたくないのです」とも語っている。

今回の規制導入により、ストリーミングサービス事業者には、収益の一定割合をオーストラリアのコンテンツ制作に投資することや、オーストラリア作品を発見しやすくすることなどが求められる見通しだ。

バーク大臣はインタビューの中で、法制化に向けた具体的なスケジュールを明らかにした。 「今後6ヶ月間(2023年前半)で業界との協議を行い、今年後半には法案を議会に提出する。そして来年(2024年)7月1日には法律を施行する」。

ストリーミング業界は、国際的なグループ(Netflix、Amazon、Disneyなど)、独自のストリーミングサービスを先行して開始した有料テレビ会社(Foxtel)、放送局所有のストリーミングサービス(Stan)、さらにプロデューサー、従来の放送局、出資者規制機関(Screen Australia)など広くまたがっており、統一的な見解を持つには至っていない。

ストリーマーがオーストラリアの収益の20%をローカルコンテンツに投資することを提唱する団体「Screen Producers Australia(以下、SPA)」は、この報告書の発行を歓迎した。しかし、今後の交渉が難航することを認めている。SPAのマシュー・ディーナー氏は、「これには、何が "オーストラリアのコンテンツ "としてカウントされるのか、その定義が新しいオーストラリア国家文化政策の目的と国民の期待に合致しているのかが含まれます」「これを正しく理解することは簡単なことではありません。例えば、『パイレーツ・オブ・カリビアン』と『The Drover's Wife(原題)』では文化的に大きな違いがありますが、どちらもオーストラリアの税金で支えられているのです」と述べている。

オーストラリアの連邦政府と州政府は、産業政策と雇用政策の一環として、映画とテレビへの投資に惜しみない資金を投入し、地元の需要を大幅に上回る輸出主導型の映画製作部門を作り上げることに貢献してきた。本件については、2023年前半に芸術担当大臣と通信担当大臣が業界とさらなる協議を行い、2023年第3四半期から2024年7月1日までに開始を予定されている。

日本においてもNetflixやAmazon Prime Videoのシェアは拡大の一途をたどっているが、配信事業者に対する法的な国産コンテンツ義務(クオータ制)は存在しない。オーストラリアが突きつけた「市場原理だけに任せれば、自国の物語は消滅する」という危機感は、日本のコンテンツ産業にとっても対岸の火事ではないだろう。

Source:Ministers for the Department of InfrastructureRevive
《伊藤万弥乃》
伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。